サトウ国の文献
サトウ国のお城は勿論日本風のお城。
その日本風のお城がひとつではなく三城横並びに。圧倒的存在感。
「サトウ国のお城凄い!」
「サトウ国は裕福だからね。さっきも言ったけど各国の王族は勿論、貴族も平民も観光に訪れる国だし沢山の発明品があるからね」
他の国とは完全に違うから観光名所として注目されるのは当たり前だ。
自国と似た感じの国なら有名な何かがない限り観光欲なんてないだろうし。サトウ王はここまで計算して作ったのかな。自国が裕福になる為に。
感心しているとお城の下で馬車が止まった。
あれ?なんだか人だかりなんですけど。しかも皆着物を着ている。
お城で働いてる人達かな?
不思議に思いながらレノックスにエスコートされ馬を降りた瞬間人垣が割れた。
ドドン!
と大きな音が聞こえると目の前に飛び込んで来たのはハッピを着た太鼓部隊。
1番大きな太鼓がドドンと打ち鳴らされ中型の太鼓部隊が続く。
一糸乱れぬパワフルなパフォーマンス。突然のことだったのに食い入るように鑑賞し惜しみない拍手を送った。
「ナナミ様、遠い日本からようこそいらっしゃいました!」
太鼓部隊のリーダーらしき人に言われて私を歓迎してくれる為の公演だったと理解。
日本人らしいおもてなしに心から感動。
蒼大と一緒に見たかった。
お城の中へと案内され、サトウ王の末裔、ローラン・サトウ王とご対面。
殿様みたいな金色の派手な着物姿。オールバックにした黒髪に日本人のなごりを感じ親近感。
「まさか偉大なるご先祖様と同じ場所から来られたお客様をお迎えできるとは!光栄だよ!」
サトウ王は目尻に笑い皺が出来る程嬉しそうに目を細めた。
「こちらこそ手厚い歓迎をありがとうございます!お会い出来て光栄です!」
挨拶を済ませると、とりあえず夕食の時間までゆっくりくつろいで旅の疲れを取って下さい。と案内されたのは離れのお城の一室。
眺めが良い露天風呂付きの個室で、畳のお部屋に低いテーブルと座椅子が置かれ、テーブルの上には湯呑みと急須が置かれている。
何処かのお宿みたい。
異世界でこんなにくつろげる場所があるなんて。
レノックスは隣のお部屋に案内され、1人になった私は露天風呂に入り、布団を敷きゴロゴロと和室を満喫したのだった。
そして、夕ご飯にお呼ばれした私は声を上げた。
「これ、お味噌汁!?」
「やっぱり知っているんだね?これはサトウ国特産の味噌を使ったスープだよ」
サトウ王がにこやかに説明してくれる。
「お米だけじゃなく味噌があるなんて感動です」
過去に日本から来た佐藤さん、国まで作っちゃっただけはある。
お味噌汁に口を付けると異世界である事を忘れそうになる程ほっとする。
続いてライスと醤油ベースのタレが掛けられたステーキが出て来て泣きそうになった。
蒼大にも食べさせてあげたい。やっぱり一緒に来ればよかった。 美味しいものは1人じゃなくて蒼大と2人で味わいたい。
新しい街並みを見るのも1人じゃなくて蒼大と2人がいい。
蒼大がこのお城達を見たらなんて言ったかな?太鼓部隊も木製のコンビニ看板のお店も見たら絶対喜んだ。
考えていると食事中なのに泣きそうになって奥歯を噛み締めて堪えた。
会いたい。一緒にいたい。声が聞きたい。
もし、本当に蒼大が私を女の子として見て考えてくれているなら、他の女の子に目が行かないように私を好きさせる!って自分に自信を持てるようになりたい。
離れて分かった。私の心は完全に蒼大に染まっている。
蒼大の事が言葉じゃ表せないほど好きだと実感した。
夕食が終わるとノートを手渡された。例の初代サトウ王の文献だ。
表紙には日記と漢字で書いてある。
「中にサトウ語もあるんだが全く読めない記号に挟まれて……」
現サトウ王が困っているみたいだけど日記だし、人に読まれたく無いからこの世界に広めていない漢字で書いたんじゃないかな?
読めないふりをしようかな?
とりあえずノートを開く。
出だしの1ページ目に、20××年5月20日この世界に降り立った。と書いてあり思わず声を上げた。
「えっ!?」
20××年って!まだ数年前だよ!?数百年前に来たはずのサトウ王が、私と同じ時代に生きている人だった……?
「読めるんですね?」
レノックスと現サトウ王に問いかけられ頷くしか無かった。
「読めますけど……これは初代サトウ王の日記です。誰にも読まれたくないから漢字と言う文字で書いたんじゃないかなと思うんです」
サラッとさわりを読むと、この世界で家庭を持ってすまない。
日本の妻と子供達は元気にしているだろうか。会いたい。遠く離れた場所でずっと愛しているよ。
と言う言葉が綴られていた。
この世界の家族も大事に思っていたから、日本の家族を恋しく想っている事を知られたくなかったのかも。
——日本に残してきた家族。私も叔母さんやお父さんを思い出して、切なくなってしまった。
仕事が欲しいなら、内容を伝えるべきかもしれない。でも……
さわりだけ読みノートをパタンと閉じて、困り顔でサトウ王を見ると、サトウ王も困り顔で私を見返した。
「……日記なら解読せずにそっとしておくことにします」
「それが良いと思います」
「ありがとう」
お礼を言われたけど私は役に立てたのかな?




