衝撃の写真
「初代サトウ王は何年前にこの世界に来たんですか?」
「今年で丁度80年だよ。建国してからは70年だ」
サトウ王はこの世界の過去に飛ばされたっぽい。
話を聞くと今のローランサトウ王は3代目。ちなみに王は65歳までに定年するように決められているんだとか。
「もし国を動かす王が頑固ジジイになったりボケたら大変だからってね。お祖父様の言う通りだろう?」
あははと笑った3代目サトウ王。
今度は初代サトウ王が日本から持ってきた物が保管ケースごと運ばれてきた。
一万円札は特に大事にされているらしく、ガラスケースにピシッと挟まれている。
「この素晴らしい技術は70年経った今も再現出来ません」
お札は透かしだけじゃなくて偽装防止の為に色々工夫してあるから確かに厳しそう。
「ナナミ様もお札を持っていると聞きました。もし良ければ是非買い取らせていただけないでしょうか?」
思ってもみなかった提案だけど、私はすぐに了承した。この世界で使える通貨にしておいた方が良いから。
そして保管ケースに仕舞われているのはスマホだった。
スマホケースには紐で招き猫の飾りが付けてある。100年前の物とは思えない程状態が良い。そしてソーラー充電器。充電器もピカピカだ。
「昔父が言っていました。他の家族には内緒でこの機械に入っている日本の写真を見せてもらったと。私も見てみたいが使い方が分からなくて。ナナミ様は分かりますか?」
サトウ王がスマホを手に取り、切なげに話す。
機種的には12年前のモデルだと思うけど、こっちに来てから80年でしょ?バッテリーが生きているはずがない。
でも、もしかしたら、奇跡が起こるなら電源が入る事があるかも。
翌日、朝からソーラー充電器を1番日当たりの良い場所に吊り下げ、スマホに充電ケーブルを差し込んで手を止める。
そういえばこのスマホに付けてある招き猫、何処かで見た事があるような……
脳裏に蒼大が落とした鍵を拾った時の事が思い浮かぶ。招き猫のおでこに赤い石が埋まっているキーホルダーが付いていた。
招き猫を握りよく見ると、おでこにハート型の石が埋まっている。赤じゃなくて透明だけど。とてもよく似ている。
知らないだけで、なんか、流行ってたキャラクターかも。
私はスマホを置き、充電できますようにと手を合わせて観光にむかった。
三城並んでいるお城のうち、王様の居城以外は高級宿やレストラン、娯楽施設になっていた。
お城の裏は広大な日本庭園。
素晴らしすぎてお城を見て回るだけで1日かかってしまった。
娯楽施設にはダーツにビリヤード、卓球まであってひたすら感動。観光客が絶えない訳よ。初代サトウ王有能過ぎって何回思ったか。
気になっていた「こんびにえんすすとあ」は明日かな。
夕食前に諦め半分で初代サトウ王のスマホを持ち電源を長押し。
するとうっすらと浮かび上がったスマホのマーク。
「えー!凄い!80年経っても大丈夫なんて!奇跡だよ」
ロックはかかっておらず、ドキドキしながらアルバムを開く。
3代目サトウ王に、画面を指でスライドしていくと古い写真が見られると実演しながら説明していると、見慣れた顔が見えた気がしてふと指を止めた。
「リッカ様?」
まさかと思いながらタップすると、信者の私が見間違えるはずがない。間違いなくリッカ様が写っていた。
思わずゴクリと唾を飲む。
ど、どう言う事……
一気に大きくなる心臓の音。
現サトウ王にスマホを渡すのも忘れて、私はアルバムの「お気に入り」をタップした。
入学式と書かれた看板の前で幼児を抱いたリッカ様、隣にはぶかぶかのスーツを着て、黒いランドセルを背負い、黄色い帽子を被った小学生が立っている。
その彼を抱きしめるように笑っている男性。
蒼大に似てるってもんじゃない。
「これっ!お祖父様の若い頃だ」
隣で見ていたサトウ王が嬉しそうに男性を指さした。
――初代サトウ王。
どう言う事?なんで?まさか、蒼大のお父さん?たしか亡くなったって——
一気に全身鳥肌が立った。
震える指で、小学生の男の子の顔を拡大してみる。
確かに感じる蒼大の面影に瞳が潤む。
他の写真も確認すると、どこから見ても子供の頃の蒼大が写っていた。何枚も、何枚も。笑ってる顔、泣いてる顔、ご飯を食べている顔、幼稚園の頃のお遊戯会と思われる写真。数えたらキリがない。
「蒼大……」
つい、漏らしてしまった言葉にレノックスが反応する。
横から不思議そうに覗き込み、声を上げた。
「本当だ。これ、ソウタだね!小さい!でもなんでサトウ王の写真に?それにどうしてナナミは泣いているの?」
レノックスの声が、現実に引き戻す。
私も何故涙が出るのか聞きたいよ。
胸の奥がぐちゃぐちゃになって、苦しい。
日記に書いてあった日本に残してきた家族。その言葉が、頭の中で何度も反響する。
蒼大がこの事を知ったら、どうなってしまうんだろう。
それに、現サトウ王もどう思うか。
ああ、だめだ、頭がパンクしそう!
お気に入りから、この世界で撮ったであろうアルバムに切り替えてサトウ王にスマホを渡す。
まだ、胸がバクバクしてる。
ああ、どうしよう。ってレベルじゃない。
現サトウ王は涙を流して「これはお婆様だー」と、残された写真を見て喜んでいるけど私は大パニック。
蒼大と一緒に来るべきだったと強く後悔した。
けど、もしかしたら——知らない方が幸せかもしれない。
部屋に戻っても頭の中で考えが行ったり来たり。
伝えた方がいい気がするし、伝えない方がいい気もする。
便箋を前にペンが一向に進まない。
蒼大の事だから伝えるべきだとは思うんだけど。もし傷付いたらどうしようとか考えちゃって……
念のため騎士団の休暇をレノックスに確認してからにしようか。て言うかレノックス、あの写真を見て蒼大とサトウ王の関係に気付いてたらどうしよう。
あああ、どうすればいいのよ!
「蒼大……」
会いたいよ、どうすればいいの?
真実を知ったら蒼大はどうなる?
はぁ。もうっ、1人でモヤモヤしすぎて、考えが纏まらないよ——




