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妖怪 Wantchu  作者: ユウソン


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21/27

第十八話 陰陽師の孫。

2日目の朝。

大鍾乳洞には社員の半数以上が参加して、

昨日肝試しに行ったメンバーはほとんどがが参加した。


琴美さんとダイは僕が参加すると思っていたようで、参加しない事を伝えると、少し驚いていた。

しかし、締め切りまで提出を忘れていたと説明すると納得された。


今日1日自由時間になったので、僕は町の散策に出かけることにした。

昨日の肝試しの帰りにも少し通った

三町伝統的建造物群保存地区を散歩する。

古い建物が建ち並び、道は細く、まるで江戸時代にタイムスリップしたような気持ちになる。

途中、飛騨牛の串焼きを見つけて購入し、食べ歩きながら町並みを楽しんだ。

少し歩くと中橋という橋が宮川を跨いで架かっており、川沿いの道から橋を眺めるととても風情のある光景だ。

保護地区から南に下ったが、北に登ると朝市という、新鮮な野菜や果物。手作り味噌、蜂蜜など、さまざまな物が売っている場所があると知り、川沿いを歩きながら向かう。

朝市は意外にも人が多く、賑わっていた。


(なんだか、言葉で表しようのないこの雰囲気が好きだな。)

景色を咀嚼するように味わい、思い出として飲み込むにはあまりにも勿体無いと思ってしまうほど、僕はこの町が気に入ってしまった。


飛騨市の方へ北上すると、

瀬戸川というところがあるらしく、白壁の土蔵の側を流れる川で、

1000匹以上の鯉が泳ぐ様がとても幻想的だと。


僕はパンフレットに書かれていた文字をみて、行ってみようかと悩む。

距離はかなり離れているが、幸い今日は時間がある。

一度部屋に帰ってから、準備して行こうと思いホテルへ帰った。


ホテルに帰り、ロビーを抜けて階段を登り廊下に出たところで仁美さんと会った。


「あ、おはようございます。鍾乳洞には参加しなかったんですね。」

僕は挨拶する。


「おはよう。鍾乳洞は、何度か行ったことあるからね。ちょうど君を探して部屋を訪ねようと思ってたんだ。」

仁美さんにそう言われて、僕は頭の上にクエスチョンマークが出る。

「僕ですか?」


仁美さんと廊下の真ん中にある自販機コーナーの小さなテーブルに腰掛けた。


「昨日のお札見せて貰っても良いかな?」

仁美さんは、少し申し訳なさそうに口を開く。


「昨日のですか?わかりました。」

僕はお札を財布から出した。

真ん中の端から焦げ目のような痕がついたお札を取り出して机の上に置いた。


仁美さんが、ポケットから黒焦げたちり紙のような物をパラパラと出した。


「何ですか?この粉みたいな物。」

僕がそう聞くと仁美さんは答えた。


「アタシ達が持ってたお札だよ。やっぱり君のお札だけやたらと無事な箇所が残ってるんだよね。」

仁美さんは僕の目を見ている。

僕は何を言えば良いのか分からずしばらく机の上のお札と、お札だったものを見ていた。


「君〜…。いや、…。え〜。どうしよう…。でもなぁ…。いや。」

仁美さんは何かを悩んでいた。


「ちょっと待ってて!」

そう言ってスマホを取り出して誰かに電話した。

僕はよく分からなかったので、そのままじっと座っていた。


「もしもし?ばぁちゃん?仁美。あのさぁちょっと見て欲しい子が居るんだけど…。……うん。…ちゃんと聞くよそれは。…うん。分かったよ。また連絡するね。」

そう言って電話を切った仁美さんは僕の方へ姿勢を直して聞いた。


「変な事言ってたらごめんね。君、もしかして陰陽師?」

僕は大体の事情を察した。が、どこまで話して良いのか分からないので、軽く補正して説明した。


「陰陽師では無いです。少し特殊な現象に出会う事が人より多くて…。」

そう答えると仁美さんは、話し出した。


「昨日、君の後ろに立った時にばぁちゃんと同じ匂いがしたんだよね。変な意味じゃないよ?

それでね、ばぁちゃんの事、霊媒師って言ったんだけどホントは違くて、ウチのばぁちゃん陰陽師なの。周りに説明するのがダルくて言ってないんだけどね。アタシも違いよく分かんねぇし。」


僕は興味を惹かれた。

一度陰陽師と会って聞きたい事があったので、話に釘付けになる。


「んで、陰陽師って独特の香り?匂い?がするの。それがなかなか特殊で陰陽師かどうか見分けたいなら匂いで判別しろって言われるぐらい。そんな家系に生まれたから、才能は全然無くても、判別ぐらいはできる訳。」

仁美さんは一度ここで話を区切って「わかる?」みたいな表情をした。

僕は頷く。

仁美さんは続けた。


「君が嘘ついているようにも見えないし、嘘をつくメリットもないから信じるんだけど、そうすると気がかりな事が出てくる訳。大きなお世話だと思うんだけど、ほっとけない性格でさ。1回で良いからおばあちゃんに会ってくれない?」

そう言って仁美さんは昨日一度だけ見た数珠を取り出した。


「コレはおばあちゃんが作ってくれたヤツなんだけど、お札の比じゃないぐらい強いヤツっていうか、なんというか。コレをつけてもらいたいんだよね。」


「作ってもらうって事ですか?」

僕は聞いた。


「そ。数珠って主人を選ぶから、アタシのを君にあげても意味ないの。お金は出さなくてもいいからさ。どう?嫌?」

仁美さんはあくまでも僕の意見を尊重してくれる様子だった。


「いえ、寧ろ僕自身の身の周りのことで陰陽師さんに聞きたい事があったのでぜひお願いします。」

僕はそう答えて頭を下げた。


「理解してくれてありがとう。それじゃ早速で悪いんだけど、旅行終わって帰ったらそのまま時間取れるかな?次の日休みっしょ?」

まさかそんなに直近の用事だとは思っていなかったので驚いたが、特に予定もなかったので了承した。


「こっちゃんも元々ウチ来る予定だったからさ、3人で行こうか。」


「琴美さんも数珠を?」


「いや?プリ撮ろって話になっただけよ?」


突然気の抜けた話に戻ったので、僕はズッコケそうになった。

仁美さんと解散して、僕は部屋に戻る。

瀬戸川を見に行こうとしていたが、それどころじゃ無くなったので、

陰陽師に聞きたい事をメモするようにした。


みんなが大鍾乳洞から帰って来た事に気づかないぐらいに考え事に没頭していた。


高山の気温はとても過ごしやすく、夜になると長袖でも過ごせるほどで、

夏を少しだけ忘れさせてくれる。

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