↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キカンコ  作者: テンチョウ
第一章 ロジスティクス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/41

第31話 サムサムウインター

 季節はすっかり冬になっていた──。


 早番の出勤時は暗いなかを駅まで向かうことになる。

 とはいえ駅までの通り沿いの歩道は、それなりに明るさがある。田舎だけに街灯は少ないが、看板や自販機の光が結構道を照らしている。


 だがしかし、柴田は、この歩道をあまり歩かない男だ。


 歩道は同じく寮から出勤する者たちや、その他、早朝から駅に向かう人間たちが歩いている。一人一人、歩く速度は違うから、抜いたり抜かれたりしながら進むことになる。それでも、結局は信号待ちで一緒になったりする。

 必然、周りを意識し、歩調を調整し、間合いを計りながら歩く──。

 柴田はこれが面倒臭いと感じる。どの電車に間に合うとか合わないとか、駅にいつ着くかじゃなく、彼は己(おのれ)の速度、自分のペースで歩きたい人間なのだ。


 柴田が通るのは畑の間に伸びる細い道。自動車一台ギリギリぐらいの道で、当然の事ながら街灯なんぞ一つもない。自販機はなく、あるのは木で作られた農家の無人販売所だけだ。

 真っ暗の道を抜けると住宅地に入り、そこからは街灯も幾つかあり、あとは縫(ぬ)うように進んで駅に向かう。これが柴田の出勤風景だった。





 工場は、すこぶる寒い。

 ライン付近はダクトから空調の風が出るので、それ程でもないが──。柴田のいる部品の集積基地にそんな文明の利器はない。

 まぁそれでも、動けば寒さを忘れられる。早番は昼過ぎあたりから糞忙しいので、むしろ涼しくて快適なほどだ。


 問題は遅番だ。

 仕事が始まった直後はいい。忙しいから。しかし夕食後は仕事量が激減、ヒマヒマになり、夜の気温低下も相俟(あいま)って体は冷え冷えになる。

 チームメンバーの中には、スクワットをしてカロリーを燃やして凌(しの)ぐ猛者(もさ)もいた。


 柴田は夕食後にロッカーまで戻り、インナーの上からフリースを着込んで対処した。



 おのおの、あれこれしながら寒気に耐える訳だが、寒いと、どうしてもトイレが近くなる。そのことで若本が。

「ここは、いつでもトイレ行けるから、めっちゃいいよ」

 そんな事を言い出した。彼はトイレマンの異名を持つ者だ。

「ラインだとさ、いちいち人呼ばなきゃいけないからさ。冬場は本当に面倒だった」

 しみじみと語っていた。

「それでもウンコしに行くんですよね?」

 柴田が若本の快便さから冗談っぽく聞くと。

「勿論。俺、座れば出るから」

 若本は自信たっぷりに答えた。


『座れば出る』


 この日、柴田のいるチームに『四食』に次ぐ、新たな伝説が生まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。