第3話 カラカラカレー
数日間、座学を中心とした研修だった。
流石というか、さも自動車会社だと思ったのは、交通事故に関するグループディスカッションみたいなのをやらされた事だ。
いや、大事なことだ。それはわかる。それでも感じてしまうのは。
──学生じゃないんだから。
という感覚。
内容云々ではない。いい歳こいたオッサンたちが、資料を基に、こうすれば良かった、ああすれば良かったと話し合う。その絵面がもう痛々しい。
『自分で考えてみよう!』
『みんなと意見を交換しよう!』
そんな感じのノリは、柴田の感覚では二十歳前後までしか許されなかった。
当たり前だが、モヤモヤとした研修の合間にも昼休憩はある。
昼食は食堂で取るのだが、この食堂が何気にスゴい。
定食、ラーメン、そば、うどん、カレー、ランチ?とカテゴライズされていて、日替わりのメニューが提供される。定食は四種なので、九つのメニューから選ぶことになる。
従業員は数百人。この規模の社食でこれだけメニューが充実してるのがスゴいのか、それとも、この規模だからここまで出来るのか、本当のところ柴田にはわからない。それでもやはりスゴいと思えるのは、味も普通に美味いからだ。
連日、定食を選んだいた柴田だったが、今日はカレーにしてみた。
別段カレーが食べたかったわけではないが、たまたま休憩時間に話した人が。
「ここのグリーンカレーはやべーから」
過去にも何度か働いたことがあるのか、そのように言っていた。そして本日のカレーメニューが、そのグリーンカレーなのだ。
──あー。今日日見ないなコレ。
柴田が思ったのはカレー皿だ。横に長い船のような形状のアレである。
まぁ実際、柴田本人も、舟形の皿で食した経験はそれほどない。なのに不思議とノスタルジーを駆り立てられるシルエットだ。
カレーには鶏肉、パプリカ、オクラ、ゆで卵が入っていた。色は言わずもがなグリーン。
食すと独特の風味を感じる。そして・・
──!?
カーッとする強烈な辛みが来た。ご飯で中和しようとするが、それでも辛い。
──俺も大盛りにすれば良かった。
前の順番の人が、大盛りをリクエストしてて、そういうのもあるのか程度に思っていた柴田だったが、なるほど、これはご飯が進んでしまう。
オクラやゆで卵が、強烈な辛みの砂漠におけるオアシスに感じてしまう。最初は何でオクラと思ったが、いやはやオクラは癒やしだ。
しかしグリーンカレー特有なのか、辛みの後は、一種の清涼感のようなものあった。
「美味いな・・」
柴田の評価では、かなりのヒットである。次もメニューにあったら頼みたいほどだ。
「にしても辛い・・」
ひょっとしたら「やべー」の意味は辛さの事だったかも知れないが、今となっては、どうでも良いことだった。
柴田は、お冷や代わりの麦茶の残量を気にしながら、緑のカレーと格闘していた。




