第28話 ヤスヤスパーキング
黒井が車を買ったらしい。
といっても、何処かの販売店で買ったというのではなく、寮の知り合いからという事のようだった。
「もう維持できなくなったってんで、最初二十万って言ってたんだけど、渋ってたら十万でいいからってなったから買った」
と、誇らしげに語っていた。
これは黒井だけでなく、チーム内の者も。
「すげーいいじゃん。先々代のやつでしょ? まだ五、六十万はするよ」
車種とモデルから価格を割り出す能力を持つ者が、そんな風に評価していた。
柴田はそこら辺のことはよく知らんので。
──へ-。
ぐらいの感じで聞いていた。
さはさりながら──。
工場では、期間工の寮生は、車での出勤を想定されていない。
会社が用意した駐車場は、社員もしくは、自宅から通っている期間工のみしか利用することができないのだ。また、寮にある駐車場は社員専用でもある。
一応、原則は禁止となっているものの・・ 期間工の寮生の中には、自分で駐車場を契約して車通勤をしている者もいた。
しかしそうなると、二箇所の契約になるため、柴田としては。
──えらい出費が嵩むな・・
なんだか、すごく勿体ないことをしてるように思えた。
それからしばらくした遅番の日──。
柴田が出勤しようとしてると、玄関口で黒井と鉢合わせた。
黒井は寮生の友人と一緒に出勤するために待っていたようだった。
「おう、柴田。今からなら、お前も車乗ってけよ」
そう言われ、柴田はありがたく便乗させてもらう事にした。
寮を出てしばらく歩いた所に駐車場があった。砂利が敷いてあるタイプで、壁に数字が振ってある。
黒井は。
「ここ三千円なんだ」
と、誇らしげに言う。言うまでもなく月極だろう。
──確かに安い。
そして車に乗って、あっという間に工場近くの駐車場へ行き。
「ここは五千円」
またしても黒井は自慢気味である。
──なるほど。
工場も寮も田舎にある。必然、駐車場の料金も田舎価格になる。それは始めからわかっている事なのだが。
ざっくりと。
──二、三万は掛かっちゃうんじゃないの?
と思っていた柴田は、
──あわせても一万いかんのか・・
己の中の何かが崩壊するのを感じた。
尤も、三千や五千は田舎であっても格安である。そういう意味で、黒井が自慢したくなるのもまた必然であった。
とまれ──。
以降、柴田は時折、黒井の車に乗せてもらうようになったのだった。




