第33話 ファーファーディセンバー
遅番の遅い時間、柴田たちはやる事がなく耐えている。業務終了間近には空箱の回収があるが、それまでは我慢の時である。
これまでもずっとそうであったが、師走となり、この待機時間は苦行の感が増した。
まぁ、寒いのだ──。
そのせいか、暖を取るかのように黒井班(仮)のメンバーも集まっている事が多くなった。
距離が近くなって自然と無駄話が増えた。
あまり褒められた事ではないだろうが、寒さから気を紛らわす意味でも、何かしてないとやってられないと柴田は感じていた。
時期的なことがあるのか、一人が。
「俺、リーマンショックのときも居たんだよね」
と、言い出した。すると・・
「あー、あれどうだった? 俺、直前ぐらいで契約終わったから、丁度何ともなかったけど」
若本が聞いた。
「もう打ち切りです。あと半年ぐらいでしたけどね。でも、俺はマシな方で、三ヶ月目の奴はみんな次なかったですね」
「え? 短い奴が多いの?」
黒井が聞いた。
「全部はわからないですけど、俺の居たところの入ったばかりの奴は、みんなでした」
「へぇー。じゃあ、あれか。経験少ない奴と、しばらくしたら居なくなる奴と、そういうのを選んでたのかな」
「じゃないですかね。俺、わからないですけど」
「あっ、じゃあ、あれとか行った? 派遣村とかいうの?」
「いや、俺、実家に帰りましたから」
「そっか──」
黒井は少し残念そうにした。それに気を使ったのかわからないが・・
「でも気になったんで、色々チェックはしてましたね」
そんな返しをしていた。
柴田も当時のニュースは見ていたが、イマイチ状況を把握しきれていなかった。だからそれを思い出して。
「実際、あんな風に人って集まるもんですか?」
聞いてみた。
「あれね。たぶんね。キカンはほとんどいないと思うんだよね。再就職の面接とか受けてる映像とか見たんだけど、俺たちとは違うなって感じたから。たぶん建設系かな? わからないんだけどさ」
「あー。ジャンルが違うのか。じゃあ日雇い系が多いのかな?」
黒井が言った。
「さぁ。わからないですけど・・」
「なんかニュースの感じだと、製造業のイメージがあったけど、俺が勝手に思ってただけかな?」
「いや、自分もそんなイメージでした」
柴田は黒井に賛同した。
「まぁ、割合としては少ないと思いますね」
リーマン経験者も感想を語っていた。
──あれ? 期間工って・・
柴田は元々自分の中にあった期間工のイメージが、件のリーマンショックのそれに引きずられていたような気がしてきた。
正直なところ、柴田は期間工に対して『金遣いの荒い貯金も出来ない人』みたいな印象を抱いていて、それがいつからあるのか、溯って考えると派遣村のニュースではないかと思えてならなかった。
当事者となった現在の柴田としては。
──人による。
という、ごく普通の結論になっており。坂上のようにマンションを契約してる者も多く、行くアテがなくなる姿は想像しにくかった。
──他にもあるんだろうな・・
報道のイメージと実態との乖離みたいなことが、知らず知らずのうちに、あちこちで発生しているのではないかと、柴田は気後れしたような気分になった。




