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キカンコ  作者: テンチョウ
第一章 ロジスティクス編

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33/41

第33話 ファーファーディセンバー

 遅番の遅い時間、柴田たちはやる事がなく耐えている。業務終了間近には空箱の回収があるが、それまでは我慢の時である。

 これまでもずっとそうであったが、師走(しわす)となり、この待機時間は苦行の感が増した。

 まぁ、寒いのだ──。

 そのせいか、暖を取るかのように黒井班(仮)のメンバーも集まっている事が多くなった。


 距離が近くなって自然と無駄話が増えた。

 あまり褒められた事ではないだろうが、寒さから気を紛(まぎ)らわす意味でも、何かしてないとやってられないと柴田は感じていた。



 時期的なことがあるのか、一人が。

「俺、リーマンショックのときも居たんだよね」

 と、言い出した。すると・・

「あー、あれどうだった? 俺、直前ぐらいで契約終わったから、丁度何ともなかったけど」

 若本が聞いた。

「もう打ち切りです。あと半年ぐらいでしたけどね。でも、俺はマシな方で、三ヶ月目の奴はみんな次なかったですね」

「え? 短い奴が多いの?」

 黒井が聞いた。

「全部はわからないですけど、俺の居たところの入ったばかりの奴は、みんなでした」

「へぇー。じゃあ、あれか。経験少ない奴と、しばらくしたら居なくなる奴と、そういうのを選んでたのかな」

「じゃないですかね。俺、わからないですけど」

「あっ、じゃあ、あれとか行った? 派遣村とかいうの?」

「いや、俺、実家に帰りましたから」

「そっか──」

 黒井は少し残念そうにした。それに気を使ったのかわからないが・・

「でも気になったんで、色々チェックはしてましたね」

 そんな返しをしていた。


 柴田も当時のニュースは見ていたが、イマイチ状況を把握しきれていなかった。だからそれを思い出して。

「実際、あんな風に人って集まるもんですか?」

 聞いてみた。

「あれね。たぶんね。キカンはほとんどいないと思うんだよね。再就職の面接とか受けてる映像とか見たんだけど、俺たちとは違うなって感じたから。たぶん建設系かな? わからないんだけどさ」

「あー。ジャンルが違うのか。じゃあ日雇い系が多いのかな?」

 黒井が言った。

「さぁ。わからないですけど・・」

「なんかニュースの感じだと、製造業のイメージがあったけど、俺が勝手に思ってただけかな?」

「いや、自分もそんなイメージでした」

 柴田は黒井に賛同した。

「まぁ、割合としては少ないと思いますね」

 リーマン経験者も感想を語っていた。



──あれ? 期間工って・・

 柴田は元々自分の中にあった期間工のイメージが、件のリーマンショックのそれに引きずられていたような気がしてきた。

 正直なところ、柴田は期間工に対して『金遣いの荒い貯金も出来ない人』みたいな印象を抱(いだ)いていて、それがいつからあるのか、溯(さかのぼ)って考えると派遣村のニュースではないかと思えてならなかった。


 当事者となった現在の柴田としては。

──人による。

 という、ごく普通の結論になっており。坂上のようにマンションを契約してる者も多く、行くアテがなくなる姿は想像しにくかった。


──他にもあるんだろうな・・

 報道のイメージと実態との乖離(かいり)みたいなことが、知らず知らずのうちに、あちこちで発生しているのではないかと、柴田は気後れしたような気分になった。

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