ぎゅうにゅう
道の先は上空から見たらぽっかり丸く木が伐採されている感じだと思う。綺麗に形取られ開けた場所に山小屋と呼ぶには大きく、立派な木造の建物があった。
木製のドアには豪華な飾りが彫られ、金色のドアノブが付いている。
庭には木製のベンチとテーブルも設置されていて外でバーベキューでもできちゃいそう。
「山小屋って言うか別荘みたいだね」
「誰か住んでるかもな」
「ノックしてみる?」
蒼大は頷くと手を離しドアを叩いた。
しかし反応はなく、私もノックしながら大きめの声で叫ぶ。
「こんにちは!誰かいませんか?!」
何度か呼びかけたが返事はない。普通の小さな山小屋なら躊躇せずドアに手を掛け中に入ると思うけど、どこから見ても立派な建物なので勝手な事は出来ない。
「家の人帰ってくるかも知れないから待ってみない?」
「だな」
下流でイノブタを血抜きし水にさらしたり、特攻服を水洗いしたりラッキーアイテムバックの食料を食べたりとなんだかんだとしていたらあっという間に時間は過ぎ、辺りはすっかり夜に。
庭のベンチに腰掛け空を見上げると満天の星が瞬いていて、怖いくらいに綺麗。
蒼大とどっちが輝いてるかな?
外のベンチで待っていたけどやはり人影はなく誰も帰ってくる気配がない。
蒼大がドアの前に行きドアノブに触れた。
「鍵穴がねーから開くと思う。入ってほしくなければ鍵付けてるだろうし、入ってみねぇ?俺らも命がかかってる緊急事態だからな。持ち主が来たら謝ろう」
「そうだね、持ち主が帰って来たらお詫びして労働でお返ししよう!」
2人で決意して金色のドアノブを回した。
ドアを開け一歩足を踏み入れると、一瞬にして木の香りに包まれる。だが真っ暗で部屋の様子が分からない。
「ランタンとかないかな?」
言った矢先に蒼大が声を上げた。
「はっ?!壁に電気のスイッチみたいなボタンがあるんだけどまさかな?!」
「え〜?まさか!?異世界って電気あるの?」
驚きの声を上げるとパチッと音がしてランタンの灯りのような、オレンジ色の優しい光が部屋を照らした
絶句。
異世界は中世の西洋風で電気がないと思い込んでいた。
その前にそもそもこの場所が異世界じゃないかも疑惑も湧いてくる。
でも明かりを見上げてその考えは吹き飛んだ。
電球や蛍光灯は見当たらず、光の玉が円を描いて浮いていたから。
「ひ、火の玉?」
「あーマジだ、すげぇ……」
2人して口をポカンと開けて火の玉を観察。
「ひ、火だったらとっくに天井が燃えてるだろうから火じゃないのかな?」
「よく見たら器具が見えるから火だとしても安全に設計されてるんじゃね?つうか、マジで異世界だったんだな」
私も蒼大もかなり動揺したまま足を進める。
思っていたより、ずっと広かった。大きなベッドが1つ。1人がけのソファが2つ。テーブルもある。そしてカウンターキッチンまで。
奥にもドアがあってドキドキしながら開けると念願のバスタブが目に入り喜びで手が震えた。隣は洋式トイレ。
「お風呂とトイレがあるなんて!生きててよかった!」
歓喜の声を上げると蒼大も後ろから覗き込む。
「やったな!これで洗濯機と冷蔵庫があれば言う事ねーな」
「そんな冷蔵庫なんて贅沢な……あれ?さっき見慣れた光景過ぎてスルーしたけど……」
2人で慌ててキッチンに戻ると私の背たけより少し低い白い大きな箱が置いてある。材質は違うけど見た目は完璧2ドア冷蔵庫。
恐る恐る開けると間違いなく冷蔵庫だった。下の引き出しドアは冷凍庫。
「最近の異世界はハイテク化が進んでるのかな?」
「原理わかんねーけどラッキーとしか言いようがねぇ。しかもこれ……」
蒼大は冷蔵庫に入っている紙の牛乳パックを取り出した。
何故牛乳だと分かるかって?全く読めない見た事もない文字の下に「ぎゅうにゅう」とひらがなで書いてあるから!
「ど、どういう事ー!?」




