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ファンにはなりません

 

「あのさ、俺がこんな知らねー場所にどうやってお前を連れて来たわけ?そんな事する理由もねぇし。ちょっと考えろよ」


 蒼大は私がおかしいと言わんばかりに人差し指で自分のこめかみをトントンと軽く叩いてみせた。


 バカにされたみたいで悔しいけど蒼大の言う通りだ。


 1人で私を担いでこんな森に来るなんて現実的じゃないしそもそも蒼大が私をこんな所に連れて来る理由が無い。


「ごめん。寝ている間に何が起こったか分からないから一応確認しただけ」


「俺だって何が起こったか分かんねぇんだよ。誰かさんから膝蹴り食らって倒れた所にトラックが突っ込んで来ただろ?死ぬ!と思ってこう、目をギュッと瞑ったんだけど全く衝撃が来なくて。目を開けたらここだった」


 蒼大は自分の左頬に手を置いて恨めしそうな目で私を見た。


 「トラックに衝突されるより蹴りのが痛いとはな」


 チクリと刺さった罪悪感。不可抗力とは言え蹴りを入れたのは悪かったわ。


「蹴っちゃってごめんなさい。雨が強くてほぼ目開いてなかったし、看板ばっかり見てて人がいる事に気づかなくて。ほんとごめん。それで、君が目を開けたら私もすぐここに居たの?」


「そ。俺が顔を上げたらお前がすぐ隣に倒れてた。つーか寝てた。まぁ蹴りはわざとじゃねぇし許してやるよ」


「ありがとう」


 平静を装いお礼を言ったけどなんでその状況で寝てんのよ私!我ながら図太すぎない?


 それにしても一体どういう事なんだろう。トラックの勢いが凄すぎて2人共森まで飛ばされた……なんて、あるわけがない。


 再び辺りをキョロキョロ見回して見るけど何回見ても森の中。


 でも冷静になって来たのか手の震えと大きかった心臓の鼓動はいつの間にか治っていた。


「暑い……」

 

 落ち着いたからかジリジリとした暑さを感じカーディガンを脱ぎ中に着ている白シャツの袖をまくる。


 体感温度真夏。


 この気温から考えられるのはここが日本ではないという事。

 

 それと不思議な事に服も髪の毛も濡れていない。あれだけ雨に濡れたのだから普通はビショビショに濡れているはずなのに。


「本当に不思議。服、全然濡れてないし……」


 私の独り言のような言葉に蒼大がすかさず反応してくれた。


「言われてみたらそーだな。この状況に驚きすぎて忘れてたけど俺も濡れてなかった。つか、お前の場合は一晩寝てたから乾いたのかも知んねーけど」


 揶揄うように笑んだ蒼大に動揺。初めて見た笑顔の破壊力は私の心臓の動きを活発にした。さすが国宝級だわ。でも、絶対顔には出さないしファンにはならない!


「そ、そんなに寝てた?全然寝足りないと思ったのに」


「全く、何回か声かけてもヨダレたらして幸せそうに寝てたくせ……」


「キャー!ちょっと待って?ヨダレ垂らしてたの?!」

   

 この状況で寝てただけでも図太すぎるのにヨダレまで見られてたなんて恥ずかしすぎる!

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