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妖怪 Wantchu  作者: ユウソン


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第十一話 平凡な日。

「先週、静岡に行ったんだよね。」

僕はそう言って写真を見せた。


「うわ〜。すごい景色!」


この人は《琴美ことみさん》。

前に一度話しかけてくれた同僚の女の子だ

休憩時間が被ると良く話す様になった。


「私が、最近行ったのは豊田市かな。」


「豊田市?何か目当てがあったの?」


「いや、そう言うわけじゃなくて…。」

琴美さんはなぜか少し恥ずかしそうにしていた。

そして、小さな声で続けた。


「実は、今週に《豊田おいでんまつり》があるんだけど、勘違いしちゃって…。」


どうやら、友達と予定を合わせてわざわざ豊田市まで行ったのに、日付を間違えていた様だ。


「ハハ。あるある。僕も昔何回か経験したことあるよ。」

休憩終わりのチャイムが鳴る。

「お、持ち場に戻ろうか。」

休憩室を出て作業場へ向かう。


「今週にもう一度友達とリベンジするの!……良かったら一緒に行ってみる?……とか…。」


そう言われたが、僕が一緒に行っても邪魔なんじゃないかと思った。それに、少し人見知りな所があるので、僕はやんわりと断った。


「え〜嬉しいな。でも、今週は大人しくしようと思うから、また誘ってくれたら嬉しいな。」


「そうか〜。分かった!また声かけるね!」


それぞれの持ち場に戻り、作業を再開した。

その後は琴美さんに会うこともなく、僕は帰路に着いた。


最近忙しくて忘れていたコンビニに寄り、

猫缶を買って神社へと赴く。

今日も猫様達は神社の隅で集会をしていた。

僕は自転車を停めて、カゴから袋を持ち上げる。

すると猫様達は、音に反応してこちらに寄ってきた。

「ナーン。」

そう鳴いて向かってくる。

「久しぶりだね。ちょっと待っててね。」

そうして、今日は無人の管理事務所の様な所の屋根の下で猫缶を開けた。

今日、この後朝にかけて雨が降るようなので、いつ降っても良いようにこの場所を選んだ。

僕は猫様達を一撫でずつして、

賽銭箱に5円玉を入れて参拝した。


「一つ目小僧さん。こんばんは。アレから沢山のことがありました。」


僕は京都と静岡であった事を報告した。

いろんな妖怪に会ったこと。

おそらく猫神様と思われる猫様がお墓の上に乗った事。

猫神様の見せてくれる景色がとても綺麗だと言う事。

「また、一つ目小僧さんとお話しできる事を楽しみにしています。その時はよろしくお願いします。」


そうすると、方にトンッと黒猫が乗った。


「お?」


………しかし、僕の視界は変化が無い。


しばらく目を凝らしてみたが、先ほどと変わらぬ景色だった。

この子は猫神様では無いようだ。


「こんなフェイントもあるのか。」


僕は、一つ目小僧とまた話ができると思ったがそんなに上手いことはいかないようだ。


「どうしたんだい?ご飯は食べた?」


黒い猫様は

一回短く鳴いて返事をした

「にゃー。」


そうして、肩の黒猫を抱っこして集団の方へ戻す。

僕は猫様達がご飯を食べ終わるまで待ち、空になった缶を回収して神社を後にした。



それから数日後。

金曜日になり、今日も変わり映えの無い1日を過ごし、仕事から帰ってきた。

洗い物や洗濯をし、簡単な晩御飯を作る。

僕の家にはテレビは無く、スマホの動画が娯楽だ。

妹がお母さんに叱られていた事を思い出すが、

(まぁ、僕の家だし。お母さん居ないし。)

そう思って、動画を見ながら食事をした。


明日は何しようか。そんな考えを頭の片隅に置いていた。

その時、動画のオススメに花火大会の動画が出てきた。

僕は気になって動画を視聴する。

花火の打ち上がる動画を見て少し懐かしい気持ちになった。

(花火を観に行くのも良いかもしれない。)

そう思い、この動画がどこの動画か調べてみると

《豊田おいでんまつり》の文字が見えた。

「少し前に、琴美さんが言ってたお祭りか。」

土日で開催されて、日曜日に花火が上がるようだ。

僕は少し考えて、

土曜日に家の事を全て終わらせて、日曜日に花火を見に行き、帰ってきたら寝るだけのプランを立てた。

「うん。せっかくだから行ってみよう。」

僕は、祭りに行く事を決めた。

前回お墓参りに同行出来なかった妹に声をかけてみたが、


「えー?祭り?人混み嫌いだからパスかなぁ」

そう言って、アニメのキャラクターが両手を合わせて謝っているスタンプが送られてきた。


「了解〜。」

今回も1人行動になりそうだ。


歯を磨いて就寝する。

僕も人混みが苦手だが、何故か今回はそんな事微塵も思わなかった。

そして、寝落ちする直前に、

(琴美さんも花火は見に来るのかな?)

と言う考えが過ったのだった。


外は雨が降っている。


ザーという音が、夏の夜のBGMにはぴったりだ。

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