第2話 ウスウスウォール
柴田は電車に乗った。
多くの者にとっては帰宅かも知れないが、柴田には、まだ帰るというより向かうという感覚が強かった。
二駅先で降り、地図を見ながら歩く。
出玄寮──。
それが柴田のゆく先である。
おそらく前を歩く人。よく観察したわけではないが、同じ電車に乗り、降りた感じ、彼も出玄寮に向かっているのだろう。
柴田との違いは、ほとんど手ぶらだということ。柴田は生活用品の入ったリックを背負っていた。
果たせる哉、手ぶらの彼を先導者として、無事に出玄寮に到着した。
地図の備考には徒歩十五分と記されているが。
「いやいや・・ 二十分弱掛かったんじゃないか?」
かなりのハイペースで一生懸命歩かなければ、十五分は切れないだろうという距離だった。
とまれ──。柴田は入寮の手続きをした。
「今日入る者で説明をまとめてするから、三十分後に食堂に来て」
そう言われ、柴田は一端、自室へと向かった。
畳の四畳半。押し入れと、タンスだか本棚か、謎の収納スペースがたくさんある。窓の外には小学校のグラウンドが見えた。南向きの三階のため、日当たりはすこぶる良い。
窓を開けて、ちょっと外を眺めていると。
バタン! ガッ!
音がはっきりと聞こえた。
隣の住人が帰ってきたのだろうと思われる。
それで理解した。謎の収納スペースが隣との間仕切りになっているのだと。
反対側はキチンとした壁になっているが、収納側は壁ではない。棚の向こうが、きっと隣のタンスになっているのだ。
言うなれば、一つの部屋の真ん中を家具で仕切ったような感じだった。
──マジか・・
ある程度の覚悟を以て来た柴田だったが、壁が薄いを超越する、壁がないという現実には困惑を禁じ得なかった。
「時間だ」
柴田は溜息まじりに言って部屋を出た。




