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天狗 ~神眠る森~  作者: 東雲 景惚
諸行無常
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78/100

巷説喧騒〜姫の行く末③〜

 マイは、おセンに町医者を連れてくるように頼まれていた。この医者は10年前に仲姫の経過を見守ってくれた信用なる人物だった。

 10年前に比べて白髪は増えたが全く衰えているようには見えずむしろ若々しかった。

 竜見の城に戻ったため、おセンは久々に誰かの目に触れることもあるので、袴で過ごすことができないこととなったが、さすがに王族の衣装を着るのは、鏡の前で当ててみたものの、違和感しかないように感じ、三姫が村に訪れた時と同じように結城紬を着ることにした。

 マイやクシの目からは、その容貌が神々しく、王族の衣装でも全く問題なかったような気もしたが、おセンの思いをくむかたちとなった。


 医者の診察が終わり、全身に打撲や擦り傷があるものの逃げ出した時のものではないかということだった。乱暴もされていない様子であるという結果におセンは胸をなで下ろした。首の傷はほとんど薄くはなるかもしれないが、顎の下のあたりはどうしても残るかもしれないということだった。


 美貌が自慢だった妹が知ったらショックを受けることは間違いないため、治らないかもということはしばらく言わずにいることにした。


 医者が帰り、マイとおセンは全身に薬を塗りながら末姫と話をする。

 目がまだ虚ろではあるものの、返答はしてくれているので、何があったのかを少しずつ聞いた。


 挙式の最中、賊が乗り込み人質にされた…。首に刃物が突きつけてあったので大人しく言うことを聞いた。鬢胡の屈強な兵がやられるほど賊は強く、抵抗する気になれなかった。城を抜ける時、目隠しをされ…

気が付いたら洞窟のようなアジトにいた。手は縛られていたものの、前で縛ってあり食事は人生で一番硬いパンが出たとのことだった。石かと思って食べなかったら、口に無理やり入れてきたそうだ。

 賊たちは、末姫に聞かれないように話し合いは別室でおこなっており、監視が一人置かれていた。

 賊はみんな鼻の高い仮面を被っていたが、風貌や話し方で、末姫を連れてきた人はかなり上の方の人のようだった。何かと気にかけてくれてはいるようだった。

 賊の話し方は…。結城をほとんどでたことがないので、末姫には分かりづらいが、その末姫を連れてきた人は、結城の言葉を話してもイントネーションが少し結城のものとは違うようであったらしい。他の人はどうか分からない。末姫が捕らえられていた部屋に出入りしていたのは、交代で見張りをしていた3人とその末姫を連れてきた人…あとそのお付きらしい人が2人、計6人いたが、話し合いをしていた声はもっといたようにも感じたらしい。


 ぼうっとしながら淡々と話している割に、意外とよく覚えているようだとおセンは感心しながら聞いていた。


「どうして照鈴を連れ去ったの?」

とおセンが聞くと、末姫は首を振った。

「私も聞いたのだけど…。まだ教えられないってそう言われたの。」

そう言った。


「じゃあどうやってここまで来たの?」


と聞くと、見張りの3人の中で1人確実に末姫に好意を持っていそうな者がいたので、話し合いで人気がない時に、お手洗いに行きたいと伝えたらしい。いつもなら複数いるときじゃないと連れ出さない。

 そもそもトイレが城育ちの末姫には考えにくい小屋の外に作られたあばら家で、末姫はできれば行きたくなかったが、これしかチャンスがないと思い、すがったらしい。ここで粗相をしたら生きていられないと泣き落とし、渋々外に連れ出された。

 手を洗いたいと言って小川の方に進み…寄り添うように見せかけて、その男を川に突き落として、懸命に走ったそうだ。先ほどまで暗かったということは朝が来ている。結城の国は太陽が昇る国と思い必死に転び、擦りむきながら何時間道なき道を来たか分からなかった。もうダメだと思った時、仲の姉上ことおセンに奇跡的に出くわしたということだった。



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