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イチャイチャしたい

「今日はグレイブ国各地からクルーデンヤンキースの入団テストを受けに沢山の人が来ます!原石を見逃さないようにして下さいね!」


「っす!」


 雲一つない青空の下、私がグラウンドに向かって叫ぶと、整列しているクルーデン・ヤンキースのメンバーや他国から合宿に来ている留学生達が、元気よく声を出して返事をした。


 「っす!」はもちろん蒼大の影響。

 私が監督を務めるクルーデンヤンキースのメンバーはとても個性的だ。


 元騎士団長デニスと他数名は特攻服に憧れて、ユニフォームの背番号の背景と袖に金や銀の糸でド派手な刺繍を入れている。プレーに支障は無いからまぁヨシ。


 ピンクマンはすっかりリーゼントが定着して、トレードマークと化した。キャップを被る時に少し邪魔そうだけど、本人が気に入っているし似合っているから、これもヨシ。


 自由すぎるかもしれないけど、悪い事以外はやる気の源になるからいいと思うの。

 

「皆さんわからない事、不明点などありませんか?」


 全体を見渡し問いかけると、蒼大が手を上げた。ちなみに蒼大の背番号は773(ななみ)番。

 番号の下に「I will love you forever」と筆記体で綺麗な刺繍が入っている。


 最初、永遠に愛死天流(あいしてる)って入れようとしていたから、英語の方がカッコいいと思うよって英語にしてもらったのよね。こっちの世界の人達どっちも読めないけど!


「蒼大?何がわからないの?」


「俺の彼女が可愛すぎてどうして良いかわからないんすけど」


「っ!?」


 蒼大がニヤっとしながら言うと、「ヒュー!」「熱い熱い」とグラウンドにいる全員が一斉に揶揄からかってきた。


 いつもはこんな事言わないのに。もしかして昨晩ベッドでおねだりした仕返し?照れくさいのを悟られないように、小さく深呼吸をして真顔を保つ。


「全員雑念を振り払う為に、テスト開始まで素振りしよっか!グラウンド10周してからね!」


「鬼!」


「ブーブー」


 沸き起こる大ブーイングは聞こえないフリ。


 緩めるところは緩めて、締めるところは締めますよ。監督ですからね!


 他国からも沢山野球留学に来ていて、50人超えの大所帯を纏めるのは簡単じゃない。

 留学生も30の国と地域だから一気には来れなくて。

 くじ引きで順番を決めて入れ替わりで留学生がやってきている。本気で目まぐるしい。けど、これも明るい未来の為にっ!


 副監督のレノックスやマネージャーもいるけど、この人数を纏めるには甘い顔ばかり見せているわけにはいかないのです。


 ……でも!


 夜になると蒼大にはこれでもかってくらい、甘い顔を見せまくり!イチャイチャしたいもん!


夜になり、月明かりが差し込むベッドの上で……


 「蒼大〜」


 少し離れた背中に、ズリズリと這うように近づいて行く。

 

「腕にギュッてしたいな〜」


 たくましい蒼大の腕を目標に、ズリズリと忍び寄る。

 ちょっと甘えたいだけなのに、振り向きざまに、両手で思い切り静止されてしまった。


「ストップ、腕ハグ禁止!」


 蒼大の少し低い声が部屋に響く。


「なんで?」


「うっ……あれが柔らかいんだよ!理性がぶっ飛んで我慢出来なくなる可能性があるから禁止!2人であり得ないくらい幸せになりたいだろ?禁止だ禁止!」


 確かに、胸が当たる。そんな事言われるとこっちまで少し恥ずかしくなるけど、引くつもりはない。


「でも、もっと近づきたい」


「うぐぐ」


 顔を歪め、相変わらず何処から声を出しているのか分からない蒼大が面白くて、ずっと攻めちゃいそう。


「じゃあ背中からぎゅってして?」


「ハアッ!ハードルたっか!」


「背中だから柔らかくないでしょ?」


「はぁ?近すぎて、こう……体温とか、良い香りとかするだろ!絶対反応する!」


「我慢して!」


 無茶振りに蒼大は両手で顔を隠し、しくしくと泣いたふりを始めた。

 本当に面白い。こんなにカッコよくて面白くて、純粋な蒼大が私の事を好きになってくれて良かった。奇跡だ。

 

「鬼……鬼だ。昼は鬼監督、夜は鬼……鬼娘……スンスン」


「そこは普通小悪魔とか言わない?」


「鬼の七海に悪魔なんて、そんな可愛い言葉使えねぇよ」


「じゃあ鬼を惑わす蒼大が見てみたいっ」


 冗談ぽく言うと、ピタリと動きが止まった。

ベッドの上に身体を起こすと、蒼大は私の手をそっと握り、ゆっくりと口元に持って行く。

 チュッと音を立てて手の甲に唇が落とされる。


 ひゃあー!ヤバイ、私の手の甲が羨ましい。羨ましいよぉ!


「惑わされた!今すぐ手の甲に唇移動したい!」


「ブブ!出来たら妖怪だ」


「本気だよ!手の甲が羨ましいもん」


「はぁ、仕方ねーなー」


 蒼大は呆れたように笑うと、チュっと優しく唇にキスしてくれた。軽くね!なのにすぐに離れてベッドに寝転び、顔を隠した。


「ふぁあ。俺もうヤバイ」


「もっとキスして」


「もーマジで好きすぎてヤバイんだよ俺は!」


「私だって好きすぎるよ?」


「ゴホォ!」


「また始まった!そのゴホォとかプギャー的な声、どっからでてんの?面白すぎて全バリエーション聞きたいんだけど」


「あー、うるせえ!バリエーション全種な。って、知るかっ!」


 ベッドの上で2人でひたすら爆笑して、笑い疲れた私達。

 蒼大の肩に頭を預けて静かに眠りについた。


 リッカ様、もうあり得ないくらい幸せです。


 

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