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01 採用試験の日

投稿の練習でいろいろ書き変えてます。

村雨春樹は、21歳の学生だ。

都内の私大の経営学部に在籍しているが、同じ大学の法学部に落ちたからそうなっただけで、税理士を目指そうだとか、ネット関連のスタートアップで一旗揚げようなんてことは考えたこともない。


とりたてて優秀とも言えないが、ほどほどに友人もおり、就職もまずまずなんとかなりそうで、昨今の好景気に感謝しているのんきな日々である。


そんな村雨がゴーストに関わる発端となったのは、とあるネット小説サイトであった。

もともと読書は好きではあったが、ラノベの類いはアニメ見とけばいいんだろ?という感覚だったため、ネット小説サイトを訪問することもなく過ごしていたのである。


興味をひいたアニメの原作が気になって検索してみたところでネット小説に出会い、途中は省略するがイマココ、という奴だ。

ここまではなんの変哲もない。


新たな世界が広がっていたことに興奮してよく分からぬまま感想やらレビューやら書き込みまくり、ちょっと時間が経ってから自分の書き込みを見て眉間にシワを寄せる、これもまたよくあることであろう。


そのウェブサイトの片隅に、テスター募集の小さなバナー広告を見かけたことが一つの始まりだった。

小規模VR環境のテスター兼データ収集の人員募集であった。


オンラインでの募集告知なのにオフラインでの採用試験と面接があり、それでいて時給も今一つ。短時間の不規則勤務でよい点がかろうじて一般的なメリットとも言えたが、村雨にとっては大きなアドバンテージがあった。勤務地まで徒歩で数分という圧倒的地の利である。

自宅で過ごす暇な時間帯を現金化できると思えば単価の低さは気にならなかったし、ネット小説サイトのリンクという意味では、新しい物語を試し読みするような感覚さえあった。


そして説明会兼採用試験当日。

募集は不定期かつ何度も行われている雰囲気で、会社側の案内も手慣れている。今回は村雨のほかに8人が会場に集まっていた。会場はそれほど大きくないオフィスビルの会議室で、同じフロアにオフィスがある。

高校生や大学生くらいの年代を中心に、スーツを着て社会人っぽい女性もいるが、部屋着に近いレベルのカジュアルな服装が多い中で、少々浮いている。


時間になり、スタッフが会社の業務内容について簡単な説明を始める。

いわゆるVRMMOそのものではなく、その前提となる各種エンジンを構築するための、それも予備的な調査を実施している会社であること。


取引先としては、マスメディアでVR関連のニュースをふんだんに振りまいている有名企業もあり、今回のアルバイトで集められたデータも、そちらの開発事業で使われる可能性があること。


応募者たちは会議室の机で思い思いの姿勢で席に着きつつ、VRと聞いて興奮を隠せない者もいる。


「では、皆さんに従事していただく業務内容について具体的に説明していきます。」

スタッフの声に、ゴクリと誰かがつばを飲み込む音が聞こえてきた。


「大きく分けて、二つの業務があります。

一つがVR環境で様々な活動を行っていただき、そのデータを収集すること。

もう一つが、皆さんの『ゴースト』の複製を行い、提供していただくことです」


「VR環境での活動というのは、ゲームのテスターに近い内容ですが、ゲームのテスターとの違いとしては、VR環境を皆さん側がどのように認識し、解釈するかを測定して記録していくことにあります。


難しく考えていただく必要はありません。

様々なVR環境でいろいろな体験をしていただき、どんな環境を整えれば皆さんが満足できる疑似体験ができるか、その仕様を想定するためのデータ収集ということです」


「実際の勤務としては、お好きな時間にこちらに出社していただき、専用端末でログインして、用意されたワールドで簡単なミッションを順番にこなしていく形になります。

時給で給料が支給されるほか、レポート等の提出でわずかですが追加の手当もあります。」


「同時に、皆さんの『ゴースト』の複製の準備をします。

こちらは、脳神経の構造の撮影が数回、あとはテスターとしての活動中に脳波のモニタリングを行い、のちにそれらを一体化して、『ゴーストイメージ』と呼んでいますが、一種のプログラムとして固定するものです。

撮影は、高精細MRIを利用しますが、感度の高いものを用意していますので健康への影響はほとんどありません。撮影以外の作業は、特に皆さんに意識していただくことはありません。」


「ダビングしたゴーストには、皆さんの部分的な記憶や思考パターンなどが反映されます。

記憶は、ごく最近のものについてはある程度鮮明に、それ以外は日常生活に強く結びついた安定的なものだけが転写されると考えられています」


「ゴーストは、各種テストやシミュレーションを高速かつ長時間連続で稼働させるために使用します。

ゴーストは、クローズド環境で構成される当社のサーバ内のみで稼働させ、記憶に含まれる個人情報等の機密は保持されます。

プログラムそのものに対する皆さんの権利は放棄していただくことになりますが、記憶の内容の著作権等は皆さんに帰属します」


「簡単に言えば、皆さんの分身を仮想空間に作成し、わが社で働かせてくださいと、そういうことです。

ゴーストの稼働状況によって、別途追加の手当があります。

時間単価の手当として受け取るほかに、プログラム利用料やプログラムライセンスの売買契約という形を取ることもできますので、ゴーストイメージが出来上がった後に相談しましょう。」


「ゴーストの取り扱いについては、詳しくはこちらに文書化したものがありますので、ご確認のうえ初回勤務時に署名して提出してください。

未成年の方は、保護者の署名も必要なのでお願いします。

ここまでで、何か質問はありますか?」


初めて耳にする事柄がいくつも登場したため、応募者たちはどうしたらいいのか戸惑いつつ周りの様子をうかがっていた。

そんな中、村雨の左隣に座っていたスーツ姿の女性が、挙手をして質問を始めた。


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