第35話 ナガナガステーキ
年が明け、工場も動き出す。
柴田のいる工場では、新年の挨拶とかで従業員がホールに集められ、工場長が壇上で何やら話す催しが行われた。
最後にどういう訳か写真撮影もあり、ホールの二階から見下ろす形で一同の写真が撮られた。必然、下にいる撮影される側は見上げる格好となる。その際に、横断幕みたいのを広げ、端を持たされてる人達もいた。
で、そのあと稼働となったが、柴田たちにはあまり仕事はなかった。既に正月休み前に部品は納入されており、忙しくなるのは昼以降と思われた。
「なんか増産計画があるらしいよ」
誰かがそんなことを言っていた。
曰く、現在の一日九百台の生産態勢から、日に千台を作る計画だとか──。
今月も「足りない」との事で、土曜出勤が予定されている。
「土曜は、早番はいいですけど、遅番がキツいっすね・・」
共感しかない会話がなされた。
とまぁ、そんな感じで始まった新年初日だったが、この日は特食だった。
特食とは、何かのお祝いする的な話で、いつもより食堂のご飯が豪勢になるイベントである。
過去には、実業団野球で優勝したとか、そんな話でも実施されていた。
といっても、すべてのメニューが対象となっているわけでもなく──。あえて特食を選ばないという選択もできる。
柴田が食堂に着いたときには既に、特食メニューには長い列ができており。
──これに並ぶのか・・
と、心が折れそうになった。
それでもじっと並んだ柴田だが、別段、どうしても食べたかったわけでもない。本日のメニューに、特に食べたいものがなく、消去法的に無難なものが特食だっただけである。
柴田が選んだのは定食メニューの特食、ステーキ定食。
普通に定食のメインおかずがステーキになってるだけのシンプルなものだ。肉は1・5センチぐらいの厚さで、何も知らないが、不思議と努力を感じさせる見た目をしていた。
味は、まぁ普通に肉を焼いたって感じ──。一応グラデーション程度の赤味は残っていたが、しっかりと火を通したタイプだった。
あとで坂上などに話を聞いたが。
「俺、並ぶ気しなかったから・・」
柴田のいるチームでは、あまり特食の受けは良くなかった感じだった。
ともあれ。工場での新たな一年が始まった。




