第36話 シンシンスノー
二月に入り冷え込みが厳しくなった。
早番の柴田は、この日も真っ暗の中を出勤した。
仕事は至って普段通りであった──。
昼休憩開けの稼働中、サブリーダーがやってきて。
「雪が降り始めました。で、結構強めに降ってるんで、この後もしかしたらストップするかも知れないです」
そんなことを言っていた。
雪国出身の人間には違和感しかないが、雪の降らない地域では3センチですら大雪なのだ。公共交通機関は勿論、工場であれば搬入のトラックや、完成車を出すのでさえ難しくなる。
雪が降ると機能不全に陥るのが、非雪国の姿である。
それでも早番の時間帯は普通に稼働し、遅番との交代となった。
柴田は素早くロッカーで着替えて外に出たが、タイミングが良いのか悪いのか、雪が勢いを増して降り始めていた。
──あっ、これ電車大丈夫か?
思った柴田は、駆け足で駅に向かった。
駅に着いた頃には吹雪みたいに雪が降り落ちており。
「安全確認のため、運行を停止しています」
と、アナウンスがされていた。
柴田は空いているベンチに座って待ったが、電車の方は一向に変化が無く、ホームには工場の人間を含め、電車を待つ人間たちであふれかえった。
しばらくして下り線が動き出し、どこどこの駅で折り返して運行しますとの事だった。
何やかんやで、結果的に一時間半ほど待たされることとなった柴田は。
──ベンチに座れただけマシだったな。
駅に急いだのも無駄ではなかったと己を慰めた。
電車はゆっくりと動いて、いつもの数倍時間を掛けて出玄寮のある駅まで移動した。
駅を出ると3センチどころか、20センチ以上降り積もってるような感じで、雪の中を靴と靴下を濡らしながら歩く羽目になった。
正直さっさと帰りたいところだったが。
──明日、無理じゃないかな・・
思った柴田は、あえてスーパーに寄って、明日工場が稼働しない前提で昼食用や、寮の食堂が機能しない可能性も考えてカップ麺などの食料を買い込んだ。
寮に帰ったあとは、いつも通り即行で風呂に入り、心身を温めた。
寮の食堂は動いており、食事も普通にした。
そろそろ寝る時間っていう時になって、なにやら人が動く気配がしてきた。
どうも遅番の仕事が打ち切りとなり、早早と帰寮したようだった。
翌朝。柴田は窓を開けるが、眼下に広がる小学校のグラウンドは。
「ゲレンデか・・」
というぐらい完全に雪で覆われており、ネット情報を確認する限り、電車も動いてはいないようだった。
それでも寮を出て出勤する人達はいるのか、バタバタと音が聞こえていた。
柴田は、出勤する時間になっても電車が動く感じがしなかったので、チームリーダーに確認の電話を入れた。
「おう。柴田か──」
出たのはサブリーダーだった。
「えーと。電車が止まってるみたいなんですが、どうしたらいいですかね?」
「あー。今日な、休みになったんだ。今、駅にいるのか?」
寮の部屋で布団の上に座りながら電話してる柴田だが。
「ええ。だからどうしようかなって・・」
方便を用いた。
「あー。ごめんごめん、連絡が遅れて。今日は休みで、明日は今日の十五時までにどうするか判断するらしいんだ。中止になったら連絡するから、何もなければ出勤って事で──」
「はい。わかりました」
「じゃ、そういうことなんで、よろしく」
果たせる哉、雪のため工場は休業だった。
この日、この後に連絡はなく、柴田たちの明日の出勤は確定した。




