黎明の始まり〜運命の岐路④〜
末姫に刃を突きつけるその輩は、頭から黒い衣装に身を包み、顔には目以外が隠れるような面をしていた。呼吸をするためなのか鼻の部分だけ高くなっており、面は赤茶色で統一されていた。
兵士達が囲んでも、面で全く表情が伺えない。足捌きを見る限り、かなりの手練れであることは間違いない。鬢胡の兵士達との睨み合いの末、その輩達は、末姫を人質に取ったまま、会場をあとにする。
何もできず、ただ動くこともできなかった末姫の兄で結城の王太子は、この後どうするべきか困惑してしまった。
末姫の救出を率先して行うべきなのか、鬢胡に嫁入りしている最中なのだから鬢胡に委ねるべきなのか、得意の優柔不断が発揮されてしまった。
迷いあぐね、勝手に動き国交を悪くするのは良くないのでは…と、重臣とともに結論を着けてただ、末姫の無事を祈る。
あの子はどうなってしまうのか
まさか、人質に取られたまま死んだりしないよな
などと、胸は飛び出しそうなほどドクンドクンしている。
何もできないが、背中に冷や汗だけはドバドバかいている。
あの輩は何者なのか…。鬢胡の兵士達は屈強な猛者達だから、任せようと思う反面、妹姫に何かあってはいけないというどうしようもない思いも込み上げてくる。
バルガンに到着したとき、末姫の様子を見て何か話していたら変わっていたのか。体調が優れないなら延期ということもできたかもしれない。どうしたら良かったのか分からず、ただただ不安にかられる。
そもそも、ただ妹姫の婚姻に立ち会うだけだったはずなのに。どうして自分だったのか、ほかの人でもよかったのではないかなどという想いすら浮かんできた。
不安がイライラに変わり、王太子は会場をウロウロし始めた。ステンドグラスの割れた会場からにはそのままいることかなわず、一度控室に戻った王太子は崩れるようにソファーに座り頭を抱えた。
何刻経っただろうか、まだ終息しない状況に部下にどうなっているのか、聞きに行かせた。
行かせた部下が今度はなかなか帰ってこず、今度はここにあのならず者がやってくるかもしれないと、不安も感じた。
末姫はどうなっているのか…。
更に不安に思っていると、部下が息を切らせて走って帰ってきた。
帰ってきた部下に安堵もあり、駆け寄る王太子は部下の肩を握り
「末姫は、末姫はどうなっているのか!?」
と、声を上擦りながら聞いた。
部下は跪いたまま顔をあげ、悔しそうに
「反乱者たちは、兵士から逃亡。末姫様はまだ人質として反乱者たちに同行している模様です。」
と言った。
王太子は最悪の状況に目の前が真っ暗になる。末姫が行方不明。反乱者たちに捕まっているなどと、父王が知ったらどうしたら良いのか…。末姫への心配と、己の今後について考え膝から崩れるのだった。




