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異世界で女嫌いのイケメンに甘やかされています  作者: ハラペコWASABI
結婚生活編

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スター誕生!

「七海、子供の名前はスターにしたいんだけど……」


 伺うように言って来た蒼大の一言に、私は色んな意味でぶっ飛んだ。


「ちょっと待って蒼大……それはいくらなんでもキラキラすぎない?」


「そー言われると思ったけどさ。キラキラ、俺はいいと思うんだよねー!俺たちのスターだし、スター選手になって欲しいし……」


 蒼大が指折りスターが良い理由を語り始めたけど、私は大慌て。


「せ、せめて漢字でホシはどう?あだ名をスターにするの」


「ダメだ。ホシ・ド・ヤンキーじゃイマイチだろ?スター・ド・ヤンキー。ほら、最高じゃね?なんならスターの前に大付けてもいいぞ。大スター・ド・ヤンキー」


 大スター……私は軽く頭を抱えた。

 そう言えば蒼大ってネーミングセンスが独特だった。ソウタ・ド・ヤンキー。

 ……これは頭ごなしに否定するんじゃなくて、ちゃんと聞こう。


「もう一回、スターにしたい理由を分かりやすく、一言に纏めて!」


「そうだな……えっと、スターみたいにキラキラした人生を送って欲しい」


 とても分かりやすい蒼大の願いだ。

 私達は普段意見がぶつかる事なんてないけど、その理由は蒼大がいつも私を気遣ってくれて、優先してくれてるから、大事にしてくれてるからだって分かってる。だから……


「……気持ちは分かった……いいよ!私達も一緒にキラキラした人生を送ろう!スターと!」


「よっしゃ!決まりだ!俺達のスター!」


 蒼大がスターを抱き上げる。正直私は蒼大と七海からとって蒼海あおいと名付けたかったけど、キラキラした人生を送って欲しいって素敵な願いだし、この世界じゃキラキラネームって言われないかもしれないしね!


 命名。スター。


 皆に名前を伝えると、予想外にかなり評判が良かった。


「いやー!将来が明るい!」


 ハンスが拍手すると、ピンクマンが「絶対スター選手になるね!」と期待に満ちた目でスターを見つめる。


 スター・ド・ヤンキーは皆の期待を一身に受けながら、小さなお口で大きくあくびをして、目をパチパチさせている。


「うん、スターは大物になりそうな予感がするな」

 と、まるで孫を見るように優しい瞳のクルーデン伯爵。


「じゃ、名前も決まった事ですし、記念グッズを作りますね!ポスターの文句も決まりました。まさに、スター誕生!ですー」と、ハンスがパチパチと拍手し、目を金貨色に変えた。


 すると、すかさずレノックスがハンスの前に立ち塞がった。


「さすがにスターの誕生だからね。いつものグッズよりナナミ達への取り分を多く……これでどうかな?」


 と、指で三を作った。

 このレノックスの数字は、まさしく私達へのロイヤリティだ。今、目の前でハンス商会が売るグッズの売上の三割を、私達に寄越せと交渉しているのだ。


「ヒィッ! 相変わらず鬼マネージャーですね……!ですが今回はお祝いも兼ねて三でいいでしょう!」


 ハンスは泣き言を言いながらも、絶対売れると確信しているのか嬉しそうだ。


 正直、私と蒼大は経営とか、全く分からず。各国にスタジアム建てれば最高!のノリで、収益とか何も考えてなかったのをレノックスが各国と話し合い、華麗に纏めてくれた。


 スタジアム建設費用は例の100万円から出し、各国には毎月高額な土地使用代金を支払う事で合意。その代わり、スタジアムのチケット代やグッズ売上など全部こちらに入ってくる。

 野球の爆発的な人気のおかげで、高い土地使用代を払っても、それ以上のお金が私達に入って来ている。


 ハンスが好きにグッズを作っているけれど、裏ではちゃんとレノックスがこうして私達が損をしないように管理してくれている。もちろん、彼にはその働きに見合う高いお給料をちゃんとお支払いしている。


 この敏腕マネージャーレノックスのおかげで私達はじゃぶじゃぶお金が入って来ているのだ。


 私はそのお金を、高速移動の開発費に充て始めた。

 引退してからサトウ国に住むのは良いけれど、みんなに会うのに片道四日もかかるのは辛すぎる。それに何より、野球の遠征だ。今のままだと移動だけで選手たちが疲れ果ててしまうし、試合の日程を組むのも一苦労だ。


 誰かがやるのを待っているより、自分でやった方が早い。


 そう決意して立ち上がった私は、蒸気機関車を手本に、開発を進めることにした。

 ハンスに依頼すると、こちらの世界の小屋に浮いていたあの不思議な電気。あれは魔法でもなんでもなく、特殊な金属で吊り下げられたエネルギーの塊である怪石かいせきと呼ばれるものが使われているんだそう。炭の代わりにその高出力の怪石を動力源にした、世界初の怪石機関車プロジェクトが始動。


 ただ、機関車本体を作るだけではなく、サトウ国や各国を繋ぐレールを敷くだけでも莫大な予算が掛かる。なので三割頂けるスターグッズ、たくさん売ってもらいましょう!


「で、スターのグッズは何にするの?」


「そーですねー、最初はおしゃぶりやよだれ掛けなどにしようと思ったのですが……スター、輝く……何か良い案はありませんか?」


 ハンスの答えに私は愕然とした。おしゃぶりやよだれ掛けで幾ら儲かるだろうか?

 学校設立の夢も鉄道普及の夢も全て潤沢な資金があってこそ!

 考えるのよ、何かスタジアムに来る観客全員がつい欲しくなって、スターのように輝く物を……


 ハッ!と思いついた私は、フゥッと息を吐いた。


「ペンライト……ペンライトよ!」


 私は特注で作らせたホワイトボードにペンライトの説明を書く。冷蔵庫だってマイクだってある。ボールだって作れるんだから、この世界で作るのは不可能でない。鉄道だってそう。きっと、作るきっかけと熱意、そして資金が無かっただけなのだ。


 スター誕生記念は、白い持ち手の先に黄色い星形に光るタイプを提案した。夜の観客席でそれを光らせた写真でポスターを作れば目を引くだろう。可愛い、綺麗、限定品とくれば購買意欲も湧くものだ。


「七海マジ最高!センスいいな!俺だったら赤ちゃん用ユニフォームとかしか思いつかなかった!ハハ」


 と蒼大が笑ったけど……それ、良い!

 今出ている応援ユニフォームは六歳くらいの子が着るサイズからだ。それを赤ちゃん用のロンパーススタイルから、年齢に合わせて形を変えて、幼児でも着られるサイズにすれば……


「蒼大、それも採用しよう!あとハンス。ペンライトはスターの記念品以外に、持ち運びしやすいように、まっすぐな棒のタイプも作らない?それで、ホームの試合の時は黄色、アウェイの時は赤を光らせて応援するような流れを作れば……一人の観客に、赤と黄色の二本売れる!」


「ナナミ様やはり天才ですー!商売の鬼!わかりました、まずは徹夜でスター君のペンライトを量産します!限定ライトが完売したところで、子供サイズユニフォームと応援用ペンライトを売り出す流れで行きましょう」


 ハンスの笑顔が七福神の神様に見えて来た。


 私はスターを抱っこして頬にキスを贈る。


「待っててね。スターが大きくなる頃には、この世界をもっと住みやすくしておくわ!学校も、色んな街を繋ぐ鉄道も、ぜーんぶママが作っておくからね!」


 私の言葉にスターより蒼大が感動したみたい。


「なっ、七海……!最高にカッコいいぜ!」


 すっかり愛用しているピンクのメガホンを振った蒼大。


「ナナミは目標がしっかりしているから、協力したくなるんだよね」


「その通りだ。しかも理由が私利私欲の為じゃないのが素晴らしい」


 クルーデン親子に褒められやる気も倍増。絶対に叶えてみせる。

 そして、すっかり夜も更けた頃。皆を見送り寝室へ。


 ……蒼大が心配性すぎて特大ベッドにしてくれて良かったと心から思った。


 初めて一緒に寝る時「俺が寝返りして俺らの愛の結晶を潰したらどうすんだ…!」って小刻みに震えてた。


 なので沢山あるクッションで囲いを作り、私の隣に寝かせている。


 そんな私達に向かって蒼大は絵本を読む。産まれてからも変わらない、日課になっていた。


「オオカミになったら、誰にも負けないと思って毛を集めてオオカミを作ったんだ。でも被ったら脱げなくなっちゃって……」


 蒼大が気に入ったお話は何度も読んでくれるので、かなり上達した。えっとー……とかなくても、愛が伝わって来て愛おしいのは変わらない。


 それに、蒼大の低くて優しい声が心地いいのか、スターも絵本を聞きながらスヤスヤと安心したように眠りについた。


「寝たな?」


「うん」


 微笑み合うと、蒼大の大きな手が私の頬をそっと包み込み、優しい口づけをくれる。

 毎日、寝る前のおやすみのキス。この瞬間、今日も一日幸せだったと心から思える。


 ちなみに、私の壮絶な出産シーンを目の前で見た蒼大は「また七海に痛い思いをさせたくねぇ」と、二人目については少し悩んでいるらしい。


 本当に優しくて、カッコいい私の旦那様——明日も幸せな一日を過ごそうね。




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