第5話 コワコワメモリー
「えっ何。出玄寮なの? 俺も昔、入ってたわ」
年配の先輩の人が言った。
柴田は、あのノンウォール感覚を共有できる人物に会えた感で、少し嬉しかった。しかしながら、彼と先輩とでは似て非なる出玄寮があった。
「あれさ。今でこそ一人部屋だけど、昔は二人部屋だったのよ」
──!?
先輩の言葉は衝撃だった。
「よ、四畳半に二人ですか・・」
確認の言葉を発する柴田だったが、思い当たるフシもある。
「あー。それであの収納なんですね。いや、どんだけ衣装入れる気だよって思ってましたよ」
一人分とは思えないタンスや棚は、それもそのはず、二人分だったのだ。
「あれね。奥の方を使うのがリーダーみたいなルールがあってな」
「へぇー」
「そうそう、思い出した。寝る場所もさ、エアコンのスイッチあるでしょ? 力関係上の方が、スイッチに近い位置を確保できるとかね」
リモコンの事だ。壁に固定されて動かすことは出来なくなっている。
「それって、部屋の温度を支配できるみたいな話ですか」
「そうそう。俺は暑いんだ的な、こっちは寒いぐらいなのにクーラーガンガンにする奴とかさ」
「ハハッ──、スゴいな。あっ、同室の人は勤怠同じなんですか?」
早番、遅番の週替わりが一致してるかという意味だ。
「それが違うパターンがあんの!」
「ハハッ、マジっすか。それはキツいっすね」
「キツイキツイ。で、そこでも部屋の力関係が出てくんの。弱い方は遅番で帰って来ても、電気もまともに付けられないのに、強い方は普通にテレビ見出すから。もうたまったもんじゃございませんよ」
「うわぁー」
「いやさ、そんなんでも働く奴いっぱいいたんだよね。仕事もめちゃくちゃ多かったし。今みたいに週休二日とかないしさ。ホント、自分でも信じられないもん」
これに柴田は、神妙な顔で頷いた。
先輩との何気ない会話から、寮に関する恐るべき過去を知り、人の歴史から世の移り変わりを感じた柴田だった。




