第15話 忍び寄る影(3)
無機質な音が響き、感情のない電子音声が耳に届く。
「システム・オールグリーン。ワープ完了」
重苦しい音とともに扉が開く音が聞こえ、目を開けると青白く光る空間が目に入ってきた。
「心拍数・思考共に異常なし。お疲れ様でしたジアーズ」
「……」
いつも通りの会話。答える必要はない。
「ジアーズ。ホーエンハイム様がお呼びです、準備が整い次第管制室へお願いします」
「分かった」
いつになってもこの作業は慣れない。とにかく汗を流したい。
この部屋は不気味なほど快適だ。気温・湿度共に人類が最も生きやすい環境が常に保たれている。
だからこそ不気味なんだ。これが生きるってことなのか、俺には分からない。向こうの世界を見たのは僅か数日だったが、そこに住む人間は皆本当の意味で"生きて"いた。
まぁいい、とにかく今はシャワーだ。上着を脱ぎ、脇に挟んだまま俺はシャワールームへ向かった。
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「来たか」
「ただいま戻りました」
「して、首尾は」
「こちらの予想通り、密偵を破壊したのは護衛の者で間違いないでしょう。向こうの時間で4日尾行をしましたが、恐らく初めから気づかれていたでしょう。対象自体は全く気づく様子は無かったですが、あの護衛には注意が必要かと」
「お前では勝てない相手と言うことか?」
その言葉を聞いた瞬間、体内の温度は一気に上昇した。それに対応するように、頭は冷えて行く。
「いえ、仕掛ける機会がなかったまでのこと。父上が望むのであればすぐにでも消しましょう」
「……出来損ないのお前が言うことなぞ信じることはできぬ、だが、現状この場で使えるのはお前以外にはいない。精々己が使命を全うしろ」
はい、と眼前に立つ男に頭を下げ、俺は部屋を後にした。
自室に戻った途端、壁を殴りつける。この部屋は防音だ、どれだけ暴れようが破壊しない限り周りの迷惑にはならない。
「出来損ない出来損ないっていつもうるせぇんだよ!!!」
装備していた武器を床に叩きつけ、そのままベットへと横になった。
「俺だって好きでこうなってるんじゃない……。なにもかも全て…あいつが…!」
俺は選ばれなかった。
優秀ではなかった。
あいつは選ばれた。
あいつは優秀だった。
ただ、それだけだ。
「お前を殺す。それだけが、俺がこの世に存在する意味」
俺の言葉は誰にも届いていない。唯一聞いているのは、虚しく心に穴を開けた自分だけだ。




