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エンデ・デアヴェルト ≪終わりと始まりの物語≫  作者: 松ぼっくり
第2章 「壮途」
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第10話 正しさの形


「リカルド!ヴェル!」


「?!」


デクスが魔法を発動しようとした瞬間、少女の声が響き渡った。


「お嬢ちゃん、駄目だ!危ないぞ!」


警護隊の人を振り切って、淡い緑の少女-エリカ-が俺たちの元へ駆け寄ってきた。


「エリカ!?どうしてここにきたんだ!宿で待っててって言ったのに…!」


ヴェリエントはエリカの声で冷静になったのか、ようやくその口を開いた。


「ここまで1人で来たのか…?何故だ」


「だって…、心配だったから…!」


まずい、このままではエリカを巻き込んでしまう。なんとかしてエリカを逃す時間を稼がなければ。


「お前…、なぁんだ、お前らが匿ってたのか。はははははは!!!!これは手間が省けた!」


途端、デクスが大声で笑いだした。


「手間が省けた…?どういうことだ!」


「こういうことだ!!」


デクスは手に持っていた魔法結晶マギリスを砕いた。


しまった、隙を見せてしまった!


しかし、何も起こらない。何か強大な魔法を発動させるのかと思ったがそういうわけではないようだ。


そう思っていた矢先、俺の背後に立つエリカが急に苦しみ始めた。


「うぁ…!ぁぁぁぁぁ!!!!」


「エリカ?!どうした!」


「エリカ!エリカ!」


俺とヴェリエントスが揺さぶって声をかけるも届いている様子はない。


「お前!何をした!!」


「さっき言ったよなぁ?魔法結晶(マギリス)の実験で1人だけ耐えた子がいたって。それがそいつさ。俺が砕いたもんなはそいつの中にある魔法結晶(マギリス)とリンクして、ストッパーの役割を果たしている。だから魔力を込めて破壊することでそいつの中にある魔法結晶(マギリス)を覚醒させたのさ!」


さっきの話では他の子供たちは魔力の暴走に耐えきれなくて亡くなったと言っていたが、エリカはそれに耐えた。


しかし、ストッパーを外したということは当時の実験以上の魔力が暴走しているということだ。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


エリカは断末魔とも取れる叫び声を上げた後、パタリと倒れ動かなくなった。


「エリカァァァ!!!」


俺はエリカを抱きかかえ叫んだ。


「ちっ、耐えられなかったか。お前らにとどめを刺す役目をやろうと思ったのによぉ」


「貴様…!」


ヴェリエントスが腰から怒りの刃を抜き、デクスへと斬りかかる。


「はっ!まぁいいさ、元暗部の力…、見せてやるよ」


そうしてヴェリエントスの剣を、手に持った漆黒の短刀で弾いた。


そのまま二人は戦闘に入った。


こちらに駆け寄ってきた怪我をしている警護隊の方がエリカに蘇生法を施すが意識は戻らない。


「エリカ!エリカ!」


呼びかけるも反応はない。


「この少女は私が見ています、あなたはヴェリエントス殿の応援に…!」


「くっ…!お願いします!」


警護隊にエリカを任せ、俺はヴェリエントスの元へ走る。


「はぁぁぁ!」


そして、デクスの後ろに回り込み抜刀術で距離を詰めた。


「遅ぇよ!!!」


しかし、俺の刀は短刀によって防がれる。隙とみたか、ヴェリエントスが背後から斬りかかるがデクスは読んでいたのか蹴り上げでヴェリエントスの剣を防ぎ、俺もろとも回し蹴りで吹き飛ばした。


「二人掛かりでそんなもんか?騎士も弱くなったもんだ」


強い。人との戦闘は二度目だが、あの未来人よりも明らかに目の前の男は強かった。


「今度はこっちから行くぜ?」


デクスは一瞬で距離を詰め、漆黒の短刀煌めかせた。


「くっ!」


なんとか鞘で防御をするが、とてつもなく重い。俺と対して変わらぬ体躯から繰り出される攻撃は、一撃一撃があのベヒーモスの攻撃とも思える重さだった。


「どうしたどうした?防御だけじゃ死ぬぜ?」


「……っ!」


デクスは気づいていなかった。俺は、攻撃ができないわけではない。確かにデクスの攻撃は強い。しかし、防御に徹すれば防ぐことはできる。


そして、俺を攻撃することに意識を集中させることで、ヴェリエントスが魔力を込める時間を稼ぐことができた。


「灼熱よ、我が剣に集え!イグナイト・エスパーダ!!!」


ヴェリエントスが八双の構えから一心で剣を振り下ろす。


直後、ヴェリエントスの剣から炎が伝いデクスを直撃した。


「ぐぁぁぁぁ!!!!!」


「はぁぁ!!」


躊躇っている暇はなかった。人を斬ると言うことに恐れを抱いていては、守りたいものは守れない。


怯んでいるデクスに抜刀で一撃を食らわせ、遠心力を使って鞘で追撃を浴びせる。


「がぁ…!!!ちぃ!!!」


俺とヴェリエントスの攻撃を受けても、デクスは倒れなかった。


跳ねるように距離をとって、浅い呼吸をしている。


「はぁ…はぁ…、やるな、さすが王国騎士。親衛隊ともなると魔法剣も使えるとは…、予想外だったぜ」


「降伏しろ、さもなくば罪を償う機会をやる!」


ヴェリエントスが剣先を向けデクスに告げる。


「はっ、降伏?舐めてんのか。俺たちを裏切ったお前たちに頭を垂れるわけがねぇだろ!」


ヴェリエントスは剣先を向けたまま、


「もう一度言う。これが最後だ、降伏して罪を償え!」


両者は視線を交わすのみで何も話さなくなった。


そして、静寂を破ったのは背後から聞こえた咳き込む音だった。


「はぁはぁ…、ごほっごほっ」


エリカが意識を取り戻したらしい。よかったと安心したのも束の間、俺たちがエリカに意識を向けていた時だった。


「はっ!隙を見せたか!悪いがここまでだ!あの世へ付き合ってもらうぜ!!」


デクスが服を脱ぎさると、その体にはいくつもの爆薬が巻き付いていた。


「まずい!!自爆するつもりか!!」


「なっ?!」


自爆?!ここでそんなことをすれば間違いなく誰も生き延びられない。そんな強行手段に出るなんて思わなかった。


この距離じゃ攻撃も仕掛けられない。


「みんな…、今そっちに行くぜ」


デクスが爆薬に点火したその瞬間、


「スプラッシュ!!!」


少女の声が聞こえると同時に、デクスの体を水が包み込んだ。点火された爆薬はその火を失い、爆発は防がれた。


そして水が霧散し、デクスが崩れ落ちる。水の中にいたため呼吸できずに意識を失ったのだろうか、そのまま動かなかった。


俺とヴェリエントスは驚きのあまりその場を動けなかった。


声の主であるエリカを見ると、両手を前に差し出した態勢で息を切らしている。


そのままパタンと倒れたのをみて、漸く体が動いた。


「え、エリカ!大丈夫か!」


エリカに駆け寄り、その体を抱き寄せる。


遅れて、ヴェリエントスも隣に駆け寄ってきた。


「リカルド…、ヴェル…、大丈夫?」


「俺たちは大丈夫…、エリカ、今のは…?」


エリカが無事なのはよかった。しかし、今はさっきの現象を確認せずにはいられない。


「あたしの体のこと…、聞いたでしょ?」


うん、と頷く。


「あたし、魔法、使えるの。そんな自分が怖くて、使おうと思ったことなかったけど」


衝撃の事実に何も言えなかった。そんな俺を見かねてか、エリカは話を続ける。


「あの人たち、魔法の知識をつけろって。盗んだお金と交換に魔道書とご飯をくれたの。一人でいる時、何もすることなかったからずっとその本読んでた」


さっき使ったのは本に書いてあった魔法、とエリカは言った。


「反動はないのか?」


ヴェリエントスの問いに対して、エリカは少し笑って、ちょっと疲れたけど大丈夫と言った。


ともかく、エリカのおかげでデクスの最後の手段も阻止できた。


そして、ボスである彼が倒れたことで俺たちの戦いも終わった。


--------


「彼の意識が戻ったそうだ」


ヴェリエントスが警護隊に呼ばれて少し経ったあと、戻ってきてそう言った。


「そっか…。良かったって言っていいことじゃないけど、罪を償うには生きなてなきゃいけないからね」


マフィアとの激闘から数日が経ち、戦いの場となった廃工場は警護隊によって封鎖された。


長らくスキエンティスの裏で暗躍していたマフィアたちは戦闘で死亡した者を除き、所属していた全ての人が法の裁きを受けることになった。


しかし、そのほとんどが大きな罪にはならなかった。


俺たちは元々2つの目的であの戦いを行なった。1つはマフィアの殲滅。そして、囚われている子供たちの救出だ。


しかし、俺たち救出班はその所在を確かめることができなかった。


それは、マフィアたちは俺たちの作戦を知っており、衝突の前に子供たち全員をスキエンティスの孤児院に預けていた。


自分たちの身分を明かした上で多額の保護費を渡したという。


エリカから聞いた話も合わせて、彼らが完全なる悪とは言い切れなくなってしまった。


彼らはマフィアとして警護隊から厄介扱いをされていたが、実際は酒やギャンブルに溺れて借金を背負うような大人から子供を奪い取っていたのだ。


その際に、親を殺害したり街から追い出したりするなど子供達から親を奪ってきたことも事実であった。


孤児院に預けられた子供達は全員が健康であった。盗みを教えられ、金をマフィアに渡す代わりに本やおもちゃ、そして食事を与えられていた。


元を辿れば王国騎士団の暗部。人を殺し、生かすことを知らない彼らにとっては子供の育て方などは分からなかったのだろう。


だからこそ非情に徹しなければならなかった。


「ヴェル」


俺は分からなくなった。何が正義で、何が悪なのか。彼らは紛れも無い悪だ。しかし、彼らが子供たちを親から奪わなかったら子供たちは幸せだったのだろうか。


「俺たち、正しいことしたんだよな」


俺の問いに対し、ヴェリエントスは強い意志を持った眼差しで答えた。


「それは私には分からない。剣では決して正義と悪を天秤にかけることはできない」


「しかし、己の心が間違っていなかったと、そう言っているのであれば間違いでは無い筈だ」


ヴェリエントスの言う通りだ。俺は俺自身で決めたことをしたんだ。その結果、子供達を救えて、街の脅威は消え去った。この行いは決して間違いじゃない。


「そうだ、リカルド。エリカが食事をしたいと言っている」


エリカは魔法結晶を使った反動で、2日ほど寝たきりだった。その後、体調も戻り今日病院から戻る予定だった。


「分かった、場所は決まってるの?」


「彼女の希望がある。初めて一緒に食べたあの飯屋がいいそうだ」


ヴェリエントスが軽い微笑を浮かべてそう言った。















如何でしたでしょうか?


今回は作品と全く関係ないことなのですが…、最近花粉症がひどくてひどくて。

涙も咳も止まらない日々が続いております。


読者の皆さまのアレルギーの薬を飲むなど早めの対処をして、春の風を満喫しましょう( ^∀^)


松ぼっくり

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