十五
宣誓式が終わり、シェオルたち新入生は明日から学ぶことになる教室に案内されたのだが――
「授業は明日からだ」
というだけでミュゲの話は終わり、その日は解散となった。
「説明とかなんにもなかったねー」
寮に帰りつつ、レオネは頭の後ろに手を組んで気の抜けたような声をだし天井を見上げた。宣誓式という緊張と、ミュゲ隊長――いや、ミュゲ教師が担任になったという緊張がやっと抜けてきたのだろう。
セリッサも自分が思っていた以上に緊張はしていたようだった。一番、学園に馴染んでいるはずなのだが、やはり宣誓式というのは特別なもののようだ。
ほっと息を吐きつつ、レオネに向かって微笑みながら口を開く。
「説明もできたとは思うのですが、多分、上級生に聞け、ということだと思います。生徒には生徒同士のほうがいいですし、習うより慣れろということなのだと」
「う……確かにそれっぽいかも。ミュゲ隊長……じゃなかったミュゲ先生ってそんな性格っぽいし」
「セリッサやシュティがいるってこともあるんじゃない?」
「あ、それもあるかも」
シェオルの言葉にレオネは腕を外し頷いた。確かに、新入生とはいえないセリッサやシュティがいれば説明の必要はない。教師や上級生に聞かずとも、誰よりも学園のことを知っている人間が二人も教室にいる。ちなみに、今はセリッサ、レオネ、シェオルの三人しかおらず、他の五人はそれぞれに行動していた。
「でも……なんかそれって、新入生だからって言い訳ができない状況だよね」
「言い訳しないといけないようなことをするつもりなんだ」
「いや、しない……と思いたい、多分」
「なんですか、それ」
セリッサはくすくすと笑った。長い付き合いなので、レオネの気持ちは分からないでもない。おそらく、ミュゲ教師の現役の魔法少女と対等に扱うような言葉に気を揉んでいるのだろう。
だからだろうか、そんな気持ちを振り払うようにレオネは明るく口を開いた。
「んで、これからどうしよっか? どこかに遊びにいく?」
「ふふ、そうですね。今からは自由時間ですし……シェオルさんはどうですか?」
「わたしは早く着替えたいかな。これってたしか着替えて良かったよね」
「ええ、校外や有事の際は制服じゃないといけませんが……授業が終われば校内に限り私服でも大丈夫です」
といいつつも、実をいうとセリッサも私服を着た学生をほとんど見たことがなかった。というのも、『授業』というのは早朝の掃除から夕方の炊事まで含まれており、通常であれば私服になれるのは就寝までの二時間か三時間ほどしかない。魔法少女の訓練には当然ながら戦闘訓練も含まれているので、授業が終わっても多くは私服ではなく制服か運動服を着ていた。
「え、着替えるの? 折角、制服かわいいのに」
「んー、動きにくいんだよねぇ、これ。いざという時に困るしさ」
「いざって?」
「敵と出会った時とか」
「てきぃ?」
驚くというより呆れた声を出すレオネに、シェオルは笑って答える。
「そ、敵」
「なに敵って、魔女の従僕のこと? シェオルって、いつもそんなの気にしてるの」
「気にしてるよー、いつもね」
「シェオルさん……」
呆れるレオネにセリッサは複雑そうに視線を伏せた。
改めてシェオルが旅をしていたことを認識する。この学園へ来るまでシェオルは自分たちとはまったく違う世界で生きてきたのだ。そう――魔女の水晶を数十個持っていたほどの実戦の中を。だから、常に敵を意識していてもおかしなことではない。シェオルにとってはそれが普通で日常なのだから。




