第1話 ウキウキスーツ
──しまった。
そう思ったが、同時に安心もした。
自分と同じ間違いを犯した者が数名いたからだ。彼らは柴田にとって・・
──もう友達になれるんじゃないか?
というぐらいに良かったと思える存在だった。
柴田を含む数人はスーツを着て出社していた──。
それのどこが『しまった』なのか?
当然の疑問である。およそ一般に、スーツは何処にでも着ていてる服である。冠婚葬祭、ドレスコードのあるお店。大概スーツであれば何とかなる。
さりとて──。
場に浮いてしまうのは、どうにもならない。
問題があるとか無いとか関係なしに、服装的マイノリティーとなった場合の気まずさは如何ともし難い。
喩えるなら、制服の衣替えで一人だけ間違えたとか。遠足中止になったのに、遠足の格好で登校しちゃったとか。それ系の、挽回しようがない居た堪れなさだ。
説明もそこそこに、写真撮影が始まった。
社員証となる物に載せる顔写真にするらしい。
お陰で、柴田たちスーツ組に救いの時が訪れた。
写真は作業着の上着だけを着た状態で撮影される。当然、上着は脱ぐ。ネクタイも、まぁ外すだろう。そして上着を着て写真をパシャリ・・
で、ここからが肝心だ。
──このまま上着もネクタイもしない作戦だ!
なんならシャツのボタンを二つぐらい外して、腕まくりとかしちゃったりして、いかにもラフな感じという体を作り出した。
こうして柴田のスーツで浮きに浮いた状態は緩和された。
この後、身体検査や各所の見学、食道での昼食、作業服の支給、いくつかの説明会があり、一日目の日程は終了した。
「とうとうなっちまったか・・」
柴田は独りつぶやいた。
何になったのか?
今日から柴田は、自動車工場の期間工となったのだった。




