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第12話:神の代行者? いいえ、ただの脱税者ですわ

「……セラフィナ・フォン・アストレア! 貴女は、自分が何をしているか分かっているのですか!」


 大広間に響き渡る、耳を刺すような高音。

 現れたのは、教皇庁から派遣された特使、司教マルファス。

 純白の法衣を纏い、背後には光り輝くメイスを携えた武装修道士たちを連れています。その表情は、不浄な汚物を見るかのような嫌悪感に満ちていました。


「神聖なる教皇庁に対し『監査』などという無礼な要求。これは神への反逆、すなわち破門に値する大罪ですわよ!」


 わたくしは、玉座の隣に設えた特等席――最高級の革張りの事務椅子に深く腰掛け、手にした決算報告書から視線すら上げずに答えました。


「あら。破門? ……司教様、その脅し文句、少し使い古されていて鮮度が落ちておりますわね。……アラリック、昨日差し押さえた大聖堂の地下倉庫から、面白いものが見つかったのでしょう?」


 わたくしの背後に控えるアラリック様が、無言で大きな木箱を床に放り出しました。

 中から転がり出たのは、王家の紋章が入った大量の『金塊』と、怪しげな薬瓶の数々。


「な……それは……!」


「司教様。……貴方がたが『神への寄付』として民から募った金。それがなぜか、王家が秘密裏に製造していた違法薬物の代金として洗浄ロンダリングされていたようですわ。……さらに、教会の領地として免税されていた土地が、実は他国の闇ギルドに『武器庫』として貸し出されていた記録も。……これ、神様はご存知なのかしら?」


「ぐ、く……! それは、その……教会の活動には、多額の資金が必要なのです! 聖なる目的のための些細な逸脱であり、俗世の法で裁かれることではない!」


 わたくしは、ようやく決算報告書を閉じ、司教を冷ややかに見据えました。


「『聖なる目的』。……その言葉さえ使えば、脱税も、資金洗浄も、武器密売も、すべて許されるとお思い? ……甘いですわ。お砂糖をたっぷり入れたティーカップよりも甘いわね」


 わたくしは扇子を広げ、ゆっくりと立ち上がりました。


「司教様。……わたくしの帳簿には、善意も奇跡も載りません。……載っているのは、貴方がたがこの国で得た『不当な利得』。……その未払い納税額、延滞利息を含めて、現在、計三八億ギルに達しております」


「さ、三八億……!? 馬鹿な! そんな額、払えるわけがない!」


「ええ、払えないでしょうね。……ですので、法的措置を取らせていただきました。……アラリック」


「は。……執行を開始しました」


 アラリック様が合図を送ると、城の窓から見える王都の空に、次々と紅い光が上がりました。


「……何の光だ!? 貴様、何をした!」


「あら、簡単なことですわ。……王都にある教会の全資産――礼拝堂、宿泊施設、そして金庫。……それらすべてに、たった今、『差押』の魔法封印を施しました。……これからは、わたくしが許可した分しか、神の家には出入りできませんのよ」


「き、貴様ぁぁぁ! 神を……神を物理的に封印するなど!」


「神を封じているわけではありません。……わたくしが封じたのは、貴方がたという『悪徳業者』の営業活動ですわ」


 司教が顔を真っ赤にして杖を振り上げようとした瞬間。

 彼の足元がガタガタと震え始めました。


 広間の隅から、手押し車を押した男が現れたのです。

 それは、埃とインクにまみれ、疲れ果てた表情のジュリアン様……いえ、地下事務員のジュリアンでした。


「せ、セラフィナ様……! 指示通り、教会の裏帳簿と王家の贈賄記録の照合、完了しました……。……司教様、あきらめてください。……あの方には、どんな言い訳も通じない。……数字は、裏切らないんだ……っ!」


 かつての王子が、涙ながらに司教に告げる様は、まさに滑稽な悲喜劇。

 司教は、自分の『共犯者』であったはずの王子の変わり果てた姿に、絶望的な恐怖を抱いたようでした。


「さて、司教様。……抵抗なさるなら、この場で『現行犯』として拘束し、教皇庁に対し、身代金……失礼、保釈金の請求書を送らせていただきますけれど?」


「う……うああああ! お、覚えておれ! 教皇庁の『法の審判官』が来れば、貴女のような魔女など、一瞬で――!」


 司教は捨て台詞を残し、逃げるように広間を去っていきました。

 

 わたくしは、その背中を見送りながら、アラリック様に問いかけました。


「……アラリック。『法の審判官』。……あの方が、ついに動くようですわね」


「……イザベラ・ド・モンテスキュー。教皇庁最強の法務執行官であり、貴女が唯一『論理』で負けかけた相手、ですね」


 わたくしは、扇子の隙間から、ゾクゾクとするような微笑を浮かべました。


「ええ。……楽しみですわ。……わたくしの『所有権』と、彼女の『神の法』。……どちらがより、この世界を縛るにふさわしいか。……徹底的に、精算して差し上げますわ」


 本当の戦いは、ここから。

 わたくしの帳簿に、初めての『強敵』が記される予感に、胸の高鳴りが止まりませんでした。

お読みいただき、ありがとうございます!

教会の地下から出てくるわ出てくるわ、金塊に毒薬。

神聖な顔をして脱税に励む司教様を、セラフィナ様が「差押」で完封いたしました。


そして、ついに現れる「法の番人」イザベラ。

セラフィナ様と同じく知略と法を武器にする強敵の登場に、物語はさらなる高みへ!

地下で黙々と働くジュリアン様の「数字は裏切らない」という名言(迷言)も光りましたわね。


「最強のライバル登場にワクワクする!」と思ってくださった方は、ぜひ評価やブックマークをお願いいたします!

皆様の応援という名の「固定資産」が、セラフィナ様の無双を支えてくれますの!

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