第32話 ツヨツヨソルト
「明日、塩ちゃんこだな」
唐突に坂上が言った。
「ん? 何の話ですか?」
柴田はわからず聞き返す。
「食堂のメニューだよ。見てねぇの?」
「どのカテゴリーですか?」
「いや、工場のじゃねーよ・・」
「食堂? えっ、あっ、寮のですか?」
「そう・・」
「あー。食堂のは見てないですね。いや、気にしたことなかったですわ。なんか、勝手に出てくるもんだと思ってました」
「何だよそれ」
工場の食堂ならば、九種類の中から選択することになるから、メニューを見て何を食べようかと考えたりするが──。
寮の食堂は日替わり一種類のみなので、選ぶ必要が全くなく、柴田としては内容を気にすることなく、出てきたものを食する感じであった。
「てか、メニューなんて何処にあるんですか?」
「はぁ!? 食堂の向かいの掲示板にあるじゃん」
柴田の問いに、坂上が呆れで返す。
確かに掲示板は存在し、寮生へのお知らせが色々と貼ってあったりする。以前、風呂のボイラーが故障したときも、それに関する事が掲示されていた。
柴田もそれらはチェックしていたのだが、食堂のメニューには全然気が付かなかった。
「まぁいいや。とにかく明日は塩ちゃんこだから、気になってんだよね」
「確かに──。ちゃんこ自体、とても気になる。というか、たぶん自分食べたことないと思いますね。ちゃんこを」
「俺もない。だから、どんなもんかってね」
坂上はそう言った。
柴田は同意を示しつつも。
──そうか。メニュー見て判断してんのか・・
寮の食堂の利用状況が、多かったり少なかったりするのは、白米が美味しくないからではなく、メニューによる選択があったのかと納得した。
で──。件の塩ちゃんを食することになった。
ちゃんこは使い捨てのアルミ鍋、うどんのセットとかで売られているタイプの容器に入った状態で提供された。具沢山で、普通に美味そうに見えた。
が──、これがやたらしょっぱい。
「え!? これあってんの?」
柴田が思わず口走るほど、塩気が強い。何か分量を間違えたのではと疑うレベルであった。
──ご飯をたくさん食べるためとか聞いた気がするが・・
力士のちゃんこは濃いめに味付けてある話を思い出した。が、それでも・・
──流石に、この塩気は食欲減るだろ。
具材が色々あるはずだが、なんかもう、全部塩味って感じで全く楽しくない。
──これならいつもの給食味の方がマシだな。
普段の可もなく不可もなしの味わいが、とたん、とてもありがたいものに思えてきた。
正直残したいぐらいだったが。
──腹に入れとかないと・・
自炊禁止の寮では、ここで食っておくしかなく、柴田はそれこそ修行のような感覚で塩とイマイチな白米を飲み込み続けた。
翌日、坂上に話を振ろうかと思った柴田だったが。
──いや、もういいわ・・
思い出すのもしんどく感じて、何も言わなかった。
坂上も話題にすることはなく──。柴田は、なんとなく察した。




