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天狗 ~神眠る森~  作者: 東雲 景惚
使徒の目覚め
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黎明の始まり〜夢か現か②〜

 ジェッドの中にカズとおセンが戻ってくると、カズは母親から渡された料理を渡す。女将は、新メニューの試作をおセンに講評してもらっているようで、今日のメニューは豆と白身魚のトマト煮らしい。この国の食文化にはないものだが、国境が近いこの村では異国の料理を恋しがる旅人もいる。

 そもそも、おセンは仲姫の頃から異国文化にも精通し、嫁ぐ先の国は勿論近隣諸国についても詳しかった。寺子屋を始めてから、お礼を兼ねて村長に食堂に招待されたことがあった。その時に出されたリゾットを村長は物珍しそうに「米をスープにいれるのか」などとうれしそうに食べていたが、本場を知っているおセンは手が止まってしまい…。ついつい生米から炊くことなど力説してしまったのがきっかけとなっている。ここまでの知識を持っているのは、商家で学んでいたからということになっているようだ。

 カズは二人ともっと一緒にいたそうだったが、やんわりとおセンはかわして、カズにとれたてのキャベツを二玉渡して別れた。

 せっかくだから、トマト煮を一緒に食べようとおセンが誘うのでおサエも頷く。あっと思い立ちお茶を淹れさせて欲しいと言うと、おセンは勿論と快諾してくれた。

 母屋に移り、昼食の準備をする。おサエは得意気にお茶を淹れようとするがお湯を沸かすことができず困ってしまった。いつもはカラが沸かしておいてくれるのだ。おセンが薬缶でお湯を沸かしてくれ、恐縮してしまう。ふふふとおセンは笑いながら、気にするなと言わんばかりに、手早く準備する。オーブンで焼き色をつけたパンを出し、トマト煮をよそる。

 先日、おセンに出してもらったサンドイッチもそうだが、この国はパン文化はそこまでない。特に本山にはパンはほとんどなかった。でも、庶民は手軽に食べられることもあり、またこのあたりは国境近いからかパン文化が広がっているようだ。最近ではおセンは、小麦から畑で育てて手作りのパンを作っている。本当にシンプルなハードパンだけど、奥深さを感じながら日々研究している。

 もたつきながらも、おサエがお茶を淹れることができ、昼食を食べることにした。おサエは、初めて食べるトマト煮の酸味に驚いたが不思議と嫌な感じはしなかった。酸味に驚いた様子を見ていたおセンは

「本山にはない味付けよね。…ん〜でも、かなり美味しくなってる〜この酸味がいいのよ。」

とおサエに言った。もう少し醤油を入れたほうが、この国の人の口に合いやすくなるか…など、ブツブツ言いながら食べているおセンは、口の中が空になってから、お茶を含んだ。

「おサエさん…とっても美味しいわ。お茶も葉を選んだり茶器を温めたり、とっても奥深いのよ。また飲ませてね。」

と微笑むおセンを見て、おサエは頷く。

「姉様は…。いつもは畑で作ったものを食べているのですか?…こうやって食堂のものを食べることだってできるのに…」

そう言うおサエに首を横に振って

「勿論、必要なものは買うけれど…あまりお金は使いたくないの。…私が使うお金は、彼らの血税よ。」

そう言ってまたお茶をふくむのだった。


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