第20話 禁書庫(2)
本に触れた途端、体が眩い光に包まれた。目を開けていられないほどの光にどうする事も出来ないでいると突然の浮遊感に襲われる。
「な…なんだ?!」
未だ眼前は光に包まれており、自分の体がとてつもない勢いでどこかに移動しているという感覚のみがそこにあった。
「くっ…!」
なんとか状況を確認しようと目を開け、少しずつ光に慣らしていく。すると、浮遊感が収まり光も徐々に弱くなっていった。
「一体何が起きたんだ…」
そう呟き、徐々に戻っていく視界で辺りを見渡すと、そこには驚きの光景が広がっていた。色とりどりの花が咲き乱れ、シャボン玉の様なものがそこかしこに浮いている。まるで絵本に出てくる妖精の国のようだった。
状況を確認しようとしても、眼前に広がる光景から得られる情報ではどうすることもできない。ただ一つ確かなことは、ここは元いた世界とは異なる何処かという事だけだった。
突然、頭が割れるような痛みが俺を襲った。
「ガッ…!」
頭を抱え、その場に崩れ落ちる。経験したことの無い痛みに悶え苦しむうちに意識が朦朧としていく。
「本当に…何が起こって…」
意識が遠ざかっていく。もしかしたら死んでしまうのかもしれないと思考があらぬ方向にいきかけたその時だった。
「キミは誰?」
誰かに声をかけられた。しかし、今は返事をする余裕がない。
「どこか具合が悪いの?」
見ればわかるだろ、そう悪態をつきたくもなったが、やはりその余裕もない。先程よりも強くなる痛みに思わず呻き声をあげると、
「"フェア・ヒール"」
声の主がそう呟くと、体が光に包まれ、気づけば痛みが治っていた。突然の出来事に驚いたが、どうにか立ち上がり声の主へと向き直る。
そして、ようやく声の主の姿を捉えた。そこにいたものはとても小さく、ガラス玉のように丸い瞳と柔らかそうな栗毛、そして虹色の羽を持つ妖精だった。




