第25話 マズマズライス
出玄寮には食堂がある。勿論、他の寮にもある。
営業は午後六時から八時まで、メニューは日替わりである。時間的に早番時のみ利用することになる。
味は、可もなく不可もなし。食べていると、どこか給食を思い起こす、尖った部分が全くない平坦な味付けである。
ご飯はおかわり自由で、茶碗ではなく、どんぶりによそう形だ。
寮では一応、自炊禁止なので──。柴田としては、変な時間に小腹が空いても困るから、ご飯はたっぷりと食いだめておきたかった。
がしかし──。
この出玄寮のご飯。何故か不味い・・
何がと説明できないが──、何かマズイのだ。
食堂の中からだと、調理場の様子はあまりよくわからないが、ご飯の保温器との互換性から考えて、業務用ガス炊飯器を使っているはずだ。おばさんが内釜ごと交換して補充してるのを何度か見た。たぶん三升ぐらい炊けるんじゃないだろうか。
大抵この手の業務用機器は、最高とまではゆかないが、そこそこのクオリティーのものを大量に提供する。
なのに──。毎回毎回、残念なクオリティーのご飯が出てくる・・
──おかしい・・
ご飯なんぞ、どこの料理下手でも普通に炊ける。なんなら、無洗米じゃないものを洗わずに炊いたとしても、それなりに食える。
なのに──。もうホントに美味しくない。
柴田としては、逆にどうやったらこんなに不味くなるのか知りたいぐらいに思っていた。
ある日のこと──。
早番の柴田は、普段通り食堂へ向かった。
特に時間を決めている訳ではないが、オープンする六時辺りは混むことが多く、少し面倒に感じるので、ここ最近は七時前後に行くことが多かった。
で、ごく普通に食事していたら──。
「ちょっといいかしら?」
食堂のおばちゃんの一人が話しかけてきた。
「はい・・」
柴田が困惑ぎみに答えると。
「今日って何かあったんですか?」
と、聞いてきた。
──何かとは?
おばちゃんの質問がさっぱり理解できない柴田は首を傾げるようにした。
「あのね。今日ね、全然人が来ないの。あなたで四人目なの」
おばちゃんは補足するように言った。
これには柴田も驚いた。
いつもはすぐに二十人ぐらいが食事を始める。混雑を予想して時間をずらしているのに、今日はその必要もなかったという事だ。
おばちゃんが不思議に思い、柴田に質問したくなるのもわかる。
柴田は少し考えて──。
「あー。わかんないですけど──。明日、休みになったんですよ。それで、どっかに出かけている人が多いんじゃないかな~って・・」
柴田の答えに、おばちゃんも「あー」という表情をした。
実は普段も金曜は食堂利用者が少ない。
その理由については本当のところわからないが、柴田は、飲みに行くとかで外での食事を選択している者が多いからではと見立てていた。
柴田は、そこから類推して、同様の現象が起きたのではないかと考えた。
「なるほどね・・」
「いや、わかんないですよ。想像ですからね」
おばちゃんが頷きを見せるので、柴田は、あくまで可能性という強調をした。
「いえ──。参考になりました。ありがとうございます」
それでも、おばちゃんは納得に至ったのか、感謝を言って立ち去った。
柴田としては。
──根本。ご飯が何か不味いからでは?
と、思わんでもなかったが、そこは分別を以て口には出さなかった。




