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キカンコ  作者: テンチョウ
第一章 ロジスティクス編

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第24話 ムズムズリレイション

 水谷が去り、一人少なくなったチームに、他のチームから沼川が異動してきた。

 それに伴ってチーム内でも異動があったが、柴田のいる黒井班(仮)に変化はなかった。


 沼川は黒井班のすぐ隣の班になった。彼と黒井とは前からの知り合いだった。


 詳しく聞いたわけではないので、ざっくりとした話になるが──。黒井も別チームから、このチームに異動になったそうで、前のチームで一緒だったとの事だった。

 沼川は黒井を慕っているのか、ちょくちょく話しかけて、黒井もごく普通に会話をしていた。


 柴田とは、あまり接点がなかったが、それでも他のチームメンバー同様に接していた。まぁ、知らない者同士の関係としては、悪くなかったんじゃないかと思えた。




 で、三週間ぐらい過ぎて、柴田にはわかった事がある。

──なんか嫌だな・・

 言わずもがな、その対象は沼川である。


 繰り返すが接点は、あまりない。なのに数少ないその接点で、柴田は妙にストレスを溜めた。


──何がと問われると難しい。

 沼川は柴田よりも一年以上先輩であるため、まぁ、先輩風を吹かせていても何らおかしくはない。柴田も、それをいちいち気にするほど繊細でもない。

 それでも名状しがたい不満感に、柴田は沼川を、じっくり観察することにした。



 と、沼川がチームの一人に。

「結束バンドの外し方ってわかります?」

 と聞いて、そのまま沼川の結束バンド外し講座がスタートした。

 それはそれで、タメになる話であるので「ようござんす」だったが。

「こういうのを覚えおくと、色々役に立つんで、出来るようになった方がいいですよ。前にいた所だとハサミで切ってて勿体(もったい)なくて。俺はこうやって再利用してたんで──」

 斯様(かよう)な風に語り出した。


 話の流れとしては、沼川の前職の同僚を、結束バンドのあれこれで馬鹿にしたような感じで展開しているのだ。

 誰とも知れぬ者の話なので、問題ないと考えているのだろう。

 しかしながらこれは・・

──当て擦(こす)りになってるじゃん。

 柴田は、沼川の悪癖を理解した。


 要はマウント取りたい人なのだ、沼川は。しかし、正面切ってやれば、流石に顰蹙(ひんしゅく)を買うことは間違いない。そこで彼がやっているのは、この場にいない誰かを引っ張り出してきて、その人物に対してドヤるという手法だ。


 柴田の感じた不満感は、沼川のそれが肌に合わなかった事だが──。


 この結束バンドの話は、おそらく沼川本人の自覚を余所に、Aを指してBの悪口を言うという指桑罵槐(しそうばかい)の構図にもなっていた。

 これはやられた方としては、イイ気分ではない。極めて遠回しではあるが、結束バンドひとつで「こんなことも知らんのか?」と言われてるような感じなのだ。

 無論、そうは言ってないし解釈し過ぎのところもある──。

 さりとて、人の情緒とは、そんなもんだ。



 結果──。

「あいつさ、何彼(なにか)につけ偉そうだよな?」

 そんな問いかけをされ。

「本人はそのつもりないでしょうけど、言いたいことはわかりますよ」

 柴田も、曖昧に返すしかないような会話も生まれた。




 今更ながらになるが──。

 柴田は人間関係に疲れたところがあり、工場での仕事を選んだ男だった。こういう所なら、気苦労は少ないと思ったのだ。

──どこでも色々あるな・・

 しかし柴田の期待に反して、人と人とが顔をつきあわせれば、関係は必然のようだ。


 振り返って水谷にしても、もっと上手く関係があったら辞めなかっただろうと思え、そこから柴田は、沼川に危うさを感じていた。

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