麗しき一族~凛冽の大姫②~
カツカツとヒールのある履物の音だろうか、謁見の間に近づいてくる。音が大きくなった頃、末姫一行は、深々と頭を下げ、王后陛下の入場を待った。
「王后陛下のおな~り」
人が入ってくる気配がした。これが10年以上会っていない姉の気配なのかと末姫は思った。
椅子に座ったような音がすると、すぐに声がした
「苦しゅうない。面を上げられよ。」
覚えてはいないが、懐かしい声色だった。おずおずと顔を上げていくと、洋髪で髪をまとめ上げ、あの頃は着ていなかった洋装ドレスに身を包んだ姉が鎮座していた。
あの頃と比べると歳を重ねたかもしれないが、美しさというより妖艶さというものなのか、色香が増しており、歳を重ねた美しさを身にまとっていた。
「照鈴…。久しいのぉ。皆には末姫と呼ばれているだったな。末姫…まさか継がれていく呼称とはな。大姫と言われていた私が言うことではないか。」
と、末姫をまじまじと見ながらそう言った。
「そなたに最後に会ったのは、まだ歩くのがやっとの頃だったか…。父王に似た美しい顔であるな。さすがは結城の血。まさに『絶世の美女』…」
嫌味にも聞こえるが、褒めてくれているのか言葉尻は柔らかかった。
「姉上様…もったいなきお言葉にございます。」
珍しく緊張した末姫は、しどろもどろに言葉を発した。
「堅苦しくするでない。同じ結城の姫ではないか。共に過ごした時間が短いとはいえ、姉妹は姉妹。そなた鬢胡に嫁ぐのであろう。あそこも軍事国であるから堂々と威厳を持たねばな。」
そういうと、ちらっと後方をみる。明らかに肌の色、髪の毛の色が結城の者ではなかった。静かに控えたオリガをまじまじと見る。
「迎え女官か…」
オリガは深々と頭を下げて、
「はい。照鈴殿下の迎え女官織鐘でございます。」
と言った。オリガの所作は美しかった。
「織鐘?賜名をしたのか。信頼関係が気づけているのだな。妹をよろしく頼みますよ。」
大姫の慈愛ある言葉に身が引き締まる思いで、再び頭を下げるのであった。
「はい。身命を賭して殿下の御身を守らせていただきます。」
と言うオリガのほうを振り返り、緊張で固まっていた表情を緩ませる末姫に、末姫よりも緊張していたオリガも頬が緩む。
「迎え女官の仕事は大変であろう。私の迎え女官に何かアドバイスをもらうと良いだろう。」
そういうと、大姫は右手を上げる。後ろに控えていたうちの一人の女官が前に出てきた。明らかに他の女官よりも位が上という様子で威厳ある風貌であった。一見冷たそうにも見えるその女性が頭を下げた。
「僭越ながら…。ご教授させていただきます。葉雫と申します。ハシズとお呼びください。」
大姫が若い風貌だからなのか、とても年上に見える。
オリガ迎え女官という特殊な任務をしている女性に出会えたのは初めて出会った。ありがたく深々とお辞儀で返した。




