第37話 ユキユキエフェクト
──表通りにするべきだったな・・
柴田はいつも通りに出勤しようとして、若干の後悔をした。
彼は日頃から裏道のような場所を通って駅に向かっているが、人通りが少ない道のせいもあって除雪も特になく、前々日の雪がしっかり残っていた。
住宅地の辺りに入ると、住民たちがちょっとやった感はあって、比較的歩きやすくはなっていた。
駅のダイヤは平常通り、問題なく電車は動き、柴田は工場のある駅まで移動した。
工場近くまで行くと、工場の作業服を着た社員と思しき人達が、何やら小さく丸く白い物を道に撒いていた。
──融雪剤か?
はたまた滑り止めの何かなのか知らないが、肥料でも入ってそうな大きな袋から掬っていた。
──役所から許可は、当然、取ってるか・・
これも地域貢献的なアレかも知れないと、柴田は想像した。
柴田は面倒臭くて参加してないが、工場では休日に、地域の人々との交流会みたいなイベントをやったりしていた。出店とかが並んで、ちょっとしたお祭りみたいなものらしい。
そうやって「ワレワレは人畜無害だ」というアピールをしているんだと、柴田は勝手に思っていた。
ともあれ──。
始業時間になったが、ラインはストップしたままで柴田たちも仕事はなく、休憩室に待機する状態になっていた。
なんでも完成車をストックしておく駐車場の雪かきが終わっておらず、それが完了するまではラインは動かせないとの事だった。
「馬鹿な話だよな。そんなの昨日の段階で外注でもして、さっさとやっとけばいいのにさ」
社員(役職はないと思われる)が、尤もらしく語っていて、皆はそれに薄ら鼻白みつつも、適当に相槌を打っていた。
で、何もしないのもアレだと判断したのか?
例によって交通事故のグループディスカッションが行われることになった。
が、それもすぐに終わり、後は雑談の時間となった。
「柴田は寮に帰ったの何時ぐらいだった?」
黒井に聞かれた。
「六時ぐらいでしたかね」
「あー。じゃあ同じぐらいか。俺、車で帰ったけど、大体それくらいだったわ」
これに他の者が。
「黒井さん、タイヤとか大丈夫だったんですか?」
雪があるのに、という意味だろう。
「あー。これくらいの雪なら夏タイヤでもイケるよ」
ちょっと無謀に思える台詞を吐いていた。それで黒井は何かを思い出したのか。
「俺、駐車場で一服してたんだけど。なんか出れない車がいたのよ。何度も何度もやってさ、それで可哀相になって声かけたんだ」
そう語り出した。
なんでも子連れの女性で、黒井が代わって駐車場の外に車を出したのだという。
「よう出せましたね」
「夏タイヤでも、上手く切り返せばイケるんだよ」
黒井は得意げだ。
「それで、またしばらく一服してたら、その人戻ってきたのよ。キョロキョロしてるから、また声かけたの。そしたら、旦那の車も出してもらえませんかって言うの」
「それでどうしたんです?」
「もう、しょうがねーから、旦那の車も出してやったわ」
「ハハッ、そりゃご苦労様です」
オチらしき物がついて、小さな笑いが起きていた。
そのまま昼まで稼働はせず、ラインが動き始めたのは、昼食休憩開けからしばらく経ってからだった。それでも、ちょくちょく止まっていたので、詰まってるんだろうと思われた。
柴田たちの仕事はというと、最初はどっさりと部品が納入されたのだが、しばらくしてそれもおさまり、まばらな感じになった。
「たぶん、一昨日分がさっきので、以降は調整されたんだろうな・・」
チームの者も、そんな風に推測していた。
遅番との交代時間となり、彼らの。
「このあいだ、帰るの大変だったんですよ・・」
という苦労話を聞いて、この日の仕事は終了した。




