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無能聖女の私、放課後に出会った「もふもふ」に悩み相談をしていたら、その正体は呪われた最強騎士様でした  作者: おでこ


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第二章 裏庭のもふもふ


聖女学院の裏庭は、生徒がほとんど来ない。


正確に言えば、来る理由がない。手入れの行き届いた前庭と違い、裏庭は野草が伸び放題で、東の壁には古い蔦が絡みついている。


そしてもう一つ——その石積みの壁一枚を隔てた向こうは、第一騎士団の詰め所と訓練場に面している。普段は夕方前まで打ち合いの音や号令がかすかに届くが、日が傾くと静まり返る。その静けさが、誰かに会いたくない日に来るには、絶好だった。


私があの子と出会ったのは、数ヶ月前のことだ。


夕方、いつもの石段に腰を下ろそうとして、草むらの陰でうずくまっている何かを見つけた。


「……え、なに、あれ」


それは——白かった。


そして——丸かった。


全体的に、とにかく丸くて白かった。大きさは中型犬ほど。全身が綿雲のように柔らかそうな白い毛に覆われていて、つぶらな目が二つ、草の間からこちらをじっと見上げていた。耳は小さく丸く、尻尾はふわふわと短い。


獣なのか、精霊なのか、夢の産物なのか、咄嗟に判断がつかなかった。


(……かわいい)


それだけははっきり分かった。


「大丈夫?」


気づいたら、しゃがんでいた。小さな鼻が、ひくひくと震えている。体が、かすかに揺れていた。野生動物特有の危うさがまるでなくて、どちらかといえば——とてもしんどそうだった。


「触っても、いい?」


返事を待たずに手を伸ばした。柔らかい白い毛に指が沈んだ瞬間、体がぴくりと揺れた。でも逃げなかった。その場で固まって、つぶらな目が半分閉じていく。


「……疲れてるんだね」


人肌より少し低い体温が手のひらに伝わってくる。毛並みはふわふわで、奥から温かさが返ってくる。触れているうちに私の緊張もほぐれていった。


次の日も、その子はそこにいた。その次も。


そうして気づいたら私は毎日放課後、裏庭の石段で、この白くて丸いもふもふを膝の上に乗せるようにして、一日の愚痴を話すようになっていた。


「ねえ、もふもふさん聞いてくれる?」


もふもふさん、と私は勝手に呼んでいた。


「今日はね、クローデットが『光魔法も出せない聖女って、無能力者と同じじゃないの』って言ったの。まあ間違ってはないんだけど。でも、なんか……」


もふもふさんが、ふぇ、というような小さな声を出した。


「……え、今なんか言った?」


もちろん答えない。でも丸い目が、どこかじっとこちらを見ていた。


日によって様子は違った。元気な日は短い尻尾がぱたぱた揺れて、鼻先を私の手に押しつけてくる。疲れている日はうずくまったまま、目だけで追ってくる。そういう日に私がのんびり毛並みを梳いてやると、喉の奥でかすかに何かが鳴ることがあった。


私はそれが好きだった。


ただ、一つだけ、気になることがあった。


もふもふさんと触れている間、白い毛並みの奥から何か薄い霧のようなものが感じられることがあった。冷たくも暖かくもない、どちらかというと重い、滞ったもの。それが、私の手に触れるたびに、少しずつ薄れていく気がした。


(気のせいかな)


多分気のせいだ。私には魔法が使えない。測定水晶も光らない、無能な見習い聖女だ。


もふもふさんが来るたびに、最初より少し、体の震えが収まっているように見えた。最初の日は立つのも辛そうだったのに、最近は石段まで小走りで駆け寄ってきてくれる。


それが嬉しくて、私は毎日来ることにした。


その頃、もう一つ気がついたことがある。


もふもふさんが現れるのは、いつも夕方以降だということ。正確に言えば、日が傾いてから一刻ほどが経った頃。それより早い時間に待っていても、絶対に来ない。来るとすれば必ずその時間帯で、そして翌朝には消えている。


(夜行性なのかな)


そう思うことにしていた。



読んでくださり、本当にありがとうございます!


続きが気になる!と少しでも思っていただけたなら、

評価(下の方にある☆☆☆☆☆)やリアクションで応援いただけると、本当に飛び上がって喜びます!


また次回でも、お会いできることを楽しみにしております(*‘ω‘ *)/

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