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天狗 ~神眠る森~  作者: 東雲 景惚
萌芽の予感
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始まりへの門出〜覚悟の依願③〜

 名残惜しくおセンと別れた三姫が本山の公爵家に戻ったのは、公爵夫人と約束した1週間の最後の日であった。公爵夫人に早々に挨拶したあと、再び登城し姉の現在について、父王と話をした。

 そこには朱山公も同席していた。三姫は見てきたことを話した。


 基本的には朱山公の話通りであったこと。

 仲姫はおセンという名前で過ごしていること。

 日中は、近くの子どもたちに朱山公所有のガジェットで寺子屋のように勉学を教えていること。

 女官も侍女として侍っているものの最少人数で、多いときでも2、3人もしないらしく、今回訪れたときは1人しかいなかったこと。

 神宮から彷徨いでた亡国の子どもたちを保護していたこと。

 

…思っているより元気そうであったこと。



 三姫の話を静かに父王は聞いていたが、三姫の話が終わると


「…息災なら何よりだ。あの子には何もしてやれず、朱山に任せきりであった。三姫も無事で何よりであった。」

心なしか涙ぐむような声で父王が言うと、朱山公は床に額がぴったりつくくらい平伏し


「陛下…。もっと、人気のない静養先にすれば、三姫様にも小公爵にも気をもませることもなかったでしょうに…」

と懺悔をした。そう言う朱山公に三姫は


「いいえ、姉様はあの場所だから生き生きとしておりました。神宮の森に繋がる姉様が過ごすはずだったかの亡国から逃げてきた子達を救う事を使命としているようでした。」

と話をした。


「そうだ朱山。そなたが連れ出してくれなかったらまだふさぎ込んだままだったやもしれない。どういうことであっても生きがいを新たに見つけて過ごしていることに意味があるのだ。」

と父王も付け足し、再び朱山公は平伏した。


※※※

公爵家に戻ってきて、1週間ぶりに自室で過ごした。3年過ごした部屋はやはり落ち着くもので、馬車で揺られた身体を少し休めた。

 夕暮れ時になると、明らかにいつもより早く彪比古が帰宅した。三姫が公爵家に戻ったら連絡が行くようになっていたようだ。彪比古は、母である公爵夫人から、王室に関わることで不在と聞かされていた。

…そんなわけはない。きっと自分の告白にショックを受けて城か…離宮に居たのだろうと思っていたのだ。

だから、公爵夫人から1週間ほどで帰ると言われていたが、更々信じてはいなかった。


 それほどまでに自分を思ってくれているのであれば、夫婦の関係性について考え直さなくてはならないと彪比古はこの1週間思っていたのだ。 

 三姫の自室をおとずれた彪比古は、驚いた。憔悴していると思っていた三姫は、とても元気だったからだ。

仮眠をとっていたようで時間はまだ早いものの、横になっていた形跡があるが、目は輝いていた。


そして…彪比古は思いもよらぬことを三姫から聞いた。


「私と離縁してくださいませ。」 


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