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異世界で女嫌いのイケメンに甘やかされています  作者: ハラペコWASABI
恋愛編

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一世一代の大勝負

「……七海って性格良いよな?」


「え?」


 不意に投げかけられた言葉に、歩く足が止まりそうになる。

 だってこんな事言われたの初めて。しかも今日が初対面のような人に。


 困惑したのが顔に出ていたのか、蒼大は眉間にシワを寄せて、バツが悪そうに顔を歪めた。


「あ。いや、笠井からスゲー話聞いてたから言っただけで深い意味はねーから!」


「笠井君、どれだけ私の事話したの?逆に気になってきたんだけど」


「いや!そこまで言うほど話してねー!笠井の事は気にしなくていーよ」


 慌てた様子の蒼大に違和感。凄く話してたのか話してないのかどっちなの?


「七海の話はたまに聞いてたけど、実際こうやって話すと話しやすいし素直で良い子だなと《《俺が》》思っただけ。笠井じゃなくて」


 なんだか腑に落ちないけど蒼大に良い子だと思われたのは正直嬉しい。


 私も蒼大は女嫌いの不良ってイメージしかなかったけど、話してみると優しくて、真っ直ぐで、良い人だなって思ってるから。


「それなら……私も蒼大の事、優しくて良い人だなって思ったよ」


 素直に思った事を口に出すと、蒼大は目を見開いて唇をきゅっと結び一瞬で頬を赤く染めた。


 あれ?やっぱり蒼大って褒められ慣れてないか照れ屋さん?

 ファンに向かって「うぜー!どけよお前ら」とか言ってたのも、もしかしてただの照れ隠しだったりして……


  二人で雑談しながら、獣道を順調すぎるほど進んでいく。何も見つかっていない危機的な状況のままなのに、蒼大と話していると不思議と緊張感が抜けてくる。

 

 ふと、歩くたびにカサカサと鳴る、特攻服が気になった。

 長袖だし暑くないのかな?

 それに、何故蒼大は特攻服を着ていたのか?って言うどうでもいい事が気になってきた。


 高校に入ってから毎週土曜日は必ずと言っていい程蒼大をコンビニで見かけたけど、いつもシンプルでセンスの良い服を着ていた気がする。


 いつもお洒落なのに。本当に謎だわ。


「ねぇ、もしかして昨日集会だったの?」


「集会?そんなのやらねーけど?」


 蒼大はそう言いながら、行く手を阻む大きな葉を棍棒でバサリと払う。


「そーなの?特攻服着てるから気になって」


「あー、これは……昨日は俺にとって特別な日だったから気合いをいれる為に着てみただけ」


 突然声のトーンが低くなった事が気になり、足を止めると、蒼大もつられたように止まった。


「その、特別な用事は無事に終わった後だったの?」


「……終わってねぇ。待ってたら七海とトラックが突っ込んで来た」


 誰かと待ち合わせしてたんだ。あんな大粒の雨で外にいるなんてどう考えても不自然だもんね。って言うか……!


「ごめん! 私がぶつかったせいで、大事な用事を邪魔しちゃった!」


「は?七海が突っ込んできてもこなくても、あのトラックはあそこに来てただろ。気にすんな。それに、雨はただの想定外だ。昨日は俺にとって、一世一代の大勝負の日だったからさ」


 私が落ち込む隙を与えないように、蒼大はサラリと話を切り替えてくれた。


「大勝負日?」


「俺の母さん結構有名な占い師でさ。昨日は俺の運命の分岐点、大勝負日ってやつだった」


 家がお金持ちって言うのは聞いた事があるけど、お母さんは占い師さんなんだ。初情報。

 不良なのに占いを信じてるって事はよく当たるんだろう。


 でも、『大勝負』で、わざわざ気合を入れて特攻服を着てする事って……


「いくら大勝負でも、喧嘩は良くないと思う!」


「いや、大勝負は喧嘩じゃねぇし」


 蒼大の顔は少し困ったように、でも何だか薄っすら笑っているように見える。


 ヤンキーの言う大勝負で特攻服って喧嘩しか思い浮かばないんだけど他に何がある?


「あっ、喧嘩じゃないなら賭け事?」


「ちげーって。七海は一体俺をなんだと思ってんだ!全然そんなんじゃねぇよ」


「特攻服を着てやる事ってそんなに沢山思いつかないんだもの。なんだか凄く気になってきた!わざわざ一張羅を着て一世一代の大勝負日にする事は?」


 自分で大きな声を張り上げ問いかけた時、特攻服にこだわらず気合いを入れる時に着る一張羅だと考えるとハッと頭に思い浮かんだ。


「あっ!告白とか?!」


 冗談めかして言った私の言葉に、蒼大はピタリと足を止めた。

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