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エンデ・デアヴェルト ≪終わりと始まりの物語≫  作者: 松ぼっくり
第2章 「壮途」
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第12話 いざセントラルへ


「うわぁ〜!大きい!キレイ!」


オートモービルに乗り、俺たちはスキエンティスのセントラルにやってきた。


「見て見て!リカルド、ヴェル!おっきな建物がいっぱい!」


エリカがその大きな目を輝かせながら窓の外に広がる景色を見ている。


確かにこの景色は圧倒的だ。見上げるほどの高さの建物や、色とりどりのオートモービルが走っていたりと、グリモワースの中心街とは全く異なる様相に、思わず俺も感嘆の声を上げていた。


「ヴェル、この街にも武具屋とか鍛冶屋はあるの?」


「あぁ、寧ろグリモワースよりも良品が揃っていると言っていいだろう。グリモワースはあくまで魔法に特化した国だ、スキエンティスは技術に特化した国。その技術は武具にも応用されている」


それを聞いてより胸が弾んだ。本来の目的を忘れない程度に目にして行きたいものだ。


「まずは宿を決めにいくんだよね」


「そうだな、何をするにも拠点を確保せねばなるまい」


俺たちが話していると、エリカが間に入ってきた。


「あのさ、ちゃんと2人のお手伝いもするから…、街を少しみてもいい?」


上目遣いでそう言われては俺たちに反論するという選択肢は生まれなかった。


元よりある程度の期間滞在する予定なのだ。街の雰囲気を確認する意味も込めて散策は必要だろう。


3人でどこを見て回るかと話をしているとオートモービルのパネルから電子音が鳴った。


「そろそろ到着のようだ」


いよいよセントラルだ。本来の旅の目的である輪環の章の捜索。その手かがりの一歩を今踏み出す。


「エリカ、足元気をつけて」


そう言って手を差し出すとありがと、とはにかんで握り返してきた。


そうして俺たちはスキエンティスの中心都市-セントラル-へと降り立った。


--------


「やはり道中の村や郊外とは違って値が張るな」


ヴェリエントスの呟きに俺も頭を抱えていた。


スキエンティスに着くまでの道中で、様々な人たちからの依頼を受けたこともあってか郊外で宿を借りるには十分な金銭もあった。


それに、グリモワースの教会を街で良くしてもらっていた知り合いに預ける際に、ラマラシアの貯金を受け取っていたこともあって余裕はあった。


しかし、セントラルの宿では最もグレードが低いものでも今の所持金では1週間保たないことが発覚した。


ヴェリエントスが騎士として得た自らの貯金を使うと言い出したが、俺もエリカもそれは拒否した。


3人での旅で、たった1人に負担させることはしない。口にはしなかったか子どものエリカもその自覚はあったようだ。


俺は街で魔物退治の依頼を受けて金を稼ごうと提案した。エリカがいる以上危険な真似はしたくなかったが、エリカの魔法は俺たちにはとても戦力になるものだった。


資金調達も兼ねて、俺の剣の腕とエリカの魔法の精度を上げることを兼ねて、魔物退治は効率がいいという判断だ。


ヴェリエントスも二つ返事で承諾してくれた。とりあえずは今ある資金で取れる日数の宿を予約し、俺たちは依頼を受けに行くことにした。


「依頼を受けるにしても、どうすればいいんだ?」


提案はしたものの、そのやり方は考えていなかった。今までは困っている人の話を聞いて、そしてお使いや魔物退治はしてきたが、街での依頼となるとそもそも困っている人を見つけるところから始めなければならない。


「そうか、君には無縁のことだったか。街にはクエストボードというものが各所に存在している」


クエストボード。ヴェリエントスの話によると、個人では難しい魔物退治やお使いに対して報酬金を設定し、依頼人の所在地を書いた紙が貼ってあるものらしい。


街のそこら中にあるそうだが、グリモワースにあっただろうか。


「君の住んでいたところでは、魔物も出るようなことはなかっただろうし別段必要のないものだったのだろう」


そして、クエストボードを見つけだところでヴェリエントスが驚きの声をあげた。


「これは凄い。オノーレスの城下町でも木の板のクエストボードが主流だが…、さすがスキエンティスだ。機会を使用した電子クエストボードがあるとは」


目の前にはピピピと電子音が鳴る鉄の板があった。紙でも木でもない鉄にはつらつらと文字が流れており、それを触ると依頼の詳細と依頼人の顔写真が出てきた。


「魔法みたい!」


エリカがはしゃいでいる様子をみて、君は本物の魔法を使えるんだけどねということは言わないでおいた。


「ふむ、これなんてどうだ?」


ヴェリエントスが開いた依頼を見る。そこには、地下水路の魔物退治。スライム状の魔物が水道管周りに住み着いてしまって工事がうまくできない、と書いてあった。


「スライムって?」


「簡単に言えば、水の塊の魔物だ。危険性はかなり低いが、戦闘能力のない一般人には十分危険なものだな」


なるほど、つまり俺たちにとっては金を稼ぐ手段としてはもってこいという訳だ。


「わかった、その依頼を受けよう」


そうして、俺たちは地下水路のスライム退治をしに行くことになった。


--------


依頼人の男はとても気のいい人だった。恰幅の良い見た目の通り、優しい声音で俺たちを迎え入れ依頼の説明を始めた。


男は街の水源を管理する仕事をしている方で、その道一筋のため武器などに触れたことはなく、スライムが現れた時にはすぐに逃げ出してしまったという。


しかし、このままでは水の管理が滞り、市民の生活に支障が出てしまうと危惧したために依頼を出したそうだ。


これまで数は少ないが、それでも脅威と呼べる相手と戦ってきた俺にとってはあまり恐れるものではなかったが、それでもまだ若い俺のエリカを見て、危ない目に合わせてすまないと何度も頭を下げていた。


男は妻にいって俺たちに食事を持たせてくれた。そこまで時間がかかる依頼でもないが、その好意はありがたいものだ。


指定された地下水路に着くと、ヴェリエントスが言っていた通りの水の塊の魔物が3体ほど確認できた。


ヴェリエントスには手を出さないよう言い、2体を俺が、残り1体をエリカが、それぞれの戦い方で倒した。


あの時はエリカが魔法を使えることに驚いて良く見ていなかったが、この少女は魔法の才があるのだろう。


本を読んだだけで基本的な炎と水の2属性を下級ではあるが扱うことができていた。


「ファイア!」


「プシュゥゥゥ!!」


エリカの炎魔法がスライムに直撃し、蒸発して消えていった。


「よし、これで依頼達成かな」


「なかなかの手際だった。君も慣れてきたな」


ヴェリエントスの賛辞を素直に受け取り、エリカにも声をかける。


「エリカは?疲れてない?」


「うん、大丈夫。あたし、そんなひ弱じゃないからね!」


そう言って笑顔を見せていた。


討伐完了の報告をするため、俺たちは依頼人の男の元へと向かった。


--------


「おお!あんたたち無事だったか!」


「はい、依頼にあった魔物は全て片付けました」


ありがたい、の男は頭を下げた。そして、依頼の簡単さに見合わない報酬を渡したところで一度断ったが、男の熱意に負け受け取ることにした。


「それにしてもまだ若いのに凄いな。あんたらはどういう関係なんだ?」


男は食事もしていけと、俺たちを家に招き入れた。宿では食事は出ないので素直に言葉に甘えることにした。


そして、食事をする中俺たちの事が気になったらしい。輪環の章やエリカの出自は伏せて、とある物を探す旅をしているということを説明した。


そして、宿代を稼ぐために依頼を受けている最中だということを話すと、男は妻と何やら話をした後、


「なんだ、そんな事ならこの家を使うといい。俺たちには子供がいなくてな。部屋も余っておる」


「流石にそこまでしていただくわけには…」


と、俺もヴェリエントスも最初は断ろうとしたが、どうも気のいい男は言葉を曲げなかった。


これ以上断るのは失礼だという事で、これも言葉に甘えることにした。


「そういやぁまだ名前を聞いてなかったな。俺はコーキス・ミゲル。ミゲルと呼んでくれ。そんでこいつは妻のアンだ」


「紹介が遅れましたね。ミゲルの妻のアンと申します。依頼、受けてくださってありがとう」


ミゲルとアンは、今日会ったばかりなのにまるで親と思えるほど優しい夫妻だ。今日1日の彼らの行動を見れば、それは火を見るより明らかである。


「俺はリカルド、そしてヴェリエントスとエリカです」


そう言って視線を送り、2人とも各々挨拶をする。


そうして自己紹介が終わり、残りの食事をいただいた後で俺たちは部屋に招き入れられた。


ヴェリエントスは宿にキャンセルの旨を伝えに行くと言って外へ出た。


エリカは疲れたのだろうか、部屋に入るなり寝てしまった。


エリカの淡い緑の髪を梳きつつ、俺は今後のことを考えながら夜空を見ていた。


「明日は図書院に行ってみよう。何かわかるといいな」


そうして、寝返りを打って毛布を避けてしまっていたエリカに毛布をかけ直し、俺も眠りにつくことにした。

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