↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天狗 ~神眠る森~  作者: 東雲 景惚
諸行無常
PR
79/100

巷説喧騒〜姫の行く末④〜

 一通り聞かれたことを応えると疲れたのか、末姫は再び瞼を閉じた。

 走っていたら姉のところに辿り着くなどということがあり得るのか…。確かに竜見の村は神宮と隣接していて、ロクが彷徨いでるほどだが、結城には隣接している村はたくさんあるし、村にちょうど出るなんて都合がいいことがあるのか…。あまりないとは思うが、ボロボロでも上等な服を着た美しい娘が突然現れたら追い剥ぎに遭ってしまうことだって考えられるのに…。


 おセンは、自分のもとに末姫が来たことが偶然なのか、仕組まれたことなのか、わからずにいた。

 そもそも結婚式に何か事が起きるというのは、自分の時と似ている…。何の意図があって結婚式を狙ったのか…。

 一人でいると悪いほう悪いほうに考えがいってしまう。

 とにかく末姫の回復と今後について話をしなくてはならない。連れ去った者たちの話をしていたとき、末姫は俯いていた。あれは…恐怖なのかそれとも何か本能的に隠したいことがあったのか。いずれにせよ、本山からの連絡次第では末姫を本山に戻すことになる。


「わたくしは、本山には参りません。」

翌朝、それとなく本山に戻ることもある可能性について触れたら、それまで呆けていたのに、突然カッとなった。食べていたお粥の皿もマイに投げつけた。さすがに姉に投げるわけにはいかなかったのだろう。気心の知れたものには癇癪を起こすことがあるらしいと聞いたことはあったが、まさか久々にあった姉にも見せてくるとは…。

マイに火傷がないか確認し下がらせた。おセン自ら食器を片付けた。

 それを見てばつが悪いのか、口を尖らせて話始めた。

「旅立つとき盛大に送り出してもらいました。皆に祝福され…姉上もお分かりでしょう?あそこに戻ったら私は逃げ遂せた姫ではなく、可哀想な姫になる…。こんな傷だらけで…」


本山には帰れない…その気持ちは痛いほど分かった。おセンが事実そうであったからだ。嫁ぐ先が亡国となり、奈落の底に落とされたような感覚は10年たってなお忘れることはできないし、本山に出戻るなど考えられなかった。


「不用意なことを言ったわ。私が一番分かるのにね。貴女の方からは、本山に積極的には戻りたくないということでいいのね?」


こくんと末姫は頷いた。帰山命令が出る前に急いで、末姫が安定するまで竜見の城に据え置きたいと早馬で伝える必要があった。


※※※

その頃、本山ではおセンこと仲姫からの手紙が届き、末姫の無事を知り、皆胸を撫で下ろしていた。


「神のご加護で仲姫のところに導いてくれたのであろう。」

陛下は泣いて喜ばれた。急いで、鬢胡に末姫の無事と、王太子に帰国するように手紙に書いた。

仲姫の手紙では、夜に竜見の城に入城し、末姫を保護することが書かれていた。このまま仲姫が面倒を見てくれるのであれば安泰だが…。

再び戻ることのない娘を持つのは躊躇われた。


鬢胡がすぐに結婚式をやり直すと言ってくるかもしれない。鬢胡の出方によってどこに留まるべきか変わってくると案じられた。

そして、まずはケガの様子について知りたいものだ…それによっては嫁ぐのに時間がかかることも考えなくてはならないのだから。

 陛下は元来の決定力不足が発揮され長考に入ってしまった。しかし、数刻後出した答えは


「仲姫に会うことにする。」

であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。