第九話 珍客。
2026/06/28。
山梨県での地震により被災された皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。
本話は地震前から執筆していた内容で、偶然舞台が山梨県となっております。
一日も早い復旧と、皆様のご無事を心よりお祈りしております。 ユウソン。
山梨県は富士吉田市。
僕は西裏通りに来ていた。
途中で商店街を通って来たので、ネタバレされたに等しい景色を見る事ができた。
商店街がズラリと並ぶ一本道。
両側に街灯が立っており、2つの提灯の様な形をした灯りが、富士山まで一直線に視線を運ぶ。
圧巻の景色だった。
「うわ〜。」
僕は感嘆の声を上げる。
かなりの人が写真を撮りに来ている様で、なかなかに混雑している。
僕も1枚だけ写真を撮って、家族に送った。
お母さんからすぐに返信が来た。
《素敵な写真ありがとう。おじいちゃんおばあちゃんのお墓参りは終わったの?》
《終わったよ〜。なんだかおじいちゃんおばあちゃんに会えた様な気がしたんだよね。》
《もしかしたら居たのかもね〜。2人とも特にあんたの事可愛がってたから…笑》
そんなやりとりを交わした後、僕は景色を楽しむことにした。
途中、自販機があったので飲み物を買う。
飲み屋は西裏通りや、ミリオン通りと呼ばれる場所の方にあるらしく、僕の取ったホテルはその周辺だった。
西裏通りに入り、ホテルを見つけたのでチェックインした。
すぐに散歩がてらにまた、外に出る。
先ほど買った飲み物を片手に歩く。
(西裏通り…。さっき商店街の通りを見た後だと少し見劣りしてしまうな。)
そうは思うがとても綺麗な景色だ。
夕方の空と富士山がとても綺麗だ。
大通りに戻って来た。
まだまだ人は多いが、歩けないほどでは無い。
他の観光客の会話がチラチラと聞こえて来て分かったことだが、9月になると《金鳥居》周辺で、
《吉田の火祭り》?が行われるらしい。
日本三大火祭り何だとか。
外国人の観光客も多く見られる。
雰囲気が僕の肌に合う。
しばらく歩いていると、金鳥居が見えて来た。
「なるほど〜。アレが金鳥居か。」
僕は金色の鳥居をイメージしていたが、そうでは無く、青銅の色(黒褐色や緑青が混ざったような金属色)をしている。
名前の由来は、調べたところ、
古くは「唐銅鳥居」と呼ばれており、これが訛って「金鳥居」になったとされています。
と、書いてあった。
鳥居を超えてしばらく歩くとコンビニがあった。
よく見ると、外に小さなベンチがある。幸い誰も座っておらず、僕は休憩のために腰掛ける。
しばらくぼーっとしていると、左肩の上に少し重さを感じた。
「あ。」
突然視界が鮮明になる。
夕焼けの空は赤く燃え、アスファルトは砂金をまぶした様な輝きを持ち、街灯や電柱が日の光を反射して輝き出した。
僕は、左に顔を向ける。
グレーの毛並みを有したサバシロ(銀トラに白斑の入った様な模様。)の猫神様が乗っていた。
「ありがたやありがたや。」
僕は手を擦り合わせた。
気持ちが高揚してくる。疲れが飛ぶ。
せっかく猫神様が乗ってくれたので、少し散歩をしてみることにして、通りを出た時僕は少し驚いた。
今までは一体一体出会って来た妖怪が、数十人ほど、道を歩いて談笑したり、挨拶を交わしたりしていたのだ。
「わあ。こんな事もあるんだ。」
僕はゆっくりと歩き出す。肩の猫神様を落とさない様にと。
近くで談笑していた《ろくろ首》と蟹?の妖怪らしき2人がこちらに気付いた。
「あらまぁ。猫神様じゃ無いかい。今日はお散歩かね?ありがたやありがたや。」
ろくろ首はそう言って首を縮め手を合わす。
それに続いて蟹の妖怪もハサミをすりすりと擦った。
そうして頭を上げて、
目を丸くして僕を見て、猫神様を見て、また僕を見て、もう一度猫神様を見た後に、僕に話しかけて来た。
「あんた……人間かい?」
蟹の妖怪も驚いている。
「なんだって!?」
僕は答えた。
「あ、はい。人間です。」
ろくろ首と、蟹の妖怪は、顔を会わせてこちらを見る。
「驚いたね。まさか、また人間と話す事が出来るなんて。」
「猫神様に最近良くご招待されるので、今日で4回目です。」
「なんだって!?」
ろくろ首は、猫神様をまじまじと見る。
「あんた、猫神様に出会うなんて、人生で1回あればラッキーなんだよ?すごいじゃ無いかい!」
「そうなんですか?ここ1、2ヶ月で、運を使い果たしちゃったかもしれませんね。」
「そんなに頻繁にかい!?」
ろくろ首は、周りにいる妖怪たちも呼んだ。
「アンタらちょいと来てくれよ!珍しいものが見れるよ!」
そう声をかけられてワラワラと集まって来た妖怪は見た事ある妖怪や、知らない妖怪さまざまだった。
しかし、やはりこれは皆お決まりで、
まず最初に猫神様へ挨拶から始まる。
猫神様は、僕の頭の上で欠伸をしていた。
「おわ!オメー人間でねぇか!?」
「ひゃー、珍しい!」
「おぉ〜!コイツはめでたい!」
「猫神様に気に入られてる様じゃの?」
「コレはコレは。人間が来るなんて400年ぶりか?」
皆一気に感想を話し出した。
僕は少しだけ、この圧に困惑してしまった。
すると、蟹の妖怪が話しかけて来た。
「すまないな人間。こっちの世に人間が来るなんてなかなか無い事だからみんな興味が尽きないんだ。儂の名前は、《蟹坊主》だ。よろしく。」
「いえいえ、もう慣れちゃいましたから。よろしくお願いします。」
そうして僕は猫神様が落ちない程度の会釈をした。
猫神様の気まぐれがいつまで続くか分からないが、今はまだ動く気配が無さそうだ。




