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エンデ・デアヴェルト ≪終わりと始まりの物語≫  作者: 松ぼっくり
第2章 「壮途」
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第18話 刺客(3)


あれから家に戻り、ヴェリエントスと互いの成果を報告しあった。


俺たちは依頼を受けて初日だったことから目立った成果はなかったが、ヴェリエントスの方はすでに顔を合わせるにまで至ったという。


邂逅の末起こったことを全て聞き、ラマラシアの読みの凄さに驚いていた。


ヴェリエントスのおかげで今後も俺たちが情報を掴むまで戦うことはなさそうであることがわかり、内心胸を撫で下ろしていた。


次からはヴェリエントスも俺たちの依頼に加わり、より資料探しに力を入れることになった。


そして2週間が経った。


--------


「結局、核心に迫るようなことは何も分からなかったな」


「でもでも、知らなかったこといっぱい知れたし…レベルアップしたよ!」


「エリカの言う通りだな。大きく前進とはいかなかったが、それでも着実に前には進んだ」


俺たちは依頼完遂までの間、使える時間を全て使いオノーレスの歴史書を読み漁った。ヴェリエントスですら知らなかった歴史を知ることはできたが、やはり図書院という公共に公開されている範囲の情報であることから、核心に迫ることはないという結論に至った。


「終わったことを振り返る時間はない。奴らが痺れを切らす前に、次は戦闘技術の向上をはかる時間だ」


以前の計画通り、ヴェリエントスが受けた2件の魔物討伐依頼をすることになった。話し合いの末、先に生体研究所からの依頼をすることになった。


依頼内容はこうだ。最近、森の中型の魔物が活性化しており、その原因を探るため何体かを討伐の後、一体を生け捕りにして捕獲してほしいとのこと。


現地には研究員も同行し、戦闘と捕獲は俺たちで行い、その場で研究員に引き渡して任務は完了だ。


対象の魔物はウォーウォルフ。旅の最初に立ち寄った町で母子を助けた時に倒した敵だ。


一度見たこともあり、余裕はあった。しかし、研究員たちは何度も何度も気をつけるようにと念押しをしてくる。活性化しているとはいえ、そこまで注意することだろうか…。


「反応によるとこの辺りです」


研究員が魔物に反応する機械を手にそう言った。科学国家ならではの装備である。これが全国に流通すれば市民も安全になるだろうが…そう簡単な話ではないのだろう。


「リカルド、エリカ、いつでもいけるよう構えておくんだ」


「了解」


「アタシは準備できてるよ!」


「あなた方は戦闘が終わるまで影に隠れていてください」


ヴェリエントスの指示を受け、研究員たちはうしろへ、俺とヴェリエントスが前へ出た。


精神を集中させて音を聞き取る。唸り声のようなものが聞こえることからすぐにでも戦闘になることは予想できた。


「くるぞ!」


ヴェリエントスがそう叫ぶと同時に、木々の間から狼型の魔物が飛び出してきた。


「シッ!」


魔物が視界に入ると同時に、俺は刀を抜き去った。スキエンティスに来てから様々な場面で戦うことがあった。


穏やかな日々が戻ったとしても毎日剣の稽古は欠かさなかった。ヴェリエントスに言われた、俺の戦い方。


まず一匹目。断末魔をあげて倒れた魔物の後ろから二匹目が飛び出してきた。


右に刀を抜き去った体制のまま、前に出した右足に体重を乗せる。勢いのまま左肩から前に倒れこみ、遠心力に逆らわず半回転を加える。


狙いは外さない。幸いにも敵に頭脳はない。直線で突っ込んでくる限りこちらも余計なことはする必要がない。


「はぁぁぁ!!」


左上段からの袈裟斬りを叩き込む。


「ギィィィィ!!」


二度目の断末魔が聞こえたところで背後から熱気を感じた。ならば、と俺はすぐさま体制を立て直し横へと飛ぶ。


「かっこいいよリカルド!次はアタシの番!」


視界に入るのは残った二匹のウォーウルフ。俺に切られた仲間を前に動揺していたのか、こちらを睨み吠えていた。


「ええっと…炎よ、眼前の敵を焼き弔え!フレアボム!」


エリカのたどたどしい詠唱によって紡がれた灼熱は球体を形成し、前に差し出す両の手のひらの前に現出した。


詠唱が完了し、名称を叫ぶと同時にエリカの元から火球が放たれた。


着弾すると同時にウォーウォルフは三度目の断末魔をあげた。横目にその光景を見て改めてエリカの魔法に感嘆の声をあげる。


エリカの後ろに立つヴェリエントスもどこか驚きの中に満足気な様子を見せていた。


残った一匹は恐怖を感じているのか震えて吠えているだけであった。素早く背後に回り込み、刀を収めた鞘で首筋を殴打する。


キャウンとまるで犬のような鳴き声をあげて気絶したのを見て、研究員を呼んだ。


数人いる中で、明らかに階級が高いと見てとれる初老の研究員が刀についた魔物の体液を拭き取る俺の元へと歩いて来た。


「素晴らしい腕前です。見たところ騎士などではないようですが…あの少女の魔法といいあなた方はいったい?」


ヴェリエントスをちらりと見やると、ゆるく微笑んで頷いていることからこの初老の研究員は信用していいらしい。


「俺たちは探し物をするための旅をしています。縁あってそこのエリカとも出会い、このスキエンティスについてからは3人で行動しています」


そう言うとほぅと関心ともとれる相槌をした研究員は、


「やや、訪ねものをするのに相手からというのは失礼でしたな。申し遅れましたが、私はこのスキエンティスで魔物の研究をしているハオスという者です」


挨拶と共に差し出された手を握り返し、俺も名を返した。


「俺はリカルド、そしてエリカとヴェリエントスです」


どうもと後ろから歩いてきたヴェリエントスが頭を下げる。エリカもそれに倣い、礼をした。


「今回は依頼を受けてくださり助かりました。丁度腕利きのものが出払っていて…我々では魔物に立ち向かうことはできませんから」


ところで、と話の終わりに疑問符を浮かべたハオスが尋ねる。


「リカルドさんたちは探しものをしていると仰っていましたが、一体どのようなものをお探しで?」


この手の質問を受けた時のために、いくつか返答をヴェリエントスから指示されていた。ラマラシアの話であれば、輪環の章は王家の、それも直系の血を引くものでなければ知らない情報。道中出会う人々が知っている可能性は非常に低いが念には念をというわけだ。


「世界各地の名所を巡り、歴史的価値のあるものを研究するためと言えばわかっていただけるでしょうか?」


と、いかにもな答えを提示した。ハオスはなるほど、と相槌を打ち、


「では、図書院は既に行かれましたかな?あそこは我が国が誇る知識の宝庫といっても過言ではありません。きっとあなた方の役に立つ」


そこまでを聞き、俺の頭に少し悪い考えが閃いた。いや、決して悪いといっても邪悪なことではないのだが。


「実は、閲覧できる情報には限りがあるようで…我々の求めているような歴史を掘り起こせる書物には辿り着けないんです」


と、冗談交じりに返す。続けて、図書院を利用しやすくするために院内の清掃を手伝っていることも告げた。


すると、ハオスは少し考えた様子を見せた後、それではと何かを思い付いたような顔をして、


「図書院の上の者に私の旧知がいるのですが、私が話を通せば恐らく閲覧の幅が広がるかと」


思った通りの答えをもらってリカルドは内心笑みをこぼした。ちょっと頭を使ったつもりだったが上手くいってよかった。


「と、言うのが恐らくあなた方にとっては助けとなるでしょう」


とハオスは子供が悪戯をしかけたような悪い笑顔を見せた。


「雑務は増えるでしょうがその代わり、報酬金の他に資料の閲覧権を渡すことを話しておきましょう。学問の道は自ら切り開くものですから」


はっはっはと愉快な笑いと共にそう言ってのけた。この言い分だと俺の浅はかな考えは読まれていたというわけだ。


確かに、年の功に差がありすぎる。俺のような子供じみた駆け引きなど意味をなさない。


「えぇ〜また仕事増えるの〜?」


エリカの不満げな声を聞き、ハオスはまた愉快な笑い声をあげた。


その後研究員の方の見送りをして、ハオスとも別れ、ミゲル夫妻の待つ家へと戻った。


道中ヴェリエントスが一本取られたなと笑っていたが、まぁ勉強になったよ少し不貞腐れて返しておいた。



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