100年
「初代サトウ王は何年前にこの世界に来たんですか?」
「今年で丁度100年だよ。建国してからは90年だ」
サトウ王はこの世界の過去に飛ばされたっぽい。
話を聞くと今のローランサトウ王は3代目。ちなみに王は60歳に定年するように決められているんだとか。
「もし国を動かす王が頑固ジジイになったりボケたら大変だからってね。お祖父様の言う通りだろう?」
あははと笑った3代目サトウ王。
今度は初代サトウ王が日本から持ってきた物が保管ケースごと運ばれてきた。
一万円札は特に大事にされているらしく、ガラスケースにピシッと挟まれている。
「この素晴らしい技術は100年経った今も再現出来ません」
お札は透かしだけじゃなくて偽装防止の為に色々工夫してあるから確かに厳しそう。
「ナナミ様もお札を持っていると聞きました。もし良ければ是非買い取らせていただけないでしょうか?」
思ってもみなかった提案だけど、私はすぐに了承した。この世界で使える通貨にしておいた方が良いから。
そして保管ケースに仕舞われているのはスマホだった。
スマホケースには紐で招き猫の飾りが付けてある。100年前の物とは思えない程状態が良い。そしてソーラー充電器。充電器もピカピカだ。
「昔父が言っていました。他の皆には内緒でこの機械で日本にいる姉の写真を見せてもらったと。私も見てみたいが使い方が分からなくて。ナナミ様は分かりますか?」
サトウ王がスマホを手に取り、切なげに話す。
機種的には数年前の新しい機種だけど、こっちに来てから100年でしょ?バッテリーが生きているはずがない。
でも、もしかしたら、奇跡が起こるなら電源が入る事があるかな?
翌日、朝からソーラー充電器を1番日当たりの良い場所に吊り下げ、スマホに充電ケーブルを差し込みサトウ国観光に出かける事に。
王様がいるお城以外の4つのお城は高級宿だったりレストラン、娯楽施設になっていて、お城の裏は広大な日本庭園だった。
素晴らしくてお城を見て回るだけで1日かかってしまった。
娯楽施設にはダーツにビリヤード、卓球まであってひたすら感動。観光客が絶えない訳よ。初代サトウ王有能過ぎって何回思ったか。
気になっていた「こんびにえんすすとあ」は明日かな。
夕食前に諦め半分で初代サトウ王のスマホを持ち電源を長押し。
するとうっすらと浮かび上がったスマホのマーク。
「えー!凄い!100年経っても大丈夫なんて!奇跡だよ」
ロックはかかっておらずドキドキしながらアルバムを開いてサトウ王に指で写真を送るんだと説明していると、アルバムに見慣れた顔が見えた気がしてふと指を止めた。
「蒼大?」
まさかと思いながらタップすると、中学の制服を着た蒼大と蒼大母である占い師リッカ、それと弟と思われる小学生の男の子が映っていた。
一気に全身鳥肌。
どう言う事?なんで?まさか蒼大のお父さんとか?
レノックスも横から不思議そうに覗き込み、声を上げた。
「これ、間違いなく蒼大だね!」
「まさかサトウ王の子供……?」
私が口にすると現サトウ王は首を振った。
「姉だと聞いている」
そうだった。さっき言ってたのに。でもなんで蒼大が?知り合いなの?
サトウ王にスマホを渡して考え込む。
そういえばこのスマホケースに付けてある招き猫、何処かで見た事があるような……
脳裏に蒼大が落とした鍵を拾った時の事が思い浮かぶ。
スマホケースの招き猫を握りよく見ると、おでこにハート型の石が埋まっている。赤じゃなくて透明だけど。とてもよく似ている。
ああ、どう言う事なの?
現サトウ王は涙を流して残された写真を見ているけど私はパニック。
「お祖父様だ。多分この女の子が父の姉だろう」
覗き込むと小学校の入学式の看板の前で笑顔の男の子と、制服を着たリッカ様の面影のある女の子がピースサインをしていた。
蒼大との関係はわからないけど、一緒に来るべきだったと——強く後悔した。




