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 ミュゲは瞼を閉じ、スッと息を吸ってから、ゆっくりと瞳を開いた。

 天才という言葉はあまり好きではないし、生徒であり、魔法少女の仲間である少女たちに差異をつけることはしない。だが、この目で現実に見て、認めざるを得ないところもでてくる。

 ファーノと同じく、魔法少女という特殊な訓練にまだ慣れず疲れがある。イリスに比べれば、明らかに身体も動けてはいない。しかし、その状態でも、なおこれだけの魔法の構成ができている。その精密さと集中力は、確かに才能といえた。

 もちろん、まだ入学して間もない状態で、この先どうなるかわからない。だが、少なくとも教師くらいにはなれるだろう。上手くその才能を伸ばし、周りが認め、本人が望めば、もしかすれば聖女を継ぐほどの魔法少女になれる可能性も……


「――綺麗な構成ですね」


 三人の訓練が終わったことを確認して、見学していた四人の内の一人、セリッサがミュゲに話しかけた。


「ああ、そうだな」


 特に否定する理由がないので頷く。ステルの構成は確かに綺麗だった――とはいえ、セリッサのほうがまだ一歩ほど上をいっているが。

 そのことを褒めたほうがいいのだろうか、と考え――それが教師らしい態度だろうとも考えながらも、ミュゲは結局褒めることはせず、代わりに別のことを口にした。


「これで、あとは一人だけか」

「…………」


 遠くへ視線を向けるミュゲに答えることはできず、セリッサは同じように視線を動かした。他の三人、レオネとシュティ、シアも同じように目を向ける。といっても、シアの場合は意味が分かってというより、シュティの真似をしただけだったのだが。

 ミュゲを合わせた五人の視線の先にはシェオルが走っていた。魔法少女としての力を見る訓練だったため、魔法少女になれないシェオルは基礎体力の訓練を続けている――ミュゲは見学していろと言ったのだが、「じっとしているのなら走ってきます」とシェオルが自ら望んで鍛錬をしていた。

 正直にいえば、ミュゲでさえ少し驚いていた。魔法少女に成れば戦女神であるアテネから戦いと魔法の知恵を得られるとはいえ、何もしなくてもいいということはなかった。その力を十二分に発揮できるように、普段から戦いの精神と身体を養っていく。その為に、魔法少女学園があった。戦いを教える以上、魔法少女の訓練はそれほど甘いものではない。

 最初は誰もがその訓練についていけない。魔法少女を良く知っているセリッサやシュティでさえ慣れるまでには時間がかかっていた。普通にこなしているイリスは珍しいほうなのだ。


(それが……)


 魔法少女に成ることができないシェオルは、それ以上の鍛錬を自ら進んでやっていた。魔法少女は兵隊ではないので、当然限度を持って鍛錬は行っている。倒れるような訓練はしていない。だから、ミュゲは限度を考え止めているのだが、シェオルは平然と何倍もの訓練を行っていた。十二歳という少女が耐えられないであろうほどの訓練を。

 旅をしていたというのなら、もしかすればシェオルのほうが普通なのかもしれないが……それでも、こうも違うのかと考えてしまう。


「……先生」


 シェオルの走りを目で追っていると、セリッサは控えめに……聞くことに迷いを含めながらミュゲへと問いかけた。


開花(フルーリール)しているままっていうことはありませんか?」


 こちらを見つめてくるセリッサに一度だけ視線を合わせ、ミュゲは再びシェオルへと顔を向けた。そのまま、口を開く。


魔法少女(グラウコーピス)の力の源はなんだ? レオネ」

「えっ!? え~と……」


 急に話を振られ、レオネは明らかに慌てながら記憶を呼び起こすように視線を彷徨わせ、迷いつつ問いに答える。


「魔力……とか」

「違う。シュティ」

「戦女神アテネです」

「そうだ」


 迷いなく明快に答えるシュティに頷き、ミュゲは変わらぬ口調で淡々と続けた。


「私たちはアテネの知識と力を共有している。魔法少女の力量はどれだけアテネの力を得られるか、ということになる。だが、今だ、その明確な方法は分かっていない。どうすれば、よりアテネの力を得られるかは誰も知らない。聖女でもな」


 説明を続けるが、これはすでに授業で教えていることでもあった。復習というほどでもなく、ただの確認作業でしかない。魔法少女であれば理解していなければならないことだった。――まあ、レオネには後で魔法少女の心得を書写をさせよう。


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