第14話 忍び寄る影(2)
「さて、クエストボードを見に行こうか」
リカルドたちと別行動をとる事にしたのは理由があった。
昨日、ミゲルの依頼を受けた後あたりから違和感は感じていた。しかし、気に留めるほどではなかったため、放置してしていた。
地下水路でスライム討伐を済ませて地上に登ってから、違和感はほんの少しの確信へと変わっていった。
「標的が私なのか、それともリカルドかエリカなのか…、ハッキリさせねばな」
何者かに尾けられている。人影を確認したわけではないが、気配を隠そうとしていないあたり誘っているのではとも思った。
故に、その対象をハッキリさせるため別行動を取った。これで私への視線が消えればすぐにリカルドの元へ向かおうという算段である。
あえて遠回りをしてクエスボードへと向かったが、道中何者かの気配が消えることはなかった。つまり、
「なるほど。標的は私か」
私を狙うというと思い当たるのは2つ。まずは王国騎士団。昨日壊滅させたマフィア一味のボスであるデクスから聞いた騎士団の話。
決して奴の話を信じ切ったわけではないが、嘘だと切り捨てるにはいささか壮大すぎた。
その件を踏まえて、私の行動を監視する相手として騎士団は頭の中に入れてある。
そして本命は未来人。かつてリカルドと共に撃退した未来人の仲間がまたリカルドを狙って来たと考えるのが最も辻褄があう。
しかし、未来人だとすれば何故私を追うのか。私がいない今こそ、リカルドを狙う絶好の機会のはず。
考え得る限り、私を狙うとすればその理由は1つ。邪魔者は先に消しておくということであろう。
ならばこちらから仕掛けるのみ。
「よし、ここならば良いだろう」
小声でそう呟く。クエスボードを目指す道からわざと逸れて、地下水路の方向へと向かった。
人が居なくなったところでなら戦闘もできる。私自身逃げ場を失うが、四方を壁に囲まれた路地へと誘い込んだ。
すると、気配を一瞬強くなったあとすぐに消えて行った。剣の柄にかけた手を戻し、辺りを見回すが、やはりすでに気配は無かった。
「なるほど…、なかなかに手強い相手のようだな」
来た道を戻る途中、例の気配は一度も感じなかった。正体を掴めなかったのは痛いが、尾けている誰かがいることを確信したことは大きい。
リカルドと合流した後、作戦を立てねば。
そう思い、本来の目的である依頼を受注するためクエスボードへと向かった。
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図書院を出ると、そこには何か袋を持ったヴェリエントスが待っていた。
「リカルド、何か情報は掴めたか?」
「まぁまぁかな。ミゲルさんの家に着いたら詳しく話す」
それは楽しみだというヴェリエントスは、いつもよりも表情が固い。
「ヴェル、何かあった?」
ヴェリエントスは先程までとは違う普段の表情に戻り、何でもないさと一言いってエリカに袋を渡した。
「帰り道で菓子屋の店主に勧められたものだ。エリカが好きそうだと思って買ってみたんだが」
エリカは受け取った袋の中身を取り出して、弾けるような笑顔を見せた。
「凄い!色んな動物の形のクッキーだ!」
「へぇ…、良くできてるなぁ」
ありがとうヴェル!と言ってエリカは上機嫌で歩き出した。
「私たちも行こう。いいクエストをいくつか見つけた。君の得た情報と共に話し合おう」
了解とヴェルに告げ、俺たちは家路に着いた。
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「………」
さっきはまずかったな。あの護衛はなかなかにできる奴らしい。
「あれが英雄?笑わせる」
この選択は間違っている。
この世界は間違っている。
正しいのは……
「俺だ。俺こそが英雄に相応しい」
だから証明してやる。
お前より俺が優れていることを。




