十七
ティスに許可を貰い、街に出てから数分――
「あら、セリッサちゃん、こんにちは」
「おー、アルカンシエルに入学したんだね。おめでとう」
「制服似合ってるよ」
「いよいよ、セリッサも魔法少女か。頑張りなよ」
などや、
「今日は良い果物が入ったんだ。食べていくかい?」
「ほら、これ持っていきな。お菓子」
「おお、良く来たねぇ。ちょっと待ってな、いまパンが焼けたところだ」
など、セリッサが歩くだけで町の人々が声をかけてくる。
「ありがとうございます」
と微笑み返すセリッサを横で見つつ、レオネは貰ったお菓子の最後を口にいれ――セリッサは一つ一つ丁寧に遠慮していたのだが、レオネは貰っていた――いつもの見慣れた光景ながら感嘆した声を上げた。
「さすが、セリッサだよねぇ。いつものこととはいえ」
「いつもこんな感じなんだ」
「うん、いっつも」
「そんなことはないです。今日はたまたま……」
セリッサは困ったように否定しつつ続けた。
「でも、皆さんいつも優しくしてくださって……ぁ」
「いつもって自分でいってるじゃん」
「まあ、いいんじゃない。優しくしてもらえるのはいいことだよ」
セリッサの気持ちは分からないでもなかった。もちろん街の人が優しくしてくれるのは嬉しいことなのだが、やはり困ってしまうのだろう。セリッサの真面目で優しい性格からいって、上手く対応することはできないのだ。全てを一つ一つ受け止めて、応えてしまう。
それが分かるから、シェオルはセリッサを労わるように笑って頭をぽんっと撫でた。
「ぁ、う……ありがとうございます、シェオルさん」
「? なんもしてないよ」
「いえ、その頭を……」
「?」
「ああもう、イチャイチャはそれくらいにして」
顔を赤らめるセリッサは放っておいて、レオネは今更ながらの疑問をシェオルに問いかけた。
「そいえばさ、シェオルってお金あるの?」
「……レオネ」
「いや、だって。旅してたのなら、やっぱり気になるし」
魔法少女の役割のこともあり、加えて、魔法少女の数も少ないことから、学園の運営に関しては都市が管理することになっていた。つまり、学費や寮での生活に関しては、都市が全て受け持っている。なので、お金がなくとも学園生活に支障がでることはない。
ちなみに、現役の魔法少女になれば一応の給料のようなものは出るのだが、学園での生活が保障されている為、それほど多くはなかった。魔法少女の使命と、都市の治安を司る役割を考えれば少なすぎるという意見がないでもないが、それは周囲がいっているだけで魔法少女たち自身が不満をいうことはなかった。何故なら、お金のために戦っているのではなく、魔法少女に誇りを持ち、人々を守るという誓いを持って戦っているからだ。そうでなければ、アテネの意志を継いだ魔法少女とはいえない。
ともあれ、確かに学費や生活費などの心配はないのだが、当然ながらそれ以外のお金まで補助されているわけではなかった。私服などの個人的なものに関しては自分で買うしかない。とはいっても、普通の学生と同じく、ほとんどの生徒は家からの仕送りがあり、あまり気にしている人間はいないのだが。
しかし、
(シェオルさんは……)
履歴書の通りであるなら、シェオルの両親はいなかった。しかも、東方の国出身でずっと旅を続けていたのなら、お金の余裕がなくても当然だろう。
そのことに顔を伏せるセリッサに、シェオルはまったく気にしていないように気軽に否定した。




