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キカンコ  作者: テンチョウ


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2/24

第2話 ウスウスウォール

 柴田は電車に乗った。

 多くの者にとっては帰宅かも知れないが、柴田には、まだ帰るというより向かうという感覚が強かった。

 二駅先で降り、地図を見ながら歩く。

 出玄(デゲン)寮──。

 それが柴田のゆく先である。


 おそらく前を歩く人。よく観察したわけではないが、同じ電車に乗り、降りた感じ、彼も出玄寮に向かっているのだろう。

 柴田との違いは、ほとんど手ぶらだということ。柴田は生活用品の入ったリックを背負っていた。


 ()たせる(かな)、手ぶらの彼を先導者として、無事に出玄寮に到着した。

 地図の備考には徒歩十五分と記されているが。

「いやいや・・ 二十分弱掛かったんじゃないか?」

 かなりのハイペースで一生懸命歩かなければ、十五分は切れないだろうという距離だった。


 とまれ──。柴田は入寮の手続きをした。

「今日入る者で説明をまとめてするから、三十分後に食堂に来て」

 そう言われ、柴田は一端、自室へと向かった。


 畳の四畳半。押し入れと、タンスだか本棚か、謎の収納スペースがたくさんある。窓の外には小学校のグラウンドが見えた。南向きの三階のため、日当たりはすこぶる良い。

 窓を開けて、ちょっと外を眺めていると。

 バタン! ガッ!

 音がはっきりと聞こえた。

 隣の住人が帰ってきたのだろうと思われる。


 それで理解した。謎の収納スペースが隣との間仕切りになっているのだと。


 反対側はキチンとした壁になっているが、収納側は壁ではない。棚の向こうが、きっと隣のタンスになっているのだ。

 言うなれば、一つの部屋の真ん中を家具で仕切ったような感じだった。

──マジか・・

 ある程度の覚悟を以て来た柴田だったが、壁が薄いを超越する、壁がないという現実には困惑を禁じ得なかった。


「時間だ」

 柴田は溜息まじりに言って部屋を出た。

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