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天狗 ~神眠る森~  作者: 東雲 景惚
使徒の目覚め
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黎明の始まり〜夢か現か④〜

 おサエは、小さいのと大きいのの2つの鉢植えにカモミールを植えることにした。小さいものを家用にして、大きいものをおセンに預けて、水をあげに来ることにした。小さい鉢植えはおセンの家に来る時に持ってきて、大きな鉢植えと並べて置くことにした。 


 この日、初めておサエはおセンの授業の様子を見た。おセンは恥ずかしいから見ないでと言っていたが、恥ずかしがる姉もまたおサエにはたまらなくて、無理やり椅子を持ってきて後ろで見ていた。今日は掛け算の問題で、おセンは焼き菓子を用意して、何人にいくつ分欲しいのか…ということを実際に必要な数を使って教えていた。


生活に活かす学習…


勿論、おサエだって本山で、一通り学んだ。しかし何がどう繋がっているのかなんて考えていなかった。楽器などの好きなことばかり重要視していた。姉の言う「還元」とは、彼らの生活が少しでも豊かになるように。帳簿を付けるとき、料理を作るとき、彼らは今日の学習を思い出すだろう。気が付いたら、持ってきた椅子から身を乗り出し、子どもたちと一緒に焼き菓子の数を数えていた。


「サエお姉さんって食いしん坊なの?」

と、カズが不思議そうに尋ねた。本来なら不敬罪だが、今はおサエなのでみんなで笑った。


「そうなのよ。この村に来たら元気になっていっぱいお腹が空くの。」


そう言うと、カズは笑顔で

「良かったね〜。元気になって。先生のお菓子美味しいけど、勉強終わるまで食べるのは待ってね。まだ計算終わってないから食べられちゃうと数が合わなくなっちゃうよ。」

とコソッと大真面目に言うものだから、おサエはお腹を抱えて笑いながら頷いた。


こんなふうに笑ったことなんて人生で初めてかもしれない。お腹を抱えて笑うなんて、母后が知ったら卒倒してしまうだろう。ふふふっと、笑うこともあまり良しとしない人だった。お腹が痛くなるほど笑ったせいか、本当にお腹が空いてしまった。勉強が終わったあと、カズから許可を得て、焼き菓子を食べた。空腹で食べる焼きが本当に美味しくて、一緒に食べるカズもおセンもほかの子供達もみんな笑顔で更に美味しくなった。この村の人達が自分に生きる活力をくれる。


ここに来て本当に良かったと思った。おセンの所に毎日のように通っているうちに、カモミールの芽が出てきた。芽が伸び双葉も青々としてきた。もうすぐ、本山に戻ることになる。こんなにも楽しい日々を中断することが、信じられなかった。


 

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