第23話 タマタマセーフ
柴田のいるチームでちょっとした騒動が起きた。
水谷が、部品の供給先でトラブルを起こしたのだ。
なんでも、部品の置き方が違うとか、そこじゃないとか、そんな事を言われたらしい。
斯様なことは、実は間間ある話でもある。
置き方云々はともかく、場所の問題は、こちらも指示書のアドレス通りに運んでいる訳で、それを現場で違うと言われても、指示の板挟みになってしまう。
だから基本的に、場所はアドレス通り。違うというなら、現場から訂正処理を出してもらってという対応になる。
とはいうものの、実際は人が動かしている訳で、柴田たちも多少は現場の要望に添って融通を利かせていたりした。
それはそれとして──。
水谷がトラブったのは、邪魔になるから置くなと言われた場所に、それを無視して放置したことで、ライン作業に支障が出たという話だった。
柴田としては。
──まぁ、わからんでもない。
というのが正直な気持ちで、水谷には、やや同情的な心境だった。
前述の理由により、運搬側からしたら場所に誤りはないし、違うというなら訂正するのが本則である。それでも置くなと言うなら、代案たる場所を提示するべきだろうというのが、柴田の見方だ。
実際、柴田は「違う」だの「置かないで」だの言われた場合。
「じゃあ何処に置くの?」
「どこ? どこ? どこ?」
と、文句の主に答えをしつこく聞くのだ。ひょっとしたら供給先では、変な渾名が付いているかも知れない。
さはさりながら──。
何らかの作業をするためにスペースを確保しているなら、確かに邪魔で、作業を妨害するような形になってしまうのも理解できる。
ともあれ。水谷には注意が与えられたようだったが──。
この直後、水谷は仕事を辞めた。
彼の胸裏に、どのような思いがあったかは定かではない。しかし、柴田には他人事には思えない感覚があった。
水谷はお世辞にも出来る奴じゃなかったし、姑息な嘘で、皆からの信用もなかった。柴田も軽い警戒心を以て接していたところがあった。
それでも作業自体はまじめにやっていた。台車の向きはおかしかったが・・
柴田の見るところ、水谷は拘りというか、自分の正解、自分の結論を押し通すタイプなんじゃないかと分析している。
そしてそれは、柴田も、実は同じ性情だと感じていた。
違うのは、柴田は賢しく抜け道を探し、それなりに上手く立ち回るのに対して、水谷は不器用な風に見えた。
柴田は、自分だったら邪魔は邪魔でも、あとで問題にならない程度に工夫して置いちゃうだろうなと思った。
柴田は、最初から配属場所が変わることなく、一貫して同じ仕事をしている。その環境の違いもあっただろうと考える。
畢竟、柴田はたまたま運良く異動がなく、順応できただけ──。そんな風に自身の事を思えてならなかった。
ちょっと掛け違っていたら、自分がトラブルの主だったかも知れないと、柴田は感じた。




