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異世界で女嫌いのイケメンに甘やかされています  作者: ハラペコWASABI
結婚生活編

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愛のホームイン

 サトウ国でリッカ様と蒼大のお父様に結婚の報告を済ませ、サトウ王と共に食事をしていた時のこと。

 蒼大を『サトウ国の公爵として迎えたい』と言われて、とても驚いたのだけど。


「クルーデン伯爵にお世話になりっぱなしだったから、このままクルーデン領に住もうと思ってる。何より俺たちが立ち上げたチームがあるしな」


 と、きっぱり断った。残念がるサトウ王に「引退したら来るかも。日本みたいで安心するし」と匂わせた。


「引退する時でも構いません。このサトウ国で一緒にのんびり温泉にでも浸かりましょう」


 そう言われ、固い握手を交わした蒼大。

 私達は将来サトウ国に住む事になるだろう。


 そしてサトウ国を満喫して帰ってきたわけだけど、私を待っていたのは仕事の山だった。この世界に来た当初、仕事できることがないって嘆いてたのが嘘のよう。


 ハンスにスタジアムで売る食べ物を考案して欲しいと依頼があったのを二つ返事で引き受けたし、野球を始めたい国からの問い合わせ対応、スタジアム建設、次の合宿の受け入れなどなど。


 家のドアのベルが鳴り出ると、すっかりお馴染みの顔。


「ハンスですー」


 時間通りに来たハンスを迎え入れ、リビングへと案内する。


「考えておいたわ!試作品も作ったの」


「さすがナナミ様!ありがとうございます。では早速お聞かせ願えますか?」


 ハンスがノートを取り出しペンを構えた。私は自信満々で応える。


「特製の醤油ベースの甘辛いタレに漬け込んだ豚肉を、串に刺したほかほかのご飯にぐるぐると巻き付けるの。そしてこんがり焼き上げた、片手で食べられる、その名も『肉巻きバット』よ!お米はもちろんサトウ国産!肉は豚じゃなくてもいいわ」


 試しに自分で作った肉巻きバットをハンスに差し出す。

 ハンスは一本手に取りじっと観察する。


「まず、この美味しそうな匂い、たまりませんねー。それにこの形!食欲をそそる色艶!ネーミング通りバットのようで野球ファンの心をくすぐります。それと、片手で食べられるのは最高の利点です!素晴らしい!」


 ハンスは一口、口に入れると目を見開いた。


「これは……!美味しすぎます!今までサトウ国でしか味わえなかったような美味しさがこんなに手軽に……」


 試作品をバクバクと食べ終えて、べた褒めしてくれるハンスにレシピを伝えると、バーっとノートに書き写し、さっさと帰っていったと思ったら、あっという間に商品化された。


 数日後には『ナナミ考案、ソウタも食べている肉巻きバット!』のポスターが張り出されると、試合開始前にはスタジアムの売店に長蛇の列ができていた。


 香ばしいタレの匂いが漂い、一口噛めば、ジュワッと溢れる肉汁と濃厚な味が口いっぱいに広がる美味しさだ。

 売店前でかぶりついた観客が『これは相当美味いぞ!さすがソウタが食べているだけある!』と待ち列に向かって興奮気味に話しかけている光景を見て、私は思わず笑みがこぼれた。


 形は少し細めのアメリカンドッグみたいなんだけど、この肉巻きバットと冷たいエールを片手に野球観戦するのが、今やこの世界で定番中の定番となった。


 試合の日はスタジアムのあちこちから「肉巻きバットもう一本!」という声が飛び交い、ハンスの笑いが止まらない。


 肉巻きバットの大ヒットにより、笑いが止まらないのはサトウ国もだった。お米が売れに売れ、来年から米の生産量を増やし対応すると言う。


 野球は想像以上に受け入れられ、まだ参加していない国からも問い合わせがじゃんじゃん来ている。


 嬉しい悲鳴だけど、参加希望の連絡は全て私のところへやって来る。一人じゃ対応しきれなくなり、自然と中心になっていたサトウ国とヨイ国始め数国に声をかけ、野球をやっている国を纏める野球国連合を発足。私は自然と会長に就任する事になった。


 なんか凄い役職付いちゃったから、この世界にも高校野球作っちゃおう!夢の甲子園!と企んだら、八歳から十五歳までの学校しかなかった。


 愕然とした私は、高等学校と各分野に特化した大学の設立案を国と野球国連合に提出。

 さらに肉巻きバットで懐が肥えたハンスから、他にも異世界の知恵をと頼まれて商品開発等にも携わるようになり、多忙の極み。


 結婚してから約一年。我ながらどうしてこうなった。


 蒼大はそんな私を気遣ってか、最近は自分から腕枕をしてくれる。


「疲れてるだろ?いいぞ」


 って優しい顔して腕をポンポン。


「蒼大〜!好き」


 と遠慮なくスリスリして抱きつきエネルギーチャージ。からの愛の営みに突入。愛し合って最高に幸せなんだけど……


 流石に無理をしすぎたみたい。練習中に目の前がクラッと揺れて、壁に手をつき寄りかかる。

 と、何処から見ていたのか蒼大が凄い勢いで走って来て、サッと私を抱きかかえ救護室のベッドまで運んでくれた。


「ありがとう。気付くの凄く早かったけど、何処から見てたの?」


「フツーにグラウンドだけど?俺は常に七海を見ながら練習してるから」


 嬉しいけど練習に集中できているのか監督としては不安だよ。


「ほら、これ飲んで」


 水を飲ませ、私を救護室のベッドに寝かせると、蒼大は椅子に座り心配そうな表情で頭を撫でてくれる。


「やっぱ無理しすぎじゃね?」


「そうかも。やり甲斐があって楽しくて」


「まぁ今や世界の七海だから気持ちは分かるけど。心配だ」


「世界の七海って何?」


「連合の会長になったしさ、七海が考えたアレ、どこの国のスタジアムでも肉巻きバット食べながら観戦してるからさ。あの光景見ると俺の奥さんスゲーって思う」


 自分の事のように誇らしげな笑顔を見せた蒼大。

 でも私から見たら蒼大こそ「世界の蒼大」だよ。


「4番バッターソウタ」


 と、アナウンスが流れると、天地が揺れる程大歓声に包まれる。蒼大はあっという間に超・大人気選手になったのだ。


 元々のセンスに加え、当たり前のように練習をサボらない努力家の蒼大は、バカスカホームランを量産する。

 実力があって見た目も良いから男性だけでなく女性ファンも多く獲得し、声援が別格だ。


 モテすぎてヒヤヒヤしたけど、蒼大はインタビューで「俺の愛する七海に全てのホームランを捧げます」と、堂々と宣言。私達はベストカップル、おしどり夫婦的な立ち位置に納まった。


 同世代の子達から、私と蒼大のような夫婦になりたいと言われるのは正直嬉しい。


「蒼大こそ世界の蒼大だよ」


「俺はそんなんじゃねーよ。七海の為だけに存在してっから」


 照れ隠しか、私の鼻を軽くつまんで頬を染めた蒼大が可愛すぎる。


「つーかさ、今ふと思ったんだけど。七海アレ来てんのか?」


「アレ?」


「アレだよ、アレ!毎月来る……」


「あ……そういえば、忙しくてそれどころじゃなかったけど先月から来てないような……」


「い、医者を呼べええぇえ!」


 狂ったように叫んだ蒼大。廊下に響き渡った声に驚いて、人が集まって来る。


「ソウターどしたー?」


 ピンクマンがのほほんと笑いながら駆けつけると、蒼大がすごむ。


「医者だよ、医者!七海が妊娠してるかもしれねーからっ!」


「それは大変だ!医者を呼んで来るよ!」


 ピンクマンは走って医者を呼びに。救護室前まで走って来たメンバー達の「ナナミが妊娠だって!」の言葉がまるで伝言ゲームのように、グラウンドを駆け巡り、クルーデン伯爵の耳まで届いたらしい。


 ピンクマンが連れて来た医者と共に、走って現れた伯爵とレノックス。


「野球神の誕生だよ!」


 ピンクマンがワクワク顔で言うと、伯爵が頷く。


「記念して、子供達が野球ができる公園を作ろうか……」


「良い案です。早速計画を立てましょう」


 レノックスも頷くけどちょっと待った。お医者様はまだ脈を見てる所よ?


「ちょっと、皆気が早すぎるよ!まだ妊娠してるかもわからないのに——」


「おめでとうございます。ご懐妊です」


 私の言葉を遮るように放たれた医者の言葉に救護室は一気にお祭り騒ぎ。


 妊娠?私が?

 無意識に自分のお腹に手を当てる。いつもと変わらない、平らなお腹。でも、この中に……蒼大との赤ちゃんが……

 心臓がドクドクと激しく鳴っている。嬉しさと、驚きと、少しの恐怖心。全部の感情が混ざってドキドキ。

 蒼大が私の手を、ギュッと握った。見上げると、目を細め、今にも泣きそうなくしゃっとした笑顔。


 ああ。私には蒼大がいる。だから何があってもきっと大丈夫だ。


「七海、ありがとうな……」


 蒼大は天を仰いで男泣き。肩を震わせる世界一カッコいい旦那様の姿に、つられてピンクマンも涙を見せるとチームメンバーまで皆涙を浮かべて喜んだ。

 その姿に私も胸が温かくなる。良いメンバーに恵まれて本当に良かった。


「これで……鬼監督が優しい母監督になるかもしれんな……グス」


 デニスの言葉に皆大爆笑。


「そっちの嬉し涙だったの?!」


 私もツッコミを入れ、皆と一緒に笑った。

 仲間たちの顔を見回す。ピンクマン、レノックス、デニス、伯爵様。みんな、本当に嬉しそうに笑ってる。蒼大は笑いながら涙を拭って。本当に幸せな空間だ。


 医者から安定期になるまで騒がないように。と言われていた為ハンスはずっとウズウズしていたらしい。

 私が安定期に入るや否や『おめでとう!ソウタ・愛のホームイン!ナナミご懐妊!』と言うポスターを刷り、ピンク色のハート型応援メガホンを限定発売。


「ほほほ。ただのメガホンじゃありませんー。お二人のサインシール付きに加え、結婚式の日の見つめ合う二人のイラストがプリントがされたプレミアムバージョンです!」


 蒼大は「誰がそんな恥ずかしいモン使うんだよ!」と顔を赤くしていたが、あれよあれよと即完売。


「即日完売です!お二人とも!あの日あの時、わたしの小屋に泊まってくれてありがとうございますー」


 とハンスに祈られた。ここまで来ると商魂逞しくて、とても気持ちが良い。


 そして蒼大は……翌日の試合ではちゃっかりベンチの自分の席に、そのメガホンを飾っていたのだった。


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