黎明の始まり〜運命の岐路①〜
皇城に末姫が入城するとき、殆どの臣下たちが一斉にお出迎えに現れていた。たじろぐほどの人数であったが、持ち前の天女のような微笑みを浮かべて颯爽と進んだ。第一印象は良くなくてはならない。末姫はそう思ったからだ。
張り詰めた空気の中でも、末姫は凛々しく行動することを意識した。おろおろして舐められないように。
息の詰まるような生活を余儀なくされる。入城して2日目に皇帝陛下と婚姻を結ぶ皇太子殿下とのお茶会が開かれた。
陛下は、笑顔で美しい美しいと末姫を賞賛しながら笑っていた。末姫は、恐れ入りますと麗しい笑みを浮かべたが、陛下の対応に本当に自分を褒めているわけではないような気がした。本山でたくさんの人たちとかかわっていたわけではないが、本当に自分を崇めてくれている人と口先だけの人の違いくらいは末姫にも分かった。陛下はどちらかというと後者であった。
この婚姻は、私の容姿を気に入って組まれたものではないのか。何かのおまけで私が美しいだけなのか。
と、変な納得をしてしまっていた。
一方、皇太子はほとんど目が合わなくてただただお茶を飲んでいた。彼の名前は「カルロス・クラウディオ・ヴィンゴルド」名前は、昔からの決め方があるようで漢字での表記はなかった。カルロス殿下は、目元が涼しげな顔立ちであった。民族が違うせいもあるが、末姫の周りにはいない風貌であった。こちらの国ではこういった顔立ちがよしとされるのかもしれない。と末姫はもうすぐ伴侶となる殿下をまじまじと見る。この三人のお茶会に側控えとしているのは旅に同行してくれていたネルキスだった。武装は簡易なものになり、顔のマスクは外している。兄やヨハに比べるとどうかとおもうが、思っていたよりもほど端正な顔立ちで、殿下よりも結城の美的感覚で言うと美丈夫になる。
この男ばかりのお茶会に息が詰まりそうな末姫であった。現在、皇后の地位は空席である。殿下の母親であった皇太子妃は殿下が幼少のころになくなっているらしい。その後、即位した陛下は側妃を何人も侍らせているが、皇后の地位だけは空いている。確か亡くなった皇太子妃は公爵家のご令嬢だったか…。ふさわしい人間がいないということなのか、亡き皇太子妃に敬意を払っているのか、関係性がまだできていないため聞きはしない。よくわかっていないふりをして聞くこともできるが、嫌なことだったりして不機嫌になっても困る。関係性を構築してから聞けそうなら聞くし、無理そうだと思ったらオリガから探りを入れてもらおうと思った。
どちらにせよ、これで鬢胡の一番位の高い女性は末姫ということになる。陛下の側妃たちがきっと何かしらアクションを起こしてくるかもしれない。後宮を統べることになるのだから、よくよく気を引き締めようと思った。
そして、このカルロスという自分の伴侶ともっと打ち解けなくてはならないと思った。末姫には身の回りに父と兄とヨハしかほとんどいなかった。たまに、姉の夫である小公爵とかかわることはあったが、皆こちらが何を言わなくても関係性があったから、自分からコミュニケーションを取ろうと思ってとったことなどなかった。
自分の容姿を褒めるでもないこの男とどうやって仲をよくしていくべきなのか、ただただ困惑していた。
自分の容姿に絶対の自信のあった末姫は、顔は嫋やかに微笑でいたが、内心焦っていたのだった。予定では、数日以内に兄の王太子が結城の代表としてやってくる。そして三日後には皇太子妃となるのであった。




