第21話 その名はティルフィー
「フェア・ヒール」
目の前に立つ…いや、浮かんでいる妖精の唱えた魔法が俺の体を包むと先程までの痛みは瞬時に消えた。癒しの魔法…一体何者なんだろうか。
「治癒魔法をかけたからもう痛くないよね」
「え、うん…ありがとう」
よしよし、とはにかみ頷く妖精。そして、その美しい羽を揺らし、俺の前へふわりと舞う。
「じゃあ改めて、キミは誰?どこから来たの?」
ひとまず、この妖精に危険がない事はわかった。今必要なのは状況確認だ。それに、治癒魔法を使ってくれた以上好意を無碍にするわけにはいかない。
「俺はリカルド。仲間と一緒に旅をしていて、さっきまでスキエンティスのセントラル図書院で…」
禁書庫でオノーレス、そしてイシュタントの歴史を紐解こうとして本を手に取った瞬間、気づいたらここにいたこと。急に頭痛に襲われたところを助けられて今に至るということを伝える。
しかし、説明を聞いた妖精は何やら要領を得ないといった様子で、
「キミのいうスキエンティスもオノーレスも聞いたことがない!イシュタントはこの世界を作った神王様が名付けた事は知ってるよ!」
と、首をかしげたりはっとしたりと表情を忙しく変えている。
それに、スキエンティスもオノーレスを知らずにイシュタントは知っていて、神王様だって…?一体何を言っているんだと互いに様子を伺っていると、
「そうだ!ちょっと動かないでね!」
そういうと、妖精はふわりと舞い、両手を俺に向かって差し出した。
「フェア・レゼント」
「…!」
レゼント、これまでに二度見たその魔法は対象を分析する魔法。名称が異なるのは気になるが、恐らく同じ効果だろう。
魔法をかけた妖精は、ふんふんと若干興奮した様子で急に笑みを浮かべ、
「なるほどね、キミは未来から来たんだね!」
と、途方もない事を言い出す。
「未来から…?一体どういう事なんだ」
「その前に、ボクの名前を言ってなかったね!ボクはティルフィー、偉大なる妖精王様に仕える賢く可愛い妖精さ!」
と、何度も片目をぱちぱちとしてポーズを決めていた。




