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妖怪 Wantchu  作者: ユウソン


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第十六話 肝試し。

バスの中でダイは写真を僕に見せながら、熱く語っていた。

聖地には、アニメのキャラクターが住む家や、外観のモデルになった建物があり、再現度が高い。

「ここがこの子の家になってんだよ!凄くねぇか!?見たまんまだ!」

ダイはアニメの画像と今日撮った写真を見比べて大満足の様だ。

僕は「良かったね。」と相槌を打って、先ほど買ったお土産をカバンの中にしまった。

ホテルに向かうバスの中で仁美さんに少し意味深な事を言われたのを思い出す。


〝ほー。君はこっち側なんだね。〟


僕たちが展望台に向かって歩いている時に、仁美さんが突然後ろから声をかけて来た瞬間があったが、

キョトンとしていると、なんでもないとすかされてしまった。

独り言だったのだろうか?聞き間違いだったのか。

そんな事を思っていたが、ホテルに着く頃には忘れていた。


ホテルに到着して、それぞれの部屋に入る。

かなり立派なホテルで、2日間ほとんど貸し切り状態だった。

20時から、宴会場に集合になっている。

1時間半ほど時間が余っているので、荷物を軽く整理して、シャワーを浴びる。

大浴場もあるらしいが、何となく裸の付き合いが恥ずかしくて僕は遠慮した。

時間になり、宴会場へ。かなり広い場所で、畳の上に座布団と、小さな机が置いてある。蝋燭型の簡易のコンロの様なものが乗っていた。

席は自由になっていて、それぞれが好きな席に座る。

続々と人が集まってきて、少し早めに宴会は始まった。

部長と係長の挨拶があり、部署のリーダーの今年の抱負の様なものを発表した後に支部長の挨拶からの乾杯の音頭をへて、開始された宴会はかなりの盛り上がりを見せた。

ベロベロになる人。カラオケのマイクを離さない部長。支部長のありがたい言葉を聞き続ける係長。

部署のリーダーに捕まり、延々と武勇伝のようなものを聞かされる社員。

見ているだけで笑っちゃうような光景が繰り広げられた。僕とダイもビールを2、3杯飲んだ。

もう少し飲めたが、今日の夜の肝試しに備えて抑えることにした。

2時間ほど経ち宴会はお開きとなる。

2次会に行く人、寝る人、街へ繰り出す人。それぞれの自由時間が始まった。

僕らは一度部屋に帰り着替える。

準備が出来たら、ロビーに集合だ。


僕とダイがロビーに着いた時に男性メンバーは揃った。バイクの話をしてくれた先輩と肝試しに誘ってくれた先輩に僕とダイ。

女性メンバーは、初めて見る人が居た。

どうやら、男女の先輩方は、僕とダイの様な関係らしい。

しばらく談笑をしていると、琴美さんと仁美さんがロビーに現れた。


「お、君も今日のメンバーだったのか。」

仁美さんは僕の方を見て言った。


「琴美さんと仁美さんだったんですね。よろしくお願いします。」


そうして僕らの向かった先は《高山城跡》

血の流れる木は、そこの《使者之間》と言うところにあるらしい。


泊まったホテルから近くにあるため、僕らは歩いて行くことになった。

道中で仁美さんが名刺のようなものをみんなに配った。

「何ですかこれ?」

僕が聞くと仁美さんはバイクの先輩に言った。


「説明してないの?」


「あ、ごめん忘れてた。仁美のおばあちゃん霊能力者なんだよね。昔から肝試し行く時はお札貰ってるんだ。」

そうして説明された。

話をまとめると、

仁美さんのお婆さんが作ってくれるお札はセンサーのようなもので、異常があるとお札が破れたりシワがよったりするらしく、原形から遠ざかるほど危ないナニカが近くにいる事になる。

過去に何度かそういった事例もあるらしい。


「だから、お札に異常が出たら撤退ね。お札の状態によっては仁美が対応してくれるから。」

先輩はそう説明をして、仁美さんの方を向き、

「今日もたのんます。」

と軽くお願いした。

仁美さんは少しムスッとして

「はいはい。アタシが何とかできるやつはな。」

そう答えた。


琴美さんとダイはその話を聞いて、仁美さんを質問攻めにしていたが、僕は敢えて何も聞かずにいた。

そうこうしているうちに、高山城跡に到着した。

なかなか雰囲気がある。

少しだけ空気がピリピリとしているような気がして、皆もそれを感じ取っているようだ。


「うわ〜。雰囲気あるなぁ…。行く…?」

言い出しっぺの先輩が言った。


「せっかくここまで来たんだから行こうよ。」

女の先輩が言う。


僕たちは恐る恐る歩いて進む。

持ってきた小型の懐中電灯を先頭の人と1番後ろの仁美さんが持って歩く。

じんわりと汗が滲み出てきた。


看板が表れて、そのすぐ横に石で出来たようなちょっとした階段と、広場が出てきた。

看板には、《使者之間》の文字が書いてある。

そこの正面まで行った時にみんなでお札を出そうと言う話になり全員がお札を出した。



まだ異常は無い。



階段を登ると、少し狭めの広場が出てきた。

真ん中に不気味な木が一本立っている。


「アレ?口コミや写真で見た時は、あんな木無かったぞ?」

先輩が言った。

「え?何それ?めっちゃ怖いんだけど。」

女の先輩が言う。

ダイと琴美さんは身を屈めながら、先輩達の後ろに隠れてついていく。

木の目の前まで来た。

街灯も無いのにその木は薄暗く照らされたような感じで目立っている。

2、3分ほど木を観察してみたが、お札にも木にも異常は見当たらない。


「何だ。何とも無さそうだな。」

バイクの先輩がそういった。


「写真古かったんじゃないっすか?」

ダイが口を開く。

僕は、このなんともない木になぜだかとても興味を惹かれる。

なんというか、RPGでいう、(ある道具)を持っていかないと話が進まない。そんな感じだ。

そうこうしているうちに皆んなの気が抜けたのを感じだ。

すると突然。


ドスン!


何かが僕らの近くに落ちた音がする。

僕らは飛び上がってその音のした方を見た。

そこには、まるで人の身長ほどもある巨大なハンマーで叩きつけたような痕が、地面に残っていた。


また、背後で


ドスン!


と音が鳴り響く。

振り返ると同じような痕が、木の周り。僕らの周りにどんどん追加される。


ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!


音はどんどん速くなる。

ふとお札を見ると、まるで燃えて焦げてしまったような痕がついていて、それがどんどんと広がる。


「逃げろ!!」

仁美さんが叫ぶ。

それを合図に先輩達、ダイが走り出して、

琴美さんは転んでしまった。

僕は琴美さんの手を取り、無理やり立たせる。

仁美さんと目が合った。

僕は琴美さんを仁美さんの方へ振り回すように投げ出した。


その瞬間!

琴美さんがいた場所にハンマーで叩いたような痕がつく!

仁美さんは、琴美さんを引っ張って走り出した。


先輩達やダイはすでに階段を降りている。

僕が最後に取り残されるような形になってしまった!


《夜なべ済んだか、釣瓶下ろそか、ぎいぎい。》


突然そんな声が聞こえた。

仁美さんが振り向いて僕と目が合った瞬間に、仁美さんの顔の横から影が飛び出てきて、僕の頭に乗った。

その瞬間、世界は鮮やかな藍色に染め上げられる。

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