最強のラッキーアイテムバッグ
私は今特攻服の上着を枕に地面に寝ている蒼大を見守っている。
森の中を彷徨い続けて発見した洞窟。そこまで奥深くもなく危険な生物も見当たらなかったので今日の夜はここで過ごす事に決めた。
まだ完全に陽は落ちていないけど、夜になると森は闇に包まれて足元なんか見えなくなるはず。歩き続けるより此処でストップしようと意見が合った。
それに昨晩寝ていない蒼大は限界みたいで。
「わり、1時間だけ寝かせて」
と焚火を点けすぐ寝てしまった。
私は蒼大に貰った飴を舐めながら寝顔を見つめている。
寝ている顔も国宝級。時間を見る為に出したスマホでパチリと写真を撮って慌てて消した。
何やってんの私。隠し撮りしてたファンと同じじゃない!
でも顔だけじゃなくて、指先の写真も撮りたい私は変かな?
私の手が汚れるから俺が全部やる!って、焚火の為に地面を掘って汚れた指先を見ると胸がキュッとするんだもの。
ウエットティッシで拭いていたけど眠さが限界だったみたいで。蒼大は適当に拭いて速攻で寝てしまった。
手を伸ばして、まだ汚れている指先にそっと触れる。
どうしてこんなに胸がドキドキするんだろう。って、そんなの分かりきってるわ。
私は蒼大に惹かれてる。しかも急激に。
ちょっと悔しい。
――パチッ、と焚き火の薪が爆ぜる音が、静かな洞窟に響く。
まだ寝かせてあげようと思い起こさなかったのに、寝てから1時間半辺りで蒼大はパチッと目を開けた。
「よし、飯食うか!」
起き上がってすぐにビニールバッグを漁る元気が凄い。蒼大は焼き鳥の缶詰とスナック菓子を取り出した。
「何それ、魔法?」
「ブハ!魔法じゃねーよ。母さんが準備してた」
「え、お母さんすご!」
「だろ!まだ役立つもん入ってるぞ。ほら、歯ブラシ」
蒼大がバックから取り出しケースに入った歯ブラシセットを見せてくれる。
「えー!?なんでそんなのまで入ってるの?でもいいなー!私も歯磨きしたい」
「七海の分もあるぞ」
「え?」
驚くとバッグからサッともう一個歯ブラシセットを取り出した。
「ええええ?!どゆこと!?」
「このバッグは母さんが占った俺のラッキーアイテムが入ってる。子供の頃から出かける時は必ず何か持たされてさ。嫌な時期もあったんだけどマジで絶対に役に立つんだよな。これもそう」
そう言って焚火を点けるのに使ったライターを見せてくれた。
「なんでライター持ってるのか気になってたけどラッキーアイテムだったんだ……」
「俺タバコ吸わねえしさ。入ってて良かった」
「タバコは二十歳になってからだもんね!て言うかお母さん凄すぎない?歯ブラシ2つ入ってる意味!」
「息子の俺が言うのもアレだけど、本当にすげぇよ。いつもはアイテム1個なのに昨日はバッグに入れて渡してきたからな。本出したりテレビにも出てるから見た事あるんじゃね?」
蒼大がスマホのアルバムから探しお母さんを見せてくれた。黒髪色白の落ち着いた美人だ。この顔は確実に見た事がある。
毎年年末近くになるとこの顔の帯の占い本が本屋に並ぶから!
「あー!この人知ってる!テレビで見た事ある!めちゃくちゃ有名な占い師さんだよね!凄おぉぉ」
「ん」
蒼大が嬉しそうに頷く。お母さんの事を誇りに思っているんだろう。ほんと、不良なのが不思議で仕方ないわ。
「なんか、蒼大のお母さんが占ってもし此処に飛ばされる事も分かってたなら、絶対助かる気がする」
「その通り。幸せになれるって」
「幸せに……?」
首を傾げると、焚き火の光に照らされた顔でじっと私を見つめて……蒼大は微笑み頷いた。
「俺は焦らなければあり得ないくらい幸せになるって母さんからのお墨付きだからさ。今一緒にいる七海も幸せになるんじゃね?」
思わず高鳴る鼓動を抑えるように胸に手を当てた。
……なんて思わせぶりなの!こんな事言われたら勘違いする子が続出するよ!
蒼大、恐ろしい子!




