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エンデ・デアヴェルト ≪終わりと始まりの物語≫  作者: 松ぼっくり
第2章 「壮途」
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第25話 輪環の章


「天覇・空翔斬!!!」


「ぐぁぁぁぁぁぁぁ…!!!!!」


 妖精の風を纏った刃が男を切り裂いた。刃を鞘に収め、男の身柄を拘束しようとしたその時。次元の歪みが再び強くなり、新たなる人影が現れた。


「くそ…まだいるのか…!」


 その容貌からして女性だろうか。倒れた男を見下ろすその姿はとても無機質で、同じ人間とは思えなかった。


「私に戦闘意思はない。ジアーズが敗北した以上、ここでの戦闘は危険と判断する」


 ジアーズ、それがあの男の名前らしい。女はジアーズを抱えると、歪みへと入っていく。


「待て!」


 追いかけようとしたが、先程の戦闘の影響だろうか、足が鉛のように重い。


「輪環の章を集めていれば、いずれまた会う事になる。私たちのために、せいぜい働け」


 女はそう吐き捨てるように言った。次元の歪みは徐々に小さくなり、やがて完全に消失し、そこには先ほどとは打って変わって静かな空間が広がっている。


----------


「リカルドさん、無事ですか?!」


 リブロがこちらへと駆け寄ってくる。


「はい…なんとか」


「彼は、自身のことを未来からきたと…それに、貴方ならば分かっていると言っていました。一体、どういうことです?」


 今更隠し通す事はできないだろう。それに、リブロは信用に値する人物だ。俺たちの力になってくれるかもしれない。そして、これまでにあったことと、この旅の目的をリブロに話した。


「なるほど…。やはり、輪環の章が関係していたのですね」


 今、彼はなんと言った。やはり、だって?


「リブロさん、なんで輪環の章の事を…」


「私は、このセントラル図書院を預かる身です。そして、歴代の院長にのみ伝えられる極秘の神秘があるのです。それは、初代オノーレス王が封印し、ここセントラル図書院へと隠したと。そして、その名は輪環の章であるという事。ここで起きた事、そして、リカルドさんが出会ったという妖精王の話から考えるに、その本が…いえ、今は欠片となったのでしたね。その欠片が輪環の章の一つである事は間違い無いでしょう」


 ラマラシアの話では、輪環の章は王家にのみ受け継がれる神秘。しかし、それが複数あったとするのであれば、一点に集めておくのは危険が伴う。むしろ、分散するのが道理だろう。


 しかし、その一つがスキエンティスに封じられていたという事は…


「既に理解された様子ですね。リカルドさんの考える通り、輪環の章は、ここイシュタントを存在する各国に一つずつ封じられたと先代より伝わっております。これまで、その存在は数多くある神話の一つだろうと高を括っておりましたが…」


 リブロの話に嘘はない。現に、ここスキエンティスには輪環の章が封じられていたのだ。


「つまり、残りの輪環の章は3つ。テレシウス、グリモワース、そして、オノーレスに封じられている可能性が高いという事ですね」


「恐らくは。しかし…スキエンティスやグリモワース、オノーレスはともかくテレシウスにその一つが封じられているとすれば厄介です…」


 リブロはどこか頭を悩ませた様子でそう言った。


「俺は、ヴェルに出会うまではずっとグリモワースにいました。だから、外国の事は本の内容でしか知らないんですが、テレシウスは何か問題が?」


「テレシウス、彼の国はかつて狩猟民族が起こした集落でした。初代オノーレス王が即位し、世界を一つにと働きかけた事で他国の文化を取り入れ、人並みの生活を送ってはいますが…、ここ数百年は他国からの侵入を排しているとの事です」


 つまり、現状ではテレシウスに向かうのは得策ではないという事。


「ですので、次なる目的地としてオノーレスかグリモワースに向かい、輪環の章を捜索することが最善かと」


 そうなれば話は早い。ヴェリエントスは王国の騎士だ。輪環の章捜索の命を受け、俺とラマラシアと出会って以降、彼は母国に帰っていない。それに、ラマラシアが生まれた国を見てみたいという気持ちもあった。


「分かりました。仲間と相談して、次の目的地を決めたいと思います」


「それが良いでしょう。リカルドさん、その欠片…輪環の章は貴方がお持ちください」


「えっ…!けれど、これはスキエンティスに封印されていた…」


「先程の襲撃者は、何やら貴方に固執していた様子。しかし、その目的はあくまで輪環の章にありました。もし、もう一度あの男が仲間を連れて襲ってきた場合、スキエンティスには立ち向かう術はありません。危険が伴うことは承知ですが、貴方が持っていることが得策であると考えます」


 リブロの言い分は理にかなっている。それに、元よりこの旅の目的は輪環の章の回収にある。そして、未来人の危険が隣り合わせであるということ。この戦いに、他人を巻き込む訳にはいかない。


「分かりました。これは俺たちが回収します。そして必ず、残りの章もこの手に」


「はい。では、行動は早い方が良いでしょう。オノーレスは、スキエンティスより馬車で半月ほどの距離に位置しております。準備が必要でしょう」


 リブロは続けて、


「必要となる物があればなんなりと申し付けください。私でよければ、喜んで力となりましょう」


 リブロに礼を言い、俺は図書院を後にした。そして、ヴェリエントスとエリカに、今日の出来事を報告するためにミゲル夫妻の家と向かった。


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